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市民環境研究所から

新幹線延伸問題、春の到来は未だ


 正月が明け、今年は格別に寒い冬だねと言い合いながら毎朝の散歩を愛犬と続けている。しかし、そんな会話しながら琵琶湖疏水の流れに落ちては消える雪を何度見たかなと数えれば、もう2月の終わりである。

 難問山積、寒々しいこの地で、北陸新幹線京都延伸という愚かな政策を阻止する運動を始め、こんな愚策を強引に進める京都選出の参議院議員西田らとの対決の日々は2年以上も続いている。「北陸新幹線延伸計画の環境アセスメントの一旦停止を求める会」は筆者と仲間2人のわずか3人の会から始めて、京都市や関係地域の行政区ごとに独立した運動体が結成され、連帯した運動が京都市全域で展開できたらとの思いで始めた。

 それから1年余、以下に示す地域ごとの市民団体が結成され、それぞれ独自の活動と連帯が進んでいる。そのような仲間の会を紹介すると:「水と北陸新幹線京都延伸を考える伏見ミーティング」、「いいまちねっと東山」、「北陸新幹線延伸計画をみんなで考える会」、「北陸新幹線延伸問題を考える北区の会、「北陸新幹線京都延伸を考える市民の会」、「北陸新幹線京都延伸を考える南区の会」、「北陸新幹線京都延伸計画の中止を求める下京の会」、「北陸新幹線京都延伸を考える右京の会」、「北陸新幹線京都延伸中止を求める左京連絡会」などである。

 そして、活動の一つとして取り組んできた署名活動:「私達は現在環境影響評価が進行中の北陸新幹線敦賀・大阪間(通称小浜・京都ルート)建設計画の白紙撤回を求めます」は、昨年12月に内閣総理大臣に2万7001筆署名で提出した。現在も署名活動、勉強会や街頭宣伝などを展開しており、4月の地方議員選挙運動の中での大きな争点になると思っている。

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 この運動の一環として、国交省と新幹線延伸問題をめぐって、我々が疑問に思っている問題点を討議する場を模索してきた。しかし、ことはなかなか上手く進まない。

 たとえば、我々の仲間の何人かが東京に出かけ、国交省からの説明を得たいと思って、京都選出の衆議院議員の仲介で会うことになっていたが、我々の行動を信じない議員の独断で会見が中止なってしまったのは今月半ばのことである。

 そこで別の議員に仲介を依頼した結果、録画はしないという条件付きで昨日、国交省の鉄道局幹線鉄道課の専門官および参事官(新幹線建設)室企画調整官とのオンライン会談が多くの仲間も参加して実現した。

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 北陸新幹線(敦賀・新大阪間)の建設はまだアセスメントも完了しておらず、まして認可された計画ではないにもかかわらず、「従来、工事実施計画の認可後に行っていた調査も含め、施工上の課題を解決するための調査について先行的・集中的に実施するため、北陸新幹線事業推進調査費(新規)12億3500万円を令和5年度予算に計上(調整中)」と記した議案が公表されている。

 まだアセスメントも完了しておらず、路線地図も完成していないにもかかわらず、12億円もの予算を国交省から国家予算として国会に提議するとは、いったいどういうことだろうと仲間が質問した。国交省とのやりとりで、「認可後に行う」作業を前倒しでやろうという事の『無理』が露呈したと思う。

 これはどう見ても「環境アセスメント法」を踏みにじっており、違法だと思う。環境アセスメントが終了しないのに、「ルートが決まっていたら」とは何のためのアセスメントか?と疑わざるを得ない国交省の行為であると指摘したところ、国交省係官からは「事前にできることはやってもよいという意見があったので、初めてのことですが認可前に「事前協議」の予算を計上した」と回答が返ってきた。

 それ以上の質問に関しては自分たちの管轄外だと逃げの一手で終わった。まさに我々から見れば違法そのものの行為を国家がやっているとしか思えない。京都延伸を掲げた国会議員へのおもねりでそこまでやるのかと呆れると同時に、今後も手を緩めることなく追及して行かなければと、まだまだ寒い日が続くと分かったzoom会議だった。

                         (石田紀郎:市民環境研究所)

  


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