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市民環境研究所から

国葬反対、世論の高まる初秋


 この原稿を描き始めたのは沖縄を襲った台風9号が九州を経て岡山や兵庫で暴れ出した時間帯である。進みが遅いが京都を通過するのは今夜9時過ぎだとテレビのニュースが伝えてくれたが、なぜか京都市は雨も風もおとなしくしてくれている。

 原稿を書き上げるのがいつになるかは分からないが、今夕に予定されていた「安倍国葬反対の集会とデモ」は台風の京都襲来が迫ってきたので中止になったとの連絡が夕方に入った。夜にかけての外出の代わりに原稿を書き上げろとの天命が下ったのだろう。

 しかし、決してこの集会企画がなくなったのではない。岸田が安倍の死を利用して自らの信頼回復のために思いついた安倍国葬なるものに、市民として反対であることを示す京都行動にこの先も参加しようと思っている。

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 安倍が銃撃を受けて死んだことを悲しいと思えないのは私だけではないだろう。なぜなら彼の政治活動そのものが受け入れられないものであり、戦争法などの制定から憲法改悪も意図し、平和を求める国から戦争ができる国へと変えようとしてきたからである。その他にも、森友・加計学園問題や、桜を観る会問題など数え上げればキリがないほど金がまつわる不正があげられてきた。

 それなのに、彼が暗殺されると、彼を信じていたと思われる多くの人たちが暗殺現場に列をつくり、花を供えて手を合わせていた。本当にこんなに多くの人がと当初は不思議に思ったが、その後に明らかになった岸信介や自民党安倍派と旧統一教会との関係が暴露され、全国に展開していた安倍派と旧統一教会関係者との汚れきった連携の表現が花束と黙祷だと思えば納得である。そしてまもなく岸田が決めた安倍の国葬がやってくる。

 国葬反対のある署名活動の一員として参加し、ネット署名要請メールを数百人の知人に発信したのは半月ほど前だった。多くの友人知人から賛同・参加の返信が返ってきた。この歳になると、名前は知っているが顔をどうしても思い出せない人やその逆の人もいっぱいいるが、時間をかけてそれを思い出すのも結構楽しいものである。イライラすることなく思い出すまで努力すればボケの進行を阻止できると思うことにしている。返信の中に次のようなメールを見つけ何度も読み返した。部分的であるが引用させてもらう。

 「我々の税金をかすめて自分のために使いまくってごまかしと恫喝を繰り返してきた安倍にこれ以上我々の血税を使うなんて到底許容できません。汚い金まみれの岸田も同じ穴のムジナですね。内閣改造を何回繰り返しても汚い奴らが議員ですから無駄な努力ですね。またまた原発推進などと言い出して全く信用置けない奴です。電力不足が言われてきたタイミングで原発推進を言い出すなんて実に汚い手法です。あれだけの事故をおこしてなにがより安全な次世代原発や??とむかつきます。原発輸出を推進してきた安倍と全く同じです。安全な原発なんてありえないのは自明の理ですが、これを他国に輸出するとは正気の沙汰ではないですね。自分の国で事故がおきなければ他の国の国民の危険なんて知らんよという態度が許せないですね。ともかく国葬なんて論外です。」

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 筆者と同じ年代の老人だが、筆者のようないい加減な輩ではなく、きっちりと専門分野の研究を仕事として貫徹した人物である。それに今まで一度も原発使用や輸出などを筆者に向かって口にすることもなく、安倍や岸田や自民党政治についても批判を口にしなかった彼が、こんなメッセージを送ってくれるとはと驚いた。

 一晩で数百人のメールアドレスを選び出し、国葬反対メールを送った後は、老いたる眼球は疲れ切っていたが、このメールを読んだ時、まだまだ筆者も頑張らねばならない道の途中を生きていると思った。この拙文を書き終わった22時半、台風が連れてきた激しい雨が京都山科でも降り出した。

                         (石田紀郎:市民環境研究所)
  


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