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アソシ研リレーエッセイ
ただいま絶賛見習い期間中



水俣の世代交代

 関西よつ葉連絡会のカタログ『ライフ』220号で、水俣の杉本水産や「からたち」が特集されていました。私も杉本馨さんや「からたち」の大澤さん親子にお会いしたことがあります。ちりめんや甘夏の出荷場、ちりめん漁の海、甘夏の果樹園にも行きました。杉本肇さんの水俣の語り部も体感しました。

 杉本水産も「からたち」も世代交代を迎えています。45年ほど前、関西から支援者として水俣に住み込んだ大澤忠夫さんの娘さん、菜穂子さんはとても意欲的な人です。「バトンを受け取った私たちで、新しい水俣の動きを伝えていきたい、私たちは、ただモノとして甘夏を売っているのではない、それは手段で、そえにより水俣を伝えていきたい、そして根っこでつながっていきたい」と言っていました。

 杉本馨さんのお母さんで石牟礼道子の小説『苦海浄土』にもでてくる故・栄子さんはじめ、当時は水俣病で海の仕事ができなくなった人が陸に上がり、自分たちが被った病にかからない環境を作ろうと、無農薬の甘夏づくりを始めました。そこで京都からやってきた大澤さんたち支援者が水俣に定住し、全国に甘夏を売り歩き、そしてよつ葉は、心強い、頼りになる供給先となったはずです。結果、水俣では新しい世代が新たな動きを作ることができている。

別院センター見習い中

 さて、別院センター(関西よつ葉連絡会の物流センター)で仕事し始めて2ヶ月半経ちました。ただいま絶賛見習い期間中です。「根っこでつながる」。いい言葉です。しかし別院センターで一週間に1億5000万弱円のモノが、1日15~20件の物流トラックによって入ってきて、私もささやかながらドライ品・要冷品を仕分け・ピックし、日配品を捌き、そして昼夜なくアロー運送が産直に行く。正直、「根っこでつながる」どころではありません!

 扱っている素晴らしい品は単純にモノであり「商品」。そう思っていないと入ってきた商品の仕分けを間違う。有機農業、産消提携などの理念は作業している時はふっとびます。とくに要冷品の冷蔵ピックは、端的に工場のラインです。荷受けしたモノの仕分け・ピックを間違ってはいけない! それが意識の大半です。「雑にやるな、横着するな、しくじるな」と肝に銘じて仕事しています(が間違います……)。

地場野菜と「地域」

 しかし! この3月、次の地場野菜研究会をどうするかの議論が農研で行われました。そのとき、直接的に生産者と消費者がつながる「提携」ではなく、大規模な物流が噛んだ産消提携とはどのようなものなのか、確認とさらなる創造をする必要性が研究会出席者から提起されました。私としても、この地場野菜概念と、別院センターの働き方は連動していると感じます。

 悪い意味で言っているのではありません。有機農業運動はすぐれた有機生産者を生み出しました。そして意識の高い都市の消費者と結びつきました。「地場野菜」は、ちょっと違います。点でなく面としての「地域」を考えたはずです。

 素晴らしい数人の農家が素晴らしい有機農業の実践をし、素晴らしい少数の都市消費者と結びつく、というよりは、わけのわからんことをいいながら、わけのわからんものを作って集荷場に持ってくるような農家とも共にやっていく。一歩でも二歩でもみんなで大きく今の現状を、みんなが変わっていく、変えていくようにする。突出した個人の影響力はもちろん大事だけれども、一般の農家・消費者を置き去りにしない。

 多分、これが能勢農場の考え方であり、遠くさかのぼれば、農場の創始者である上田等さんが、「自分の要求や願望があって、それに人々の協力を求める「この指とまれ」ではダメだ、皆の要求をどれだけ正確に把握するか、皆の無意識の要求を獲得する闘争に私たちは参加するのだ、というふうに問いをたてないといけない」と語ったことと連動しているかもしれません。

 ……間違っていたらごめんなさい! ご指摘ください! これも研修の一環ということで。

                     (吉永剛志:㈱安全食品流通センター)



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