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市民環境研究所から

北陸新幹線の延伸反対で請願


 5月16日が梅雨入りで平年よりも21日も早いと驚いていたが、梅雨明けは7月17日だった。梅雨が終わっての猛暑の記憶よりもその後の連日の雨、それも豪雨を含む雨天の連続は今日8月19日になっても続いており、一年半以上のコロナ禍で祇園祭も大文字の送り火もない異常の夏である。

 そんな夏だからスカッとしたニュースに接したいが、オリンピックを強行したこの国に残された外国からのお土産は新型コロナウイルスの新たな型である。筆者が住む京都府もコロナ感染者は数十人/日から数百人/日となり、知事と市長の無策の前に人々は困惑している。

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 そんな首長を相手に2021年7月9日、「北陸新幹線京都延伸計画の環境アセスメントの一旦停止を求める会」を代表して、筆者が「北陸新幹線京都延伸計画に不同意を求める請願」を提出した。北陸新幹線問題の概略は本欄(2021年1月号)に書いたので省略させていただくが、請願内容は「財政上、京都市は巨額の負担を強いる北陸新幹線京都延伸計画には同意できないとの決議をされるように求めます。」というものである。

 請願趣旨を略記すると、①この計画は、京都を縦断する巨大トンネル工事による「大量の残土・建設汚泥」がもたらす環境破壊、そこに含まれるヒ素などの重金属の環境への放出、京都の水循環に与える大きな影響、すでに大事故が発生している「大深度地下活用法の適用」問題など、京都の街と自然、暮らしに破壊的影響を与える危険な計画である。

 ②さらに、概算で2兆1千億円といわれる莫大な建設費の問題は、私たち納税者にとって、また京都市にとって巨額の負担を強いられるから、「財政状況の悪化」を進行させるものである。採算性もなく、莫大な費用がかかる北陸新幹線京都延伸計画の中止を決断することを求めている。

 京都市議会が、本市に巨額の負担を強いる「北陸新幹線京都延伸計画」について「財政上、京都市の莫大な負担には同意することはできない」と表明し、市民のくらしを守るため、計画不同意の決議をされるように求めますと言う趣旨の請願であった。

 このような請願を提出して成り行きを待っていたが一向に市議会からの反応がない。そして、7月27日に請願者代表である筆者の自宅に「請願受理通知」が市議会事務局議事課から市会議長名で送られてきた。やっと正式に受理され審議にかけてもらえるのだと喜んだ直後に友人からメールが入った。

 曰く、「お前が代表で提出した請願書が市議会の総務消防委員会に付託・審議され、不採択になった。その模様はネットで中継されており、市議会ホームページで今でも見られるぞ」という。パソコンで検索して見ると、7月19日の総務消防委員会の議論と不採択の模様が映し出された。

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 呆れ果て、腹が立ったので市議会事務局に電話で抗議したが、ラチが開かない。そこで翌日の午前9時半に市議会議長や委員会の議員に「どのような質の高い議論をされたのかは存じ上げないが、請願者本人に委員会の日程や委員会中継を通知するべきなのに、全てが終了して10日後に「請願受理通知」を送付してくるとは、請願者を侮辱する以外の何物でもないと強く抗議した。

 「より身近に感じていただけける議会づくりに全力を挙げて取り組んで」いない証拠として本抗議文を関係者に送り、「問題点の改善を強く求めるものである」との抗議文を関係者に直接渡した。

 その2時間後に田中市議会議長自らが筆者に電話し、このような不誠実な対応しかしていなかったのは申し訳ない。市議会事務局に厳重に注意し、今後は適切な対応を取るようにすると言ってきた。

 これは予想外の反応であったが、請願は委員会の結論を本議会に報告され、不採択が決定されるのは9月になるという。

 そうすれば市議会事務局は不採択になった旨を葉書で通知してくるのだろうか。市民をバカにする官僚の振る舞いの見本を見たようである。コロナ禍で疲れた身をさらに疲れさせる夏の出来事である。

                                               (石田紀郎:市民環境研究所)

  


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