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コラム 南から北から
山で感じる四季の移り変わり


 疋田さん、ありがとうございます。墓場は天国!!選んだ道を二人で楽しく格闘しながら歩んでいきます。また、前回の原稿を読んだと、たくさんの方から驚きと祝福の連絡をいただきました。本当にありがとうございました。

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 今年の梅雨入りは早く、私たち畜産農家にも影響が出ました。この時季は、牧草の収穫、播種と忙しいのですが、雨が続き収穫が遅れ、それに伴い播種も遅れてしまいました。数時間でコロコロと変わる天気予報。振り回されて腹立つこともありますが、昔はこんなものもなかったのだから、恵まれているのに文句ばかりでは良くないなと思いながら、自然相手の仕事の醍醐味だと思えるように、時間にも気持ちにも余裕を持ちたいものです。

 私たちは、田んぼを借りて転作助成金をもらいながら、約3町歩の牧草を作っています。こちらでも耕作放棄地が年々増えてきていて、カヤやセイタカアワダチソウが生えて荒れ放題となっている田んぼが多いです。そのため、多くの人が快く田んぼを貸してくれ、牧草を作ると喜んでくれます。私たちの方が感謝すべきなのに感謝されることもあります。

 最近も、近くを通りかかったおじいちゃんが「そろそろ田んぼができなくなるから、その時は借りてくれんか」と声がかかりました。今年だけで、このように声をかけられたのは4人目です。借りられるのは嬉しいし、貸してもいいと思ってもらえているのも有り難いのですが、高齢化をひしひしと感じて、寂しく悲しい思いもあります。種子島でも高齢化が問題でしたが、こちらの方が深刻に感じます。

 たしかに米作りは手間がかかります。また、ここの田んぼは一枚が小さく、機械を入れるのも一苦労なところも多いです。そんな田んぼから手放していかれるため、私たちが借りている田んぼも車が入らず収穫に苦労しがちです。石も多く、毎年とっても湧き出るように出てくるそうです。種子島は平地で、田んぼも畑も作りやすかったですが、山間地ではこんなに農業をすることが大変なのだと知りました。

 その一方で、室戸は山の恵みがいっぱいあります。4月~5月は「小夏(日向夏とも言われる)」。カゴ一杯にもらった小夏は、初めてのマーマレード作りに。雨が降ると、2人でひたすら皮を細かく刻み、交代交代で煮詰めてできた初めてのマーマレードは、ヨーグルトやパンにつけて日々の食事を彩ってくれました。そうこうしている内にビワの出番です。

 草を集めていると、近所の方がビワを届けてくれました。種子島では見たことないほど大きく、一つ食べればお腹も心もいっぱいになりました。ある人からは、「いつでも採ったらええ」とビワの木ごといただきましたが、長雨の影響で熟れる前に、はち切れてしまったり、水っぽくなってしまったりして採りきれなかったのが残念です。

 今度はヤマモモの季節がやってきました。ヤマモモも「好きなときに採ったらええ」と声をかけられ、お言葉に甘えて帽子いっぱいに摘み取り、雨前にはタッパーも持参して無駄のないように収穫できました。たくさん採れたので焼酎に漬けてヤマモモ酒にしたりと、忙しい中でも楽しく過ごしています。ここにいると、四季の移り変わりを山で感じます。

■ヤマモモを収穫する
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 この原稿を書いている現在、まだ四国地方は梅雨明けしていませんが、山の緑も濃く鮮やかになり、麓の畑で草を集めながらふと顔を上げると、山の向こうで入道雲が今か今かと出番を待っているかのように、モクモクと顔を覗かせています。
     (松本木の実:高知県室戸市在住)



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