HOME過去号>197号  


市民環境研究所から

一日も早くオリンピック断念を


 今年の春は例年にない速度でやって来た。次々に起こる異常な自然現象は新型コロナ禍との緊張関係に上乗せになり、異常さが増幅して感じられる。そんな現象も、それなりの説明が付けば心休まるものである。

 筆者の家では、同居する犬の毛の抜け方が8年間の付き合いの中でも極めて多く、その異常さに戸惑った。皮膚病ではないかと心配になり獣医に尋ねたら、冬から春への変わりが早く、急激な気温上昇に反応した脱毛で愛犬だけの現象ではないとのことで安心した。

            ▼      ▼      ▼

 一方、コロナの感染拡大は一次、二次、三次と感染者数は変動するが、波形は高くなるばかりで、第四波が始まり、大阪府で1200人/日を越し、京都府でも170人を越した。大阪は完全な医療崩壊を招いており、大阪府内では発生する重症患者を収容し、治療する病床がないという。近隣自治体に助けを求めるが、兵庫、奈良、京都も患者数は急増し、頼みは滋賀県だけである。

 昨年の2月に始まった新型コロナ感染症から1年以上も経過しているのに、自治体も国も何をやっているのだろう。昨年の4月号の本欄に書いたように、2020年2月中旬に上京した時、東京地下鉄の超満員の車中でマスク着用者は2割以下だった。安倍首相も小池知事もオリンピック開催に未練を持ち、聖火リレーを福島で始めたが2月末にはオリンピック延期を表明した。

 それから丸一年が経過し、安倍は政権を投げ出し、小池は自分たちの責任を棚に上げて国民にちゃんとマスクを付けろと要求するだけで、オリンピック開催の責任者が次々と交代させられ、聖火リレーは無人のグランドで走っている。菅はオリンピックは「人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証し」などと意味不明の言葉で開催を強調している。

 そしてオリンピック開催まで66日になり、二階は「オリンピックでたくさん蔓延させたということになったらなんのためのオリンピックかわからない」と言いながら、オリンピック中止ではないと言っている。バッハ会長は改めて東京五輪の開催について「いまのところ開会式が7月23日に行われることは間違いない。中止・再延期の臆測は相手にしない」と明言した。国民の7割が「中止すべきだ」「延期すべきだ」と訴えている。

 さらに、オリンピック開催には医師、看護師、理学療法士などで1万人のスタッフが必要らしい。日本で全員のワクチン接種が終わるのは9月であると菅が表明したが、オリンピック終了後である。1万人もの医療スタッフが集められるなら、医療崩壊を防ぐべきだ。

 さらに、もっともけしからんのは、オリンピック関係の入国者には日本入国後の14日間の待機を課さないという方針だ。どんな合理的な理由でそのような例外を認められるのだろうか。

 何しろ世界各国からの来日であり、これからも変異種が何種類できるか分からない。発生した全ての変異種がオリンピック参加者によって日本に持ち込まれるかも知れないのに、なぜそのような特例をオリンピックだけに認めるのか、合理的な理由は存在しないだろう。1日も早くオリンピック断念宣言をして、コロナ禍終結を急ぐべきである。

             ▼      ▼      ▼

 コロナ禍が発生していなくとも、10年前に起こしてしまったフクシマの悲劇はなんら解決されていない。そんなこの国でのオリンピック開催には絶対反対である。にもかかわらず、恥知らずの安倍は「汚染水はアンダーコントロールである」という嘘で東京オリンピック開催決定し、恥ずかしげもなくはしゃぎ回っていた映像を思い出す。

 今年は「バイバイ原発・きょうと」を参加人数を制限して開催した。コロナ禍の中を福島から講演に来ていただいた武藤類子さん(福島原発告訴団団長)が出版された『10年後の福島からあなたへ』と題する著書(大月書店)を会場で買った。その中には心打つ東京オリンピック批判が書かれていた。

 今日、再びこの著書を開き、「フクシマとコロナ」との闘いを続けて行かなければと思った。

                       (石田紀郎:市民環境研究所)



©2002-2021 地域・アソシエーション研究所 All rights reserved.