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コラム 南から北から
確かな明日を迎えるには?


 年末まで2週間と迫った中でドカ雪が降りました。今年も昨年と同じ雪の少ない年になるのではと思っていたところに連日の雪降り。早朝の道路を行く除雪車の音で目が覚めます。加工作業が忙しくて家裏の畑の白菜や大根は収穫前にすっぽりと雪に埋まってしまいました。

 田畑の収穫作業と冬季の漬物や餅等の加工品づくりのせめぎ合いは毎年のことで、「しらたかノラの会」が始まった時から続いています。というより、もっと前の、「百姓として生きる」ために冬の出稼ぎをやめて農産加工の仕事を立ち上げた先輩の有機農家グループの時からです。

 文字通り、地に足をつけて、自然の恵みから自分たちの食べ物を作り、生計を立てるというその精神は、ノラの会にも受け継がれています。大金を稼ぐのではなく、確かな暮らしを続けていくための流儀ともいうべきでしょうか。

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 12月は、そうして作られた多種多品目のノラ製品が個人や生協に次々と届けられていきます。昔からのやり方で無燻蒸で作る「干し柿」、干した大根の「こうじ漬け」、辛味のある青菜に人参や大根を混ぜて作る「おみ漬」、白餅や玄米餅、エゴマ入りみそ餅に今年から加わった黒まめ餅など。米や豆・野菜の原材料の生産・収穫から始まって、作り方、詰め方、チラシ作成、発送まで少人数で手分けして目まぐるしく動きまわっています。

 詰め方のあとで残った端切れの「大根こうじ漬け」や「赤カブ漬」、「みそ餅」を味見して旨さが実感できた時、今年もいいものが届けられそう、と充実感がみなぎります。これまでやってきたこと、今後やり続けていけることの確かさを改めて感じます。

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■積雪の中に立つ柿の木

 そうした中、コロナ禍の蔓延する現実を前に、これから一体世の中はどうなっていくんだろうという不安も同時に感じています。国民の努力頼みで、ウィルスを抑え込むための検査体制の対策も打てず、命を救うために過重労働に耐えている医療従事者にきちんとした支援もできない政府への怒りや諦めが、そうした不安を増大させます。

 年々激しくなる気象変動の問題も、決め手となる対策が講じられないまま時間が経過していきます。さらには、種子島の古市さんが書いていた米軍基地の問題のように、政治的軍事的構造の問題も。誰かの犠牲の上に自分たちの生活が成り立っている現実を、どうやって変えていけるのか。

 政府に対する怒りを、現実を変えていく力に転換する知恵を発揮しないと、本当の意味で確かな明日はやって来ないと実感する師走のこのごろです。
                       (疋田美津子:山形県白鷹町在住)


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