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コラム 南から北から
島の魅力、大切にすべきものとは?


 10月から始まった芋(デンプン用甘藷、安納芋)の収穫も終盤になってきました。今年は安納芋を中心に「基腐病」という病気が拡がり、島全体が大きな被害を受けました。このままではさらに影響が拡大するため、早急な対応・対策が求められています。

 人間の世界ではコロナ、芋では基腐病。これまでなかった病気が拡がっては新しい薬、新しい取組み。耐性や変異にも対応していかなければなりません。何だか先の見えない迷路のようです。まずは自分の体を強くする、免疫力を上げる、健康な土づくりなど、根本をしっかりさせることが迷路に迷わないために必要だと思います。

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 芋の収穫をしていると、鳥たちがやって来ます。お目当ては、掘り起こされた土から出てくる虫たちです。美しい声が聞こえると、私たちは揃って手を止め、空を見上げて声の主を探します。

 そんなある時、突然轟音が聞こえ、空を見ると自衛隊ヘリが飛んでいました。10月下旬~11月上旬、自衛隊訓練が始まったのです。最近、訓練の頻度も多くなり、街で自衛隊員を見かけることにも慣れてしまいました。

 以前テレビで見た沖縄の方が、インタビューで「県外に出て、基地がないことに驚いた」と言っていました。これから生まれてくる子どもたちにとって、自衛隊・米軍・基地が当たり前になってしまうのではないかと不安です。

 現在、種子島の西12kmに位置する馬毛島では、米軍空母艦載機の陸上着陸訓練(FCLP)の移転計画が問題となっています。FCLPは、以前は神奈川県厚木基地で行われていましたが、騒音被害で飛行差し止め訴訟が起き、今は東京都硫黄島で行われています。そんなものが移転すれば、これまでの暮らしは大きく変わるでしょう。

 しかし、島民の賛否は分かれています。島では過疎化や経済の停滞が問題となっていて、移転に伴う自衛隊基地整備による人口増加、緊急搬送、災害時の支援強化、さらには交付金への期待があります。

 たしかに、訓練期間中は弁当発注やスーパーの利用などで、経済効果はあるようです。また、見学会を開けば300人程度集まり、中には、「かっこいい」「将来入隊したい」と自衛隊に憧れを持つ子どもたちもいます。

 今回は自衛隊誘致を盾に、後ろでFCLP移転を進めていて、問題を見えにくくさせているような気がしています。

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 一度、米軍基地化してしまうと、日本の法律では規制できずに、何を言っても解決できません。賛成する人たちは、離れているから騒音被害はない、上空を飛行しないから安全だという情報を信じています。どこにも確証はなく、日本の法律では守ってもらうことすらできないのに……。

 私の伯父は賛成派で、「こんな島にいい所なんてないんだから、基地にしてお金もらった方がいい」と言います。私は、哀しくなりました。島の魅力、大切にしていくべきものに気づいてほしい。

■訓練で島の上空を飛ぶ自衛隊のヘリコプター
 現在、西之表市長は反対の意志を表明しています。移住者のみなさんが率先して反対運動を行っています。移住者の方が、島の魅力に気づいているのです。ここで生まれた子どもたちが誇れる居場所、帰ってきたいと思える居場所であるためにはどうしたらいいのか。一人ひとりが考えるべきではないでしょうか。    

     (古市木の実:鹿児島県種子島在住)



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