コラム 南から北から
どこにいても米や野菜が作れるように
種子島の古市さん家族が、手刈りで2反の田んぼの稲刈りに2週間かかったお話を読みました。こちらでは、10月26日の今日、最後の田んぼの稲刈りです。大小さまざまある田んぼは全部で3町歩。
休日に同居の長男に助っ人を頼む以外、夫が一人でコンバインで刈り、軽トラックの荷台に排出し、乾燥機に運びます。乾燥機が三世帯の共同使用なのと、天気のやり繰り、中古のコンバインが時折故障することが重なり、今年の稲刈りも9月末から始めて約1ヶ月かかりました。
30年前に私がこちらに来たばかりのころは、わが家も手押しの機械で刈った稲わらを何人かで杭掛けしていました。今では、ほとんどの家がコンバインの一人稲刈りに代わり、休憩のためのお茶運びもなくなりました。
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二人の息子に農業を継いで欲しいと言ったことは一度もない夫が、この夏、オンラインで家族飲み会をした時、東京に住む次男に「PCR検査を受けて、稲刈りの手伝いに来ないか?」と一言。結局、来ないことになったのですが、「農業を継がないとしても、作物を育てるその時どきに、どんな仕事をしているのか、わかっていてほしい」というのがその意図するところだったようです。
高齢化と少子化が進行するこの町で(これは日本各地で進行していますが)、次世代の農業者を育てることはますます難しくなっています。ほとんどの中小農家が自分の代で終わりだと思っています。
例外は、補助金を駆使し、農地を集約化し、大型機械を入れて少人数で経営する数件の農業法人のみ。彼らは自分の息子たちを月給20万円余で雇い、後継者として育成しています。残念ながら、こうした法人は化学肥料や除草剤などの農薬も駆使せざるを得ませんが。
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数年前「半農半X」という言葉が流行り、今年はコロナ禍で地方での農的暮らしのイメージアップが図られましたが、現実はどうなのか?
依然として「お金にならない農業」に足を向ける人は少ないままなのでは?
「お金にならない」よりも「まともで新鮮で美味い食べ物を作り食べること」「美味しい空気を吸うこと」「汗を流す仕事の充実感を味わうこと」が勝るのを知ってもらうには、実際に体験し、自分の生活に少しずつ取り入れてもらうのがいいのでは。
ロシアのダーチャ(都市生活者の別荘農業)や市民農園など、自給自足農業をする人が広がっていくことが、今の日本では一番現実的な農業活性化なのかもしれない。
■今でも杭掛けで稲を刈る農家がわずかに残っている。わが家は20年くらい前からコンバインでの稲刈り |
(疋田美津子:山形県白鷹町在住)