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アソシ研リレーエッセイ

「仲間だから」を心の支えに


 私には、関西よつ葉連絡会の中で尊敬する人が何人かいてます。森下さんもそのうちの一人でした。

 森下さんに初めて会ったのは25年ほど前、クリエイト大阪がまだ天六にあった頃です。会員向けの請求書をもらうために雑居ビルの一室に入るとサーバーの唸りとキーボードの打撃音が聞こえる異空間でした。まるでショッカーのアジトに迷い込んだ少年ライダー隊のようにびびりながら「請求書くださいますかー?」と言うと、対応してくれたのが森下さんでした。優しい声とは裏腹に、淡々とした態度と眼差しに少し怖さを感じたものでした。

 それから10年の月日が流れ、東大阪人参クラブを立ち上げ、一反半の休耕田をよみがえらせることに苦慮していたときに、ふと現れたのが森下さんでした。クワの振り方や畝の作り方、水はけの良い畑にするためのコツなど、即興でしたがいろいろと教えてくれました。なぜ来てくれたのですかと尋ねると「うん、仲間だから」と一言。心が震えた瞬間でした。

 それ以来は親近感を覚え、よつ葉ビルに来る用事があると、たとえ会話は弾まなくても、必ずクリエイト大阪のある3階に立ち寄り、顔は見るようになりました。

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 話は変わりますが、最近はどこも人手不足で、うちもいろいろな人を面接してきました。お盆やゴールデンウィーク、祭日が休みじゃないとイヤ、朝が早いのはダメ、年末ギリギリまで配達があるのはきつい、60件も配達があるのは無理……、とにかく条件に厳しい。

 たとえ入社しても、独り立ちの直前に適当な理由を付けてやめてしまう人が連続しました。ちょっと気に入らない事やほかに条件の良いところがあれば簡単に鞍替えしてしまうわがままな人が、なんて世の中に多いのでしょう。不満があれば自分たちで努力し、より良い環境や暮らしを作ろうとはしないのでしょうか?と憤ってしまいます。

 だけど、そんな世の中で仲間を大切にし続けた森下さんみたいな人がいたというだけでも、心の穢れが取り去られます。

 森下さんが残してくれた「仲間だから…」という言葉は、いまの私の心の支えになっています。

                                                                             (野口博文:㈱東大阪産直センター)



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