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連載 ネパール・タライ平原の村から(101)
カタログ『ライフ』の“向こう側”へ


ネパールの農村で暮らす、元よつば農産職員の藤井牧人君の定期報告。その101回目。


 自分たちの暮らしはできる限り自分たちで作る生活や山の暮らしについて書いていると、必ず書き切れない部分が思い浮かびます。

 例えば、それはカトマンドゥやポカラ、ナラヤンガートにある地下駐車場完備の5階建てスーパー、“バトバテーニスーパーマーケット”での休日。家族連れでうろうろして、1階の輸入食品なども並ぶ食料品売り場を出たところで、アイスクリームを食べて過ごす、というような「消費生活」です。

 その落差にちょっと呆気にとられそうになるのですが、水牛の世話や野良仕事とは異なる、もう一つのネパールがそこにあります。ただ、消費生活の進展は、同時に農山村の換金作物生産の導入ともつながっています。生産と消費の分断とか、経済システムの浸透とでも呼ぶべきでしょうか。

■ネスレ社が大半を占有するコーヒーの陳列棚

 もちろん、ヒト・モノ・サービスが海を越える、グローバル市場の仕組みの中にネパールも、しっかり組み込まれています。

 そうした現実の中、単に安い輸出農産物を買い漁るアグリビジネスとは異なるグループも、たくさんあるのではないでしょうか。そうしたグループの生産や流通を担う人たちについて、生産品目について、生産地域について、その歴史や考えていることについて、話を聞きたいと思いました。

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 それで一番日常的なところは……。関西よつ葉連絡会のカタログ『ライフ』や同封のチラシを1年通して見てみると、遠く離れたところのネパール産が結構あることにみなさんご気付きでしょうか? 会員である実家の母が時々「こんなん載ってたよ」と、『ライフ』の切り抜きなどを送ってくれます。

 僕が把握しているだけでも、コーヒー・紅茶・スパイス・ハチミツ・ハンディクラフト類・保湿クリームの紹介が過去にありました。

 生産者団体は、第三世界ショップ、ナイアード、ネパリバザーロ、フェアトレードカンパニー(People Tree)。地元の資源や素材を利用した「ネパールならでは」という言葉がしっくり来るアイテムだと思います。

 また、『ライフ』での紹介はなくても、関西よつ葉連絡会とお付き合いのある生産者団体でネパール産を扱うところもあります。2019年にイラム郡とカブレ郡でプロジェクトを始めた海ノ向こうコーヒー。ニルマルポカリ村のコーヒーを扱うキョーワズ珈琲。

 さらに、ネパール産ではありませんがアグロス胡麻郷が生産するネパール米「OR」は、1月の「今週のお知らせ」で販売されます。他にもネパールと交流のある個人・生産者団体があるかもしれません。

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 そんなふうに、カタログなどに載っていた商品の現地側生産者(組織)・生産地のいくつかを訪ねてみたいと考えています。どれだけ高品質で安心安全かを調べることが狙いではありません。カタログ『ライフ』の“向こう側”について、教えてもらうことが目的です。

 まずは、カトマンドゥやポカラ近郊の生産者団体から、ネパール流で人づてやアポなしで訪ねてみたいと思っています。
                                                                                                    (藤井牧人)



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