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書 評

幡谷則子 編
ラテンアメリカの連帯経済
コモン・グッドの再生をめざして


                      刊行:上智大学出版、発売:ぎょうせい、2019年


 関西よつ葉連絡会や地域・アソシエーション研究所が、ラテンアメリカでの連帯経済構築をめざす活動と直接交流する機会を持つことができたのが、2016年5月、コロンビアで協同組合運動に取り組んでこられたミゲル・ファハルド氏との出会いだった(参照:本誌第139号、2016年6月)。

 ラテンアメリカ連帯経済研究会を担ってこられた幡谷則子氏をはじめ山本純一氏、小池洋一氏が準備されたファハルド氏の訪日の中で、講演会や意見交換、能勢農場訪問等の貴重な機会をつくっていただいた。そんなラテンアメリカ連帯経済研究会が今回上梓されたのが本書である。

 読むとすぐに、3年以上も前のミゲル・ファハルド氏との会話が鮮やかに思い出される。遠く離れ、歴史も文化もまったく異なるコロンビアでの彼らの活動が、自分たちの関西でのささやかな実践と重なり合っていることを感じ、強く励まされたものだった。「経済というのは人間の生命や生活に資するものであって、我々の生命や生活が経済のためにあるのではありません」。このファハルド氏の言葉は、私たちの事業活動の原点でもあると改めて思う。

 本書に目を通して興味を引かれた言葉に「家政」というのがあった。ペルーやボリビアにおける都市住民の活動を紹介しつつ、「家政の自立」という目標が語られていた重富恵子氏の報告で、貨幣価値では測られない領域としての家政という場の重要性を指摘されたものだった。

 ともすれば「私的領域」として見すごされがちな家政を、私たちも、もう一度、事業活動の中で改めて見直してみる必要があるのでは。そんな刺激を受けた内容だったように思う。

 年齢を重ね、思考が内向きにどんどんなっていきがちな中で、ラテンアメリカ民衆の運動の現場に出かけてみたいと思った一冊でした。

                                                (津田道夫:当研究所事務局)




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