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地域から政治を考える

危機的な日韓関係について

“嫌韓”が煽られる時だからこそ
日韓の市民レベルでの連帯が必要



 9月7日に京都で「韓国の現状・日韓関係の今後」という講演を聞いた。講師は在日韓国研究所の金光男さん。韓国から戻って来たばかりで、韓国の最新の状況を聞くことができた。緊急の呼びかけにもかかわらず、80人以上が参加した。

 最初に金さんは、日本のマスコミが大騒ぎしていた曺国氏の法務大臣への任命の問題について言及された。

 日本のマスコミでは、剥いても剥いても疑惑が出てくる「玉ねぎ男」と面白おかしく報道されていたが、金さんが明らかにしたのは、文在寅政権が民主化を進めてきた中で、最後に残されたのが検察の改革だった。それを目指して、大統領の朋友であった曺国氏を法務大臣に起用し、検察改革を断行しようとしていた。検察がそれを阻止するために疑惑を持ち出したということだった。

 韓国の検察は、日本の検察と違って警察と検察の役割分担がなく、検察がすべての権限をもっており、それがこれまでの政権を揺るがしてきた。これにメスを入れることが検察改革であった。

 検察が持ち出してきた疑惑も、曺国氏と直接からんでいるのは、娘の不正入学疑惑だけである。韓国民衆が批判しているのは、これまで民主派として活躍して曺国氏が特権階級と同じことをしていることへの失望と怒りである。

 日本のマスコミは、この問題を茶化し、問題の本質を隠して、嫌韓の宣伝に使っている。

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 8月22日の韓国が「GSOMIA(軍事情報包括的保護条約)」の破棄を決定したが、これは日本が7月1日に発表した、韓国に対する「半導体材料3品目に対する輸出規制」に対抗するものである。

 日本は韓国との事前協議も行わず、徴用工問題に対する韓国大法院の判決に対して一方的に事実上の報復措置を行い、続いて8月2日には輸出優遇対象国から韓国を除外することになった。これが韓国との信頼関係を著しく損なうことになった。

 そして、日本が「韓国を安全保障上の友好国ではない」と主張している以上、韓国にとってはGSOMIAを延長する理由がないことは明らかであった。この問題の責任は、日本政府の韓国敵視策にある。

 韓国大法院の判決は、日韓請求権協定を否定していない。「個人の請求権は消滅していない」と主張しているのであって、過去の日本政府も認めていることである。

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 また、金光男さんの講演で分かったのは、韓国民衆は「反日」ではなく、むしろ「反安倍」を主張していることである。言い換えれば、「反安倍」という点で日韓の市民運動は共同できるということだ。

 さらに、韓国内でも日本の憲法9条への評価は高く、9条改憲阻止についても共同していくことができると述べておられた。

 これまでのような韓国の運動に対する日本側からの一方的な支援連帯ではなく、韓国の側から日本の運動に支援し連帯する双方向の関係が生まれてきているとのことだ。

 要するに、日韓の市民の連帯・協力は、平和憲法を東アジアの平和の礎にすること、また「朝鮮半島の平和プロセスによる東アジア平和秩序の構築」を共通目標にするものとして捉えられるのだ。

 この点で具体的には、韓国の市民連帯運動と日本の9条改憲に反対する総がかり行動が共同声明を準備しているという。

 安倍政権が韓国敵視政策を続ける中で、日韓の市民運動の連帯・共同が強められていることを実感した。

 それにしても、日本人の無知に乗じたマスコミによる嫌韓の煽り立ては、恐ろしいものがある。真実を学び、伝えることの重要さを改めて感じた。

                                                                  (戸平和夫:北摂反戦民主政治連盟)




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