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アソシ研リレーエッセイ

テクノロジーの進化で人間は神になるか
『ホモ・デウス』と『攻殻
機動隊』



 最近、北摂反戦民主政治連盟の勉強会で、NHKスペシャル「人間は神になる!?『ホモ・デウス』とは」を見ました。『ホモ・デウス』の著者はイスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ。世界で800万部の大ベストセラー『サピエンス全史』では、人類250万年の歴史を「小麦に人間が家畜化された」などといった、独自の視点で展開しています。

 『ホモ・デウス』もベストセラーらしく、インタビューの中でこう言っていました。

 「人類は神の力だと信じられてきた能力を手にしようとしている。これまで私たちは技術によって周りの環境を変えてきたが、自分自身を変えることはなかった。バイオテクノロジーとAIは、私たち自身を変える可能性がある。身体や脳、考えを変化させ、新たな人類が生まれようとしている」

 「今、世界では、AIやバイオテクノロジーの技術が急速に進化。牛肉の成分を含むトマトや2倍のスピードで成長するトラフグ。どちらも、DNAの書き換えによって生まれた。人類が歴史上はじめて、神だけが許された領域に踏み込み、その力を使って、みずからを自分で作り変えようとしている」

 「テクノロジーの進化によって、人間は単にAIにデータを提供するだけの存在になるおそれがある」

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 しかし、僕は彼の話にあまり新鮮なものを感じませんでした。『ホモ・デウス』の世界観は、アニメ『甲殻機動隊』の世界観を連想させるからです。ウキペディアによると以下のようなストーリーです。

 ……『攻殻機動隊』(英語タイトル:GHOST IN THE SHELL)は、士郎正宗による漫画作品。この作品を原作とする劇場用アニメ映画が1995年に公開され、またテレビアニメ作品が2002年に公開された。~中略~ 時は21世紀、第3次核大戦とアジアが勝利した第4次非核大戦を経て、世界は「地球統一ブロック」となり、科学技術が飛躍的に高度化した日本が舞台。その中でマイクロマシン技術(作中ではマイクロマシニングと表記されている)を使用して脳の神経ネットに素子(デバイス)を直接接続する電脳化技術や、義手・義足にロボット技術を付加した発展系であるサイボーグ(義体化)技術が発展、普及した。結果、多くの人間が電脳によってインターネットに直接アクセスできる時代が到来した……

 ストーリーの設定に「公安9課」とか「機動隊」とかいう言葉が使われているので、そういう言葉にあまりよいイメージを持っていない僕は特別に見たいという気持ちはなりませんでしたが、たまたま見たら面白かったことを覚えています。このアニメは海外での評価が高く、ハリウッド映画の「マトリックス」にも影響を与えたという話を聞いたことがあります。『ホモ・デウス』の著者にも影響を与えたのでしょうか。一度聞いてみたいものです。

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 こんなことを書くと「こいついい歳をしてオタクか」と思った方も多いと思いますが、実は全くその通り。僕は正真正銘のオタクです。昔は、オタクのイメージが悪すぎて、まるで「変質者」か「犯罪者予備軍」のような目で見られていました。しかし、日本のサブカルチャーが海外で高く評価され、マーケットにおけるシェアが大きくなってくると、オタクに対する世の中の目線もだいぶ柔らかくなってきたように思います。

 5月の「よつばの学校全職員講座」で「食の哲学」について話してくれた藤原辰史さん(京都大学)にお会いしたときのことです。本で読んだときのイメージと直に話を聞いたときの印象は違っていることが多いのですが、藤原さんはだいたい同じ感じの人でした。講座のあとの交流会で、藤原さんがドイツ語に精通しており、マルクスの文献もドイツ語で読まれていると聞いて、「以前から『物質代謝』という翻訳に日本語としての違和感があったのですが他の言葉で訳せませんか?」とお聞きしたら、専門家らしくちゃんと答えてくれました。

 最後に「藤原さんはオタクでしょう?」という質問をしたところ、ちょっと嬉しそうに「そうです。僕はオタクです!」と胸を張って答えていました。この人はいい先生だと思います。

                                         (田中昭彦:関西よつ葉連絡会事務局)



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