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市民環境研究所から

続報・自衛隊への宛名シール提供問題


 本誌3月号で触れた、自衛隊への宛名シール提供問題だが、京都市はついに4月8日、自衛隊に宛名シールを提供した。筆者は3月、この問題を議論した「情報公開・個人情報保護審議会」会長の尾形健(同志社大学法学部教授)に質問書を送ったが、回答文が筆者の手許に届いたのは4月10日ごろ、しかも回答文の日付は4月8日であった。

 質問書の内容は概ね以下のとおりである。

 「自衛隊への宛名シール提供に対して、どのような議論をされ承認されたのかの説明が一切なく、市民にとっては経過が不明です。京都市民としては、単に電子データから宛名シールへの転写の技術的手法のみを議論されたとしか思えません。審議会の役割として『公文書の公開に関する制度の運営に関する重要事項及び当該制度の改善について,市長の諮問に応じ,調査及び審議を行う。』と記されていますが、どのような調査や審議がなされたのか分かりません。京都市からの審議要請の内容及び審議会での討議を、個人情報保護の側面から市民に対して明示・解説をされることを要求します。」

 審議会会長からの回答書は、次のようだ。

 「ご照会の点でございますが、自衛官募集にかかる適齢者情報の抽出及び情報提供事務の審議は、京都市個人情報保護条例に基づき、実施機関(市長等)が、個人情報取扱事務に関し、新たに個人情報の電子計算機処理をしようとするときは、あらかじめ審議会の意見を聴かなければならないと定める条例第10条第2項の規定に基づき、行われたものでございます。今回頂戴したお手紙は、京都市情報公開・個人情報保護審議会の会長及びその委員全員に対し、『京都市からの審議要請の内容および審議会での討議を個人情報保護の本質論から市民に対して明示・解説することを要求します。』とされておりますが、審議会での審議は、平成30年11月9日に合議体として行ったものであり、誠に申し訳ございませんが、審議会での討議に関する問い合わせについて、会長又は各委員は個別に回答する立場にございません。ご不明な点などございましたら、大変お手数ではございますが、審議会事務局である京都市の情報管理担当にご照会いただきますよう、お願い申し上げます。」

 もちろん納得できないので、以下の返信をした。

 「回答があったのは、京都市が自衛隊に宛名シールを送った後である。京都市がこの日を選んだのは市会議員選挙が7日に終了したからであり、尾形会長もこの日を選んだのだろう。流行り言葉で言えば、審議会会長が門川市長の行動を忖度したのだろう。審議会とはそのような存在であり、個人の権利を擁護するものではないのだと自ら認めたと読める。憲法学者とはその程度の学者でしかないのだろうか。この回答を読んでいただき、京都市の個人情報保護などは形だけで、審議会は人権を守る機構なのかどうかを判断してほしい。この回答が入っていた郵便封筒には差出人の住所氏名がなく、切手代わりに料金後納郵便の印刷があり、宛先の住所が書かれた『宛名シール』が貼られていた。どう見ても市役所担当部署の作業としか思えない。回答書も尾形会長が書いたものではないのではとさえ思えるほどふざけたものであった。なぜ自分が責任をもって回答すると言えないのかと不思議である。必要ならば、言われなくとも情報管理担当に電話をするし、質問提出以前にすでに電話をしている。審議会の会長として説明責任を果たしてくれと要求したのである。それも出来ないほどの無責任、京都市当局の下僕としてしか機能しないのなら、申し訳ないが市民が支払った税金を使う委員を辞任していただきたい。選挙が終わった日付で回答書を出すような姿勢では京都市当局の下僕と言われても仕方がないであろう。」

 会長からの返信はないが、その後、この審議会を統括している機関の係長に面談したところ、審議会は京都市の付属機関であると教えてくれた。もちろんそうであろうが、付属機関というのは下僕ではないだろう、と尋ねたら、困った顔で黙っていた。

 この文をお読みいただいた方が居られる自治体では、宛名シール問題はどのようになっているのか教えていただきたい。昨夜、市会議員選挙を共に闘った仲間の打ち上げ会があり、久しぶりに顔を合わせた女性から、22歳の息子のところに自衛隊からの入隊要請文が届いたので、即座に破り捨てたと教えてくれた。

                                             (石田紀郎:市民環境研究所)




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