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アソシ研リレーエッセイ

進化するコンビニ弁当とその裏側


 セブンイレブンのソース焼きそばはすごくうまい。焼餃子もあきらかに王将のそれよりもうまい。ただし、店頭でちゃんと指定通りに電子レンジでチンしてもらって、熱々のものを食べてほしい。冷めたものはちょっと食べられない。

 うまい理由はいくつかある。ひとつはアミノ酸の使い方が上手になっている。味の素はグルタミン酸ソーダであってグルタミン酸そのものではないので、使用するとグルタミン酸のうま味も出るが、ナトリウムのイヤ味も出てしまう。ところがおそらく、今ではグルタミン酸そのもの(液状か?)が流通していて使うことができるのだと思う。その他、乳化剤やら可塑剤やら添加物のオンパレードで、それらの使い方がうまくなっている、のだろう。

 もうひとつは電子レンジの使い方がうまい。たとえば冬場のひとり鍋物の場合、チンをして初めて野菜や肉が炊きあがるように作ってある。また豆腐も芯の所までしっかり温まっている。電子レンジが調理器具であることを認識させてくれる。

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 これらのことを可能にしているのは、セブンイレブンだけが自社で食品工場をもっていて、試作から製造まで思い通りにやっているからだろう。外注してラベルだけで自社製にしている他のコンビニとは明らかに差がある。しかも、東日本、西日本、九州と3工場あって、それぞれの土地に合わせた味付けにしているそうだ。このことを朝日新聞の家庭欄の記事で知ったのだが、その時「味は作るものです」と担当者の言葉が載っていた。

 例えばおでんの大根は白くて固いのにちゃんと味がしみている。大手のハム工場で使われているのと同じような機械で、大根にダシを注入している、のだと思う。こうすれば素材の大根そのものは味がなくて固いだけの、それでいて太さが均一の、つまり市販されているようなまずい大根の方が都合がいい。長いこと炊いていても黒ずんでこないし、形も崩れない。

 わが国のコンビニはそれぞれ、ローソンはダイエーが、ファミマは西友が、サークルKはユニーが、セブンイレブンはイトーヨーカ堂が作った。ダイエーや西友がつぶれたりしたなかで、イトーヨーカ堂はかなり早くからスーパーの方に見切りをつけて、セブンイレブンの方に軸足を移した。それが今日のセブンイレブンと他のコンビニとの差を生んでいる。

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 とは言え、オーナーの疲弊やパート従業員の不足など、足許に深刻な問題を抱えている。先頃も東大阪のオーナーが人手不足のため深夜営業を見直したいと本部に申し出たところ、断られたばかりか、1700万円の違約金をとると脅された。深夜に働く人はそれほどいるわけがなく、取り合いとなれば賃金も上がるだろうが、それは全部オーナーに負担させておいて、「深夜営業は絶対やれ」では無責任きわまりない。

 何年か前にもセブンイレブンのオーナーが値引き販売の申し出をしたところ、やはり「絶対ダメ」だった。末端小売価格を決めるのは本来オーナーに権限があるはずだが、「全国全店統一価格」を貫くために、売れ残りのムダを全部オーナーに押しつける。いつもこうしてオーナーと本部とでもめるのはセブンイレブンが多く、それだけ締め付けが厳しいのだろう。利用者からすれば、トイレの仕様まで統一されていて、使いやすいのだが。

 深夜ばかりでなく、コンビニのレジは大変である。トイレ掃除からゴミ処理まで何から何までやらされて、その上レジの仕事も実に多様で大変そう。よくやってると感心するほどだ。あれで時間給1000円ではだんだん働く人がいなくなる。これも本部が何か支援策を考えるべきだ。

 結局のところ、オーナーと働く者をこき使って本部が肥え太るシステムなんだろう。

                                                   (河合左千夫:㈱やさい村)



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