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アソシ研リレーエッセイ

穏やかに過ごしたい新年
そうさせてくれない現実の中で



 年が明けた。昨年は私の住む高槻市も多くの災害に見舞われた。どうか今年は穏やかに過ごしたい。……とは言っていられそうもない。

 今年は私が立候補する統一地方選も含め、一年を通して選挙が続く。いくつか大きな政治日程も予定されている。やっぱり穏やかに過ごせそうにない。

 穏やかでないといえば日韓関係か。いやしかし、レーダー照射の件などは、結局何が問題だったのかもよくわからない。ただ、安倍政権としては韓国が非礼な国だという印象が国内で広がればそれでよかったのだろう。

 それに比して、北方領土をめぐる日本政府のロシアへの態度は対照的である。韓国には勇ましい言動をとりながら、ロシアに対してはおとなしい保守層(及びネトウヨ)のふるまいを見ると、脈々と続く隣国への差別意識を感じずにはいられない。

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 12月の市議会で「北朝鮮による拉致問題の早期解決を求める意見書」が提出された。水面下で自民党の府議会議員が動いていたようだ。この議員は日本会議の地方議員連盟の幹事長を務めている。

 意見書は質疑ののち、採決される。高槻市議会では、可決の見込みがない意見書は提出しないという慣例があるため、この意見書は可決することは決まっていた。

 正直迷ったが、私は賛成した。批判も受けるつもりで。ただ、何も言わないまま挙手することだけはしたくなかったので次のようなことを言った。

 「国家による拉致は重大な人権侵害であり、早期の解決が望まれることに異論はない、しかし残念なことに拉致問題を政治利用するひとたちがいる。そのなかには、ヘイトスピーチやヘイトクライムなどのあからさまな民族差別を行ったり、過去の朝鮮半島に対する日本の侵略戦争を正当化するひとたちがいる。わたしはこのようなひとたちの考えには一切与しないと申し上げる。過去の日本の過ちを反省しなければ拉致問題の真の解決はない」

 発言をしたのは私ひとりで、意見書は全会一致で可決された。採決の後、自民党の議員が「あなたの言っていることもわかっている」というようなことを言ってきたが、“嫌味かよ”と思った。

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 テレビのワイドショーや芸人がコメンテーターをしている番組では、韓国や中国を画一的な見方で批判するものが多い。こういうのを毎日見ていたら、自然に差別感情を持つだろう。4月には問題の外国人労働者の受け入れ拡大が施行となるが、これもアジアや南米の国々に対する差別が根っこにある。だから法律無視の労働がまかり通っているのだ。

 この原稿を書いている前夜、大坂なおみ選手が全豪オープンで優勝した。「日本人初の快挙」という文句が空回りしてしまう彼女の存在が、日本を覆う閉塞的な価値観や差別意識を変えることにならないかな……って人任せはいかん。僕もがんばろ。ということでよろしくお願いします。

                                                                           (高木隆太:高槻市議会議員)


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