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地域から政治を考える

家族劇団「天然木」の公演から
「私は私にできることをしているだけ」


 9月22日、「豊能憲法カフェ」「豊能9条の会」「能勢の憲法カフェ」「能勢の9条の会」の共催で、熊本の家族ミュージカル劇団「天然木」を招き、豊能町の西公民館で公演を行いました。「天然木」は熊本県山都町を拠点に、父、母、長女、次女、長男、次男の家族6人で脚本から役者まですべてをこなしています。今回、熊本から来てくれたのは、凛花ちゃんとしずくちゃんの姉妹。想像以上にすばらしい演技を披露してくれました。

 豊能町の後援で、お年寄りから家族連れまで50人くらいが参加し、盛況のうちに終わりました。前日は豊中で公演し、豊能町の翌日は高槻で公演していただきました。

 今回の公演のきっかけは、沖縄・辺野古を訪れた際に、彼女たちのパーフォーマンスを見て感動した豊中の仲間が、北摂地区でも公演を実現したいと呼びかけたことでした。

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 当初の予定では、「大矢野原に立って」という演目だけだったのですが、豊能では9条の会が主催者に入っていると聞いて、急きょ彼女たちから「ばあちゃんのlove&peace」という演目を追加したいと提案していただきました。
天然木
 この話は、ばあちゃんが仲間と一緒に9条の会を立ち上げたことから始まります。それを聞いた孫娘のたま子と友達が会の集まりに遊びに行き、ばあちゃんやじいちゃんの話を聞きます。青春時代の戦争体験や戦後の苦難、昔話を面白おかしく話し、「二度と戦争をしてはならない」と9条の会を立ち上げたばあちゃんに、たま子は「世の中の役に立つために何をすればいいの?」と尋ねます。

 ばあちゃんは「何でも自分の思うことを言い、したいと思うことをすること」と答えるのでした。

 二人はばあちゃんたちの思いを、南アメリカ先住民の物語から「クリキンディの歌」と「憲法第9条」の歌に託し、素晴らしいハーモニーで歌い上げます。

 火事に見舞われた森の中で、逃げまどう動物たちを尻目に、ハチドリのクリキンディたちはくちばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは炎の上に落とします。「そんなことをしていったい何になる」と訊く動物たちに、クリキンディは答えます。「私は私にできることをしてるだけ」。

 この歌はいま、何をやってもむだと絶望してしまいそうになるわたしたちに、勇気をくれる応援歌になりました。

 次の「大矢野原に立って」という演目は、熊本の自衛隊基地の周辺に生きる人々がテーマです。田舎の青年と婚活で知り合った娘が訪ねてくることから始まるお話は、米軍占領時代、その後の自衛隊基地になり、日米豪演習の時代に。最後に熊本地震で命を救われた女性が、若い自衛隊員に声をかけるという感動的なシーンで終わります。

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 衣装も背景セットもない二人芝居。透き通るような二人の歌声、躍動的なダンス。そして、コミカルなお芝居。どれをとっても素晴らしいものでした。

 そのあとも二人を囲んで交流タイムが行われ、88歳の元予科練のお年寄りも発言があったり、家族連れできた人の発言もあったりと終始なごやかな雰囲気で終わりました。

 私は残念ながら参加できませんでしたが、打ち上げも大成功だったようです。

 プロパガンダでなく、直接人々の心の中に入ってくるような芸術は、すべての人々に強く訴える力があるのだと思いました。ぜひもう一度関西にきてもらいたいと思いました。

                    (戸平和夫:北摂反戦民主政治連盟)



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