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アソシ研リレーエッセイ

新しいポピュリズムの未来とは


 トランプ米大統領はさほど嫌いじゃない。だって良い人じゃないか? あれほど心配事であったTPP(環太平洋連携協定)からさっさと離脱してくれたんだから。

 そんな冗談を言っている矢先に、国際的孤立をさけてか、突然のTPP復帰を匂わす発言。それを受けて「TPPを日米で牽引しよう」と大統領に働きかけるという安倍首相の声明。

 なんやねん!! なんでこうも政治家は経済優先で、民衆のための政治ができないのか? それは経済を握っているものたちが事実上の支配者であることが多く、その前には政治家が無力なことが多いからだ。強烈な経済グローバル化が進み、20世紀型の所得分配の仕組みはすでに破綻してしまった。無い知恵を絞っていろいろ考えています。

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 民主主義とポピュリズムはなんとなく重なる部分が多いように思います。民主主義はエリートが民意を集約して政治に反映するが、だいたいのところエリートに都合のいいように捻じ曲げてしまう。おおよそ民意を反映していないので、非常に不満がたまる。ポピュリズムはエリート層を敵と見立て、民衆の不満を糧に多数の支持を得て政権を勝ち取る。だけど、理念をないがしろにしているため、なかなかうまくいかない。

 2009年9月からの3年3ヶ月に及ぶ民主党政権。いま思えば、あれが日本版ポピュリズムであったのかもしれません。当初は「コンクリートから人へ」「官僚主導から政治主導へ」「地域主権」「国民の生活が第一」という希望の持てる政策を多数唱え、私たちに大きな期待を抱かせるものでした。一応は壮大なる理念があったはず……たぶんあったはず。その後にそうした理念はほとんど失われてしまい、失敗といわれるものになりました。

 とにもかくにも、日本の国政選挙で自民党以外の単独政党が民意による衆議院議員総選挙を経て政権交代した、初めての例となります。いい加減な政治をしていると政権をひっくり返せるぞ!ということが証明されただけでも、大いに意義のあることだとは思います。私は、民主主義よりポピュリズムのほうが民意を反映している分だけ上位と考えます。

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 さて、問題はそのあとです。理念と現実問題をうまく調和させていく指導者の存在も不可欠ですが、みんなが指導者の出現を待つのではなく、名も無い市民から社会を変えてしまうような世の中づくりを実践していくことが大切です。それは国家でも地域でも会社という単位でも同じこと。そうすることで愚民政治と揶揄されないような、新しいポピュリズムの未来が見えてくるような気がします。

                (野口博文:㈱よつ葉ホームデリバリー東大阪)



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