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地域から政治を考える

過疎の町から考える
多様な交流の場から町おこしを



 大阪府の北の端にある山里、豊能郡能勢町。選挙の時にポスティングをして回ると、目立つのが空き家である。とくに、かなり前につくられた「新興住宅街」は、無残に歯抜けのように人が住んでおらずに荒れた家が並んでいる。能勢町の人口は減り続け、小中学校は一つに統合され、唯一の高校も、豊中高校の分校になることで廃校をギリギリ免れている。

 町の中で、若い人や子供を見ることはまれである。65歳以上が人口の36%を占め、10歳以下の子どもはわずか4.1%である。能勢町は、車で1時間も走れば大阪のど真ん中に到達するような大都市圏の近郊だが、鉄道がないことが人口減少の要因になっており、毎年人口が減っている。現在まだ1万人はいるが、やがては1万人を割ることになるだろう。

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 2050年には、日本全体が過疎になっていくと言われる。経済成長の根幹は人口の増加であるが、人口減少社会に転じた日本は、これまでのような経済成長は成り立たなくなる。現状でさえ、実質賃金が低下し、非正規労働者が4割を超えている。安倍政権は「成長戦略」を主張し、地方創生政策をもって人口の増加を図ろうとしているが、それによってもたらされているのは格差の拡大である。これから結婚し、子育てをしようとする人たちをいかに増やすかが問題だが、現実にはそうした条件を望めない人々を増やしている。

 こうした政府の地方創生政策にそって、能勢町でも、子育て支援や観光開発に重点をおいて、人口を増やそうとしたり、観光客や移住者を増やそうとしている。しかし、鉄道はなくバスは不便という交通事情のままである限り、目論みどおりには行かないだろう。むしろ、交通の便利なところに移りたいというのが人情で、実際に能勢町でも鉄道のある隣の兵庫県川西市に出ていく人が多い。

 ある地域の人口が、他地域からの転入や他地域への転出によって生じる増減のことを「社会減」と言うらしい。能勢町の社会減は、このままでは止まらないだろうが、問題はそれだけではない。現在36%の人口を占める高齢者。この人たちが車に乗れなくなれば、どうなるか。新たに町内の公共交通を整備しなければ、高齢者は孤立するか、出ていかざるを得ないことになる。

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 選挙でも問われたことだが、過疎化する町の中で平和や共生の価値観を共有していくためには、地域を変える町民の自主的な活動が生まれてくることが必要だと思う。
ピースマーケット
 私はこの間、能勢町で行われている「ピースマーケット」に関わっている。これは、町外の人と町民の交流の場、そして国際交流の場、さらに平和と共生を感じあえる場をつくる試みだ。しかし、これまでの2回の開催では、参加者は町外の人々が多く、主催者の側にも町民が少ない状態だった。ようやく今年は地元・能勢高校の生徒たちも参加してくれた。これを機に町内へ広がってほしいと思う。

 私としては、このイベントを行政に頼らない町民の自主的な交流の場として発展させ、平和の大切さ、ともに生きることの大切さを感じ合い、共鳴し合う中で、能勢町の魅力を発信していきたい。それを通して、地域の活性化をはかると同時に社会を変えていく力が少しでも生まれてくればと考えている。

                                              (戸平和夫:北摂反戦民主政治連盟)



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