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地域から政治を考える

衆院総選挙の結果を受けて
改憲阻止の闘いをあきらめない



 10月23日に原稿を書いている。総選挙の結果はまったく予想通りになった。小池、前原の野党の分断によって、多くの地域で野党共闘が成立せず、野党がバラバラで候補者を擁立する結果になった。

 唯一の救いは、立憲民主党の登場で民進党内のリベラルの結集がつくられ、安倍批判票の受け皿になったことだ。しかし、これは、同時に批判票の受け皿であった共産党の票を減らすことになった。

 これは、第2次安倍政権を生み出し、民主党をボロボロにした野田の自爆解散に並ぶ暴挙だ。市民運動と野党がこれまで積み重ねてきた野党統一の努力が、小池、前原の策動で水の泡となってしまった。

 野党共闘を進めるのが共産党、社民党などの勢力だけになってしまい、統一候補によって各党が持つ基礎票を確保し、さらに浮動票を掴んで自公勢力に対峙するという想定は、民進党が不在の中で、共産党の票だけを基礎票とする結果になってしまった。

 大阪9区の例を挙げると、民進党と共産党が統一すれば6万票近くの基礎票が見込める。一方、これまで自民、維新は9万票台で当選している。ならば、野党共闘で基礎票を確実にし、さらに市民運動で浮動票を集めれば、肉薄くらいはできると考えられた。

 ところが、前原が民進の公認候補を出さず、希望で立候補する方針をとったこと、さらに大阪では希望と維新が「棲み分け」し、希望の候補者を立てないとしたことで、すべてがご破算になった。地元の民進は候補者を出さず、自主投票にしてしまった。

 結局、行き場を失った民進の候補予定者は、選挙そのものをあきらめ、東京の希望の比例リストに入れてもらったが、当然のように落選した。

 そのため野党統一候補といっても、共産党の基盤の上だけで闘うことになった。前回の総選挙では、共産党は3万票、民主党系無所属が1万5千くらい獲得しており、単純計算で4万5千くらいは取れる想定だった。実際、結果もその通りになった。

 さらには、9区に限って言えば、市民運動もまだ体制ができていなかった。総選挙の想定を来年の夏としていたために、準備が出きていないまま、選挙本番に突入してしまった。

 候補者選定は政党サイドで進められて落下傘方式になる一方、その段階でも地元の市民運動は民進党への働きかけを継続しているような状態で、統一候補として正式に確認することも遅れてしまった。

 したがって、選挙運動も政党側とそのボランティア運動の形で進められることになり、市民運動はそこに参加するという形でしか役割を果たすことができなかった。本来の役割である浮動票の掘り起こしなどはできなかった。

 今回の総選挙でも、市民と野党の共闘が成立すれば、勝利できることは証明されている。

 自公が3分の2の議席を占め、さらに希望、維新などを合わせた改憲勢力が存在している。改憲の発議が可能な体制は維持された。憲法9条に自衛隊を書き込むこと、非常事態条項を付加することなどが具体的な改憲項目として上がってきている。

 改憲を阻止するための運動として市民運動は、発展させる必要がある。国民投票、次の選挙を射程に入れて、市民の中に運動としてのつながりをつくり、拡大していくことである。

 また、北朝鮮の「脅威」が宣伝される中、憲法論としての護憲だけではなく、現在情勢の中で憲法を活かす意味を明らかにする努力が必要だと思う。

 国民投票に向けて、私たちが、憲法を守ることの意義を具体的に説明し、改憲に反対する世論を作っていかなければと思う。

                                              (戸平和夫:北摂反戦民主政治連盟)



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