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「社会的連帯経済」シンポジウム 報告

全国ネットワークの形成が課題に

 さる3月25日、大阪・川口にある「学働館・関生」で「社会的連帯経済をめざして」と題するシンポジウムが開催された。主催は「大阪労働学校アソシエ・社会的連帯経済研究会」、共催は「ソウル宣言の会・関西」である。以下、社会的連帯経済について簡単に触れた上で、シンポジウムの概要を紹介する。


「社会的連帯経済」とは?

 私たちの暮らす社会は大きく分けて、①政府部門(第1セクター:国家・行政)、②市場部門(第2セクター:営利企業)、③非営利部門(第3セクター:市民団体、協同組合)という3つの部門(セクター)から形成されている。私たちが暮らしていく上で、これら三つの部門はいずれも不可欠な要素と言えるだろう。

 しかし、官僚的で融通の効かない政府部門は市民生活に必要な公共サービスを適切に提供できなかったり、また市場部門は利益の追求に偏るあまり市民生活を破壊してしまうこともある。また、ただでさえ権力や財力を独占しがちなこれらの力が大きくなり過ぎれば、市民生活は自律性や活力を失うことにもなりかねない。

 そうならないためには、政府部門、市場部門を制御することが必要であり、それは非営利部門の力量を高めることによって可能となるだろう。

 こうした非営利部門の担い手としては、組合員の出資と運営に基づく協同組合、市民の自主的な組織であるNPO(非営利組織)、さらにビジネスの手法をとりながらも利潤の蓄積を目的とせず、社会的諸問題の解決を図ろうとする社会的企業などが挙げられる。それらを主体とする経済は、「連帯経済」「社会的経済」「社会的連帯経済」などと呼ばれている。

 これらに関連する動向について、当研究所でも折に触れて紹介してきた。

 「新自由主義」の価値観が社会を席捲する今日、政府部門は財政緊縮を理由に公共サービス提供からの撤退を決め込み、「民営化・自由化」のかけ声の下でグローバル資本に売り渡される事態が続いている。その結果として現れているのが、格差社会、貧困と社会的排除の拡大である。

 そうした中、「社会的連帯経済」およびその担い手に対しては、主流の経済システムに取って代わる選択肢(オルタナティブ)としての役割が期待されている。


広域ネットから全国ネットへ

 シンポジウムでは、まず主催者の大阪労働学校アソシエ・社会的連帯経済研究会から、津田直則さんによる趣旨の説明が行われた。

 津田さんによれば、世界的に見て、協同組合や非営利組織の事業・活動は今日の経済・社会の中で大きな役割を果たしている。お隣の韓国では2007年に「社会的企業育成法」が制定され、2013年にはGSEF(グローバル社会的経済フォーラム)という国際的な連携組織もつくられた。

 しかし日本では、各種の協同組合、社会的経済、非営利組織が存在しているのに、それらがほとんどつながっておらず、「非営利セクター」や「社会的経済」という意識が希薄なのが実際だろう。また、政府は非営利組織を支援するどころか、協同組合に関する法律もバラバラ、さらに生協や農協に会社法を適用しようとするなど、圧迫を強めている。

 今回のシンポジウムを呼びかけたのは、こうした現状を変えるためだという。これまでの協同組合の理論と実践に関する研究を土台として、「非営利セクター」や「社会的経済」の全国ネットワークを形成していくことが将来の目標だ。

パネラーの顔ぶれ
■パネラーの顔ぶれ
 基本的には、生活圏における市民レベルのネットワークを基礎として、その上で都道府県単位の広域ネットワークを形成し、広域ネットワークの連携によって最終的には全国ネットワークの実現をめざすという。その意味で、今回は広域ネットワークの関係者がパネラーとなっている。

 もっとも、各々これまでの活動があり、一口に連携と言っても簡単ではないことも確かである。まずは各々の活動に関して紹介しあい、その上で、全国ネットワークに対する意見を出し合う予定だ、との説明がなされた。




中小企業と労働組合の連携


 パネラーの最初は大阪の広域ネットワークとして、中小企業組合総合研究所代表理事・連帯労組関西生コン支部委員長の武建一さん。お話の内容は、関西の生コンクリート関連企業における労働運動と協同組合づくりについてである。

 武さんによれば、生コン業界は戦後の高度経済成長とともに拡大し、バブル崩壊を経て淘汰の時代が続いているという。生コン業者のほとんどは中小企業であり、セメント大企業が中小企業同士を競争させて、低コストで最大の利潤を追求するというタテ系列の支配構造ができている。そのため生コン業者は個別対応では大企業に太刀打ちできず、適正価格で取り引きができない構造にあった。

 一方、生コン産業は労働集約型で低賃金・長時間労働が基本、労働災害や事故も発生しやすく、ながらく奴隷的な労働条件が横行してきた。劣悪な労働条件を改善するため労働組合を作っても、個別の企業内では劣勢で、有効な闘いができなかったという。

 こうした状況に対して、産業別労働組合でなければ資本の分断政策には対抗できないとして、企業の枠を超えて結成されたのが関西生コン支部(関生)だ。関生の特徴は、労働組合のヨコのつながりで生コン業者に対抗するだけでなく、それら生コン業者をも協同組合としてヨコにつなげたことだ。というのも、中小の生コン業者が相互に競争しているだけでは元請けのゼネコンに出し抜かれるばかり。タテ系列の重層的な支配構造を打破するには、生コン業者が連携し、大資本の元請けゼネコンと集団で対抗する陣形が不可欠だからである。

 具体的には、中小生コン業者の協同組合を形成し、そこが窓口になって共同受注・共同販売、シェア運営をする態勢がつくられた。その結果、生コン業者は大資本に買い叩かれることも、業者間の競争で疲弊することもなくなると同時に、労働者の賃金、雇用、福祉などを保障し得る原資を獲得することができた。労働者にとっても有益な仕組みだと言える。

 武さんによれば、こうした経験を経て、中小企業には一方で労働者を搾取する側面、もう一方で大企業による収奪に曝される側面という二面性があること、それゆえ労働組合としては、大企業からの収奪に対抗するという点で中小企業と共闘可能との認識を深めたという。実際、現在では単なる労使交渉だけでなく、労働組合と協同組合が連携して、生コン産業のありかたをめぐる協議を重ね、産業政策の提案にまで至っている段階とのことだ。

 さらに、実利を軸とするだけでは運動は続かないとして、憲法や共謀罪、沖縄、原発といった政治課題をめぐる運動をよびかけ、共闘すると同時に、運動の背景となる思想や理論の基礎を固めるための学習組織も設立した。それが「大阪労働学校アソシエ」であり、今回の会場となった「学働館・関生」なのだという。

 まずはこうした実績に圧倒されるが、それ以上に、一般に非営利部門に属するとは見なされにくい中小企業をも協同組合として組織し、労働組合との連携を通じて、経済・社会的な位置づけを転換していこうとする構想力にも驚かされた。



実践と研究のフィードバック

 次に、東海三県(愛知、岐阜、三重)のネットワークとして、「地域と協同の研究センター」専務理事の向井忍さん。

 「地域と協同の研究センター」は、東海三県の生協関係者や研究者を中心に1995年に設立された。(2000年にNPO法人化)。現在は、地域の生協、医療生協、大学生協、農協、社会福祉法人、NPO、社団法人、労働組合など、県域と業種の垣根を越えた非営利組織のネットワークと言える。

 ただし、組織的な連携というより、各組織に属する個人が会員として参加し、地域の事情や課題について学び合いう場をつくることで、まちづくりや地域での協同を促進するための連携である。非営利協同組織のローカル・シンクタンクと言えるだろう。

 きっかけは、1995年の国際協同組合同盟(ICA)100周年大会で決定された「21世紀の協同組合に関するICA声明」に「協同組合間協同」および「コミュニティへの関与」との原則が明記されたことにある。時代や社会状況から、仲間同士の互助協同という伝統的な協同組合の枠組みから、地域社会を含めた重層的な協同への飛躍が求められたわけだ。

 向井さんによれば、この間の活動の柱は三つ。一つは、組織の基軸である「地域を軸にした研究センター活動」だ。この中には、尾張、三河、岐阜、三重という4つの地域に分け、それぞれの地域における事情や課題を論議する「地域懇談会」。さらにそうして得られた問題を「食と農」「地域福祉」「環境」「職員の仕事」という4つの領域に整理し、横断的に検討する「研究フォーラム」がある。

 これらを通じて、各地域で環境や福祉、食や農に取り組む団体が知り合い、課題の共有、解決へ向けた協同の取り組みが促進されるという。

 二つめの柱は、「協同組合・市民協同組織の交流・学び合い・研究」だ。各地域での活動を踏まえ、非営利協同組織の地域を越えた交流・協同を支援し、そうした組織の担い手を育成するための取り組みとされる。具体的には、各々の地域懇談会における議論を報告し合い、基調講演などを含めて総括する「東海交流フォーラム」、協同組合役職員の育成を支援する各種の研修事業、さらに学生向けに協同/協同組合の意義と魅力を伝える大学での寄付講座、経済学、社会学、地域福祉、農業など各分野の研究者と協同組合関係者による「生協の(未来の)あり方研究会」など、多様なレベルで幅広い活動が組織されているようだ。

 三つめは、研究センターの機能強化として、情報発信のレベルアップ、政策提言活動への着手などが取り組まれているという。

 生協に所属する向井さんから見て、これまでの活動が目指してきたのは、協同組合内部の共助を活動のベースとしながら、それを地域の課題とどのように結びつけるか、自らの課題として組織・構成員の中にいかに定着させていくか、という点にあったという。逆に言うと、協同組合の周辺にある地域の力、個人の力と結びつかなければ、協同組合自身の存続と発展も望めないということだろう。

 こうした危機感は多くの協同組合にも共通したものだったらしい。実際、同じような研究センター組織は全国でいくつもできたという。しかし、実践と研究は車の両輪だとは言え、どのように両者をつなげていくのか、あるいは本業の経営が悪化しても維持できるのか、実際には容易ではない。活動を継続できなくなったところも少なくないという。

 この点について、「地域と協同の研究センター」は2011年を前後して、自ら協同組合間協同の媒介となり、医療生協・大学生協・地域生協および農協とのつながりを地域ごと分野ごとに形成し、地域社会への貢献に絞ってお互いの方向付けを行い、さらにそれらを今後の社会の中でどう位置づけるか研究を組織するという形で、実践と研究のフィードバックをすすめているとのことである。

 活動領域の重なる当研究所としては、目標にすべき内容である。紙幅の都合で具体例を紹介できないのが残念だ。



生活圏のトータルな問題として

 さらに、新潟県のネットワークとしてお二方。一人は「にいがた協同ネット」代表の渡邊登さん。設立の経緯から現在までの流れを紹介いただいた。

 それによると、設立のきっかけは2008年、日本労働者協同組合連合会(ワーカーズコープ)が定期的に開催している「いま『協同』を拓く全国集会」新潟集会の実行委員会が元になったという。新潟県労働者福祉協議会、新潟県生協連、新潟県労働金庫、ささえあいコミュニティ生協新潟、労協センター事業団などの諸団体関係者、大学関係者などが中心となって世話人会を運営するも、組織参加ではなく、協同労働に関心のある個人有志が集まり、新潟で持続可能な地域づくりや協同労働の推進などを目的に活動していくことになったという。

 これまでの活動は、各地の事例の視察や学習が中心だったようだ。一例として、社会的なハンディを負った人々も地域社会の一員として暮らせるよう協同で労働の場づくりを行っている、イタリア・ボローニャの「社会的協同組合」。あるいは、「反貧困」活動家の湯浅誠さんを講師とした「パーソナル・サポート」事業に関する講演会を契機に、受託団体・新潟労福協との協働事業として新潟県のパーソナル・サポート・モデル事業を開始(2012年)。翌年の「フードバンクにいがた」設立を経て、2014年に協同ネットが正式に設立される。

 地元新潟県での取り組みとしては、仕事づくりによる貧困問題の解決や再生可能エネルギーによる地域づくり(市民による太陽光発電事業)などが対象となっている。また、新潟といえば米どころだが、これまで持っていなかった農協との関係づくりにも着手しはじめたとのことだ。

 渡邊さんによれば、にいがた協同ネットの活動目標は大きく言って「持続可能な地域づくり」にあるという。そのために、現に地域に存在する貧困、格差、少子化、エネルギーといった共通課題をどう解決していくのかが問題になる。もちろん、それぞれの課題にはすでに多くの人が取り組んでいるが、基本的には個別の取り組みであり、やむを得ないとは言え、一つの生活圏の中でのトータルな問題として取り組まれているわけではない。だからこそ協同で取り組んでいく必要があるし、にいがた協同ネットの役割はそのための「結節点」になることだという。

 新潟のもう一人、ささえあいコミュニティ生協理事長・日本高齢者生協連合会会長の高見優さんは、かつて新潟水俣病告発運動の支援として新潟に入り、その後も地域政党の草分け的存在「市民新党新潟」の創設に関わるなど、ながらく市民運動に従事してきた。

 一方、11年前には「ささえあいコミュニティ生協」を設立し、事業活動にも乗り出す。同生協は、「福祉・生き甲斐・仕事おこし」を柱とするワーカーズコープ系の福祉生協「日本高齢者生活協同組合連合会」に属する。ゼロからの出発で現在およそ250人が出資・経営・労働を行い、経済規模は8億円にのぼるという。それだけの地域の潜在的なニーズを発掘したと言えるだろう。

 また、高見さんは「事業と運動を両方するのが重要」として、渡邊さんの報告にあった市民による太陽光発電事業「おらってにいがた市民エネルギー協議会」にも関わっている。東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟では、昨年の参院選でも知事選でも野党候補が勝利したが、勝利の一端を担ったのは、高見さんの関わるさまざまな市民運動の力だという。

 こうした経験からも、地域の中でトータルな影響力を発揮するには、さまざまな事業や運動がネットワークによって有機的につながり合うことが重要だという。それはまた各々の活動展開にも波及するとのことだ。


全国ネットワークに向けた議論

 以上の各報告に続いて、全国ネットワーク形成に向けた論議が行われた。最初に、主催者の津田直則さんから、①地域の市民ネットワーク、②広域ネットワーク、③全国ネットワーク、④国際ネットワーク――と区分した上で、①地域と②広域とが協力し合うことによって、①地域は市民の政策形成の応力を高めて市民社会を強化し、②広域はそれを全国に展開していく、というイメージが語られた。

 もっとも、社会的連帯経済、非営利協同セクターの全国的な連携・連帯の必要性それ自体については、参加者のいずれも異論はない模様である。

 大阪の武さんは、生コン業界は生産者側、生協は消費者側というように場合によっては相互の利害が対立する可能性もあるため、対人関係の信頼がなければうまくいかない、としながらも、「今日のところは顔合わせ。そのうち腹合わせをして、お互いにきちんと共通課題を作って、地域からしっかりとした全国組織を作り上げていきたい」と訴えた。

 今回のシンポジウムを機に、すでに関西に事務局機能を置くための準備をしているとのことだ。

 東海三県の向井さんは、「生協が発展してきた基盤が現在相当変化している」と言及した。それはたとえば「企業福利、団地、核家族、消費社会」といった社会構造に基づく生活の仕方、働き方、地域のあり方であり、生産に対して消費が主張するという考え方だったという。そのため、地域が抱える問題への接近方法も変化せざるを得ない。その中で、どのように持続可能な地域づくりができるか。これが全国的な連帯を必要とする理由の一つだという。

 ただし、その場合も、あくまで地域コミュニティ、市民組織の多様なあり方をベースにして協同を考えなければならず、それと同時に全国的な力の結集も必要であるからこそ、広域の果たす役割が問われる、と付け加えられた。

 一方、新潟の渡辺さんからは、これまで全国的な連携の必要性が叫ばれながら、うまくいかなかった歴史があり、その総括も必要だ、との提起があった。

 とくに新潟のような地方から見ると、非営利協同組織だけで地域の課題を解決することは難しく、地縁血縁的な人間関係も含めて巻き込んでいかなければ地域に根付くようなものにはならないという。

 従来の全国的な連携は、ともすれば都会の市民運動主導だったため、この点が軽視されてきたのだろう。それを踏まえ「地域での動きと全国での動きには隙間がある。そこをどう埋めるかが重要になる」と指摘された。

 これを受け、論題は「連携づくりにあたって乗り越えるべき課題」に絞られた。

 向井さんは、「これまでの連携は、関連部署や個人の活動が中心で、本業は関係なくとも議論できた」と総括。だから、本業で連携が必要だという構造をつくることが必要で、そのためには「自分たちができない部分を探す」という発想が求められるという。

 東海三県の実例では、①この町をどうするかというビジョンを共有する、②お互いが社会的資本を出し合い協同で働く、③組織・肩書き・契約関係ではなく人のつながりで仕事をする――の3点を重視してネットワーク化を図ってきたとのことだ。

 それでも、既存の団体は未だに、自分たちができることを広げるという協同の議論ではなく、できないことを率直にオープンにして協力するという連携のやり方には不慣れだという。

 協同組合の協同といっても、組織同士ではなく組合員同士の協同を通じて組織をつなぐことが重要なので、第一線で動いている人たちがそういう気持ちになるように、直接人がつながるための試行錯誤、地域で働いている人たちがお互いに知り合うような交流の場をつくることが課題だとまとめられた。

 この意見には津田さんが賛意を示した。自身の実感としても、地域にはNPO、生協、労働組合などがあるが、それらがヨコにつながらず、自分たちの範囲内で大きくしようとする。大きくするのは得意だが、ヨコにつながるのは不得手。これを乗り越えないと、連帯社会は築けない。そこで、各領域ごとのネットワークをさらにネットワークしていくという方向性を選んだとのことである。

 新潟の高見さんも、実際には協同組合の連携といっても、それぞれ巨大な組織であり、独自の価値観を抱えてもいれば組織文化や経験の違いもあるため、それらをなかなか乗り越えられないのは事実だという。その結果、幹部だけのつきあいになってしまい、本来協同すべき組合員同士に顔の見える関係が形成されないことになる。

 これについて武さんは労働組合の立場から、日本の労働組合のほとんどが企業内労働組合であり、会社以外のことには関心がない一方、産業別労働組合の関生も、その点では似たり寄ったりで、市民との共闘などに必要を感じていないと指摘、「そこを変えないとダメだ」と自戒を込められた。


これまでより踏み込んだ段階に

 冒頭に触れたとおり、これまで当研究所では「非営利協同」「社会的経済」「連帯経済」などについて、何度か紹介を行ってきた。今回のシンポジウムを主催した津田直則さんにお話を伺ったこともある(「社会変革の協同組合と連帯社会」本誌第105号、2012.11.30)。

 ただし、これまではどちらかというと、「社会的連帯経済」の法的な位置づけを求める「法律制定運動」や諸外国の事例の紹介、理論的な整理にかかわる催しが多かったように思われる。

 それを考えれば、今回のシンポジウムは運動の全国ネットワーク化を展望していた点で、従来に比べてかなり踏み込んだ内容と言えるだろう。

 その背景として、一つには、すでに日本でも営利中心の経済ではない経済の動きが明瞭になってきていることが指摘できるだろう。しかも、それらは決して「隙間」に甘んじることなく、営利中心の経済に対する別の選択肢としての自覚を持ちつつある。

 もう一つは、やはり組織として大きな力量を持つ関生が、「社会的連帯経済」の領域に積極的に取り組みだしたことが影響していると思われる。

 当研究所としても、引き続き動向を注目するとともに、改めて「社会的連帯経済」に関する検討に取り組んでいきたいと思う。

                  (山口協:研究所代表)




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