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アソシ研リレーエッセイ

「逃げるは恥だが役に立つ」と家事労働について

本誌読者の視聴率は0%だと確信があるが「逃げるは恥だが役に立つ」というTVドラマが高視聴率だった。と言っても、自分も最終回だけしかまともに観ていない。

あらすじは35歳の独身男性がひと回り年下の家事代行の女性と、雇用主を夫、従業員を妻とする労働契約を結ぶ「契約結婚」をし、その後、成り行きで恋愛に発展、本当の夫婦になるという話、で大体あっていると思う。なぜ契約結婚という形式を採用したのかは謎である。

ドラマは二人のやり取りが胸キュンするとのことで人気に火が付いたようだが、自分はひとつも胸キュンしなかった。そんなことはどうでもいいけれど、視聴者に何を伝えたかったのかがいまひとつ判然としなかった。

雇用主である男性は女性に月額19万円の給与を支払っている。まぎれもなく高所得者である。つまるところ財力のある男が若い女性を雇って家事をしてもらって、最終的にめとっただけの話だともいえる。

従業員である女性は派遣労働でこき使われ、社会に対し疎外感を感じていたところ、家事代行を通して、はじめて自分を必要としてくれる仕事に出会えたと喜ぶが、やがて雇用主の男性がリストラの憂き目にあう。男性は女性に好意を伝え、さらに労働契約を解消して、本当の夫婦になったら、給料負担分が軽減できるとプロポーズする。なんとも都合のいい奴である。これに対し、女性は愛情があれば家事労働は無償というのは搾取であると、反駁する。で、お互い家事を分担しようということになるが、家事労働=無償労働という問題提起は置き去りのままで話は進んでいく。結局給料は支払われなくなったのかどうかわからないままだった。

内閣府は家事労働の貨幣評価額を5年ごとに算出していて、現在その規模は100兆円にも及ぶ。また家事労働の多くをいまも女性が占めており、専業主婦の評価額はひとり年間300万円になる。夫婦共働きでもやはり女性が家事労働をしている割合が高い。

過去に、家事労働は労働力価値を構成する要素として妥当かそうではないかという論争があったらしい。家事労働は生産労働力の再生産に寄与している(再生産労働力)にもかかわらず、無償であり正当な評価もされず、それは性差別の社会化によって構成されていて、資本主義の搾取構造の一形態であり、女性の労働者は生産労働と再生産労働(家事労働)と二重に搾取されているという主張をするフェミニズムの運動があったらしい。

ドラマの女性が主張したことと繋がるが、物語は家事労働の搾取構造については特段掘り下げられることもなく、ちゃちな恋愛劇として終わったのが残念だった。そのあたりを突き詰めた恋愛ドラマなら画期的だったのに。まぁそんな話だったら高視聴率どころか、スポンサーがつかなかったか。

密かにパート2に期待してみることにする。

(高槻市会議員 高木隆太)

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