タイトル
HOME過去号>142号  



能勢ダイオキシン問題を考える

昨年8月にダイオキシン汚染物の処理が完了したと宣言された。能勢のダイオキシン問題は20年近い歳月を経て終わったと誰もが思った。ところが、今年77日になって神戸市が突然、ダイオキシン汚染物が違法に市内に埋め立てられていると発表し、この汚染物を神戸市から撤去するように豊能郡環境施設組合にもとめたことから、再び能勢、ダイオキシンという言葉が世間を騒がせることになった。

1997年のダイオキシン汚染の発覚から20年近く、汚染物処理ができないまま、198本のドラム缶に詰められた汚染物は豊能町内で保管されたていた。町外での処理を追求したが、どこからも断られ続けていた。

昨年7月に環境施設組合議会でダイオキシン対策費としておよそ6億円の補正予算が提案された。これは、豊能町有地内での処理行うためのものだった。しかし、予定地の同意を得るまで保留とされた。

89日組合議会が再開された。そこで6億円処理予算がとりさげられ、1億円の外部処理予算が提案され可決される。施設組合は、三池製錬社とダイオキシン処理契約をし、89日には、三池製錬社へ搬送された。この搬入の際に、産廃ではないかと指摘されたとしている。この時に、特別管理一般廃棄物から特別管理産業廃棄物に変更している。ところがこの三池製錬が処理を進めないので、今度は20162月に関西環境建設社と随意契約し、搬送を行った。その時点で仲介者である環境テクノロジーに支払いを行なった。この時点では、これらの業者名は公表をされていなかった。

今年5月に施設組合議会で、ドラム缶処理完了が報告されたが、その際も処理業者、支払先を公表しなかった。この時点で議会は監査請求を要求した。

そして、7月神戸市が産廃としての処理は違法であると公表したことで大きな問題となり、78日の施設組合議会で、報道を受けて詳細説明を要求。このときはじめて業者の名前を明らかにした。百条委員会を設置し、神戸からの引き上げ決議を全会一致で可決した。

 管理組合長である田中豊能町長、副組合長の山口能勢町長は、汚染物は産業廃棄物であり、違法性はないという立場をとった。しかし、汚染物を引き上げることには同意した。

さらに発覚したのは、仲介業者に支払ったお金は、9650万円だったにもかかわらず、末端の処理業者には300万しかわたっておらず、残り金はどうなったのかという問題まで出てきた。組合が仲介業者に丸投げしていた事実も明らかになっている。組合長らはだまされたとしてその責任を転嫁しようとした。

事態が解明されないまま、組合長である田中町長は、任期切れで再出馬しないことを決め、選挙であらたな町長が選ばれ、能勢町でも町長選挙が始まった。副組合長である能勢町長の山口氏は、この選挙に出馬している。豊能町の新町長は、町内での完全処理を主張して当選しているが、山口氏は選挙公約の中で、この問題について触れていない。

こうした状況に、住民が監査請求をした。ひとつは、仲介者に支払った1億円はどうなったのか、一般廃棄物を産業廃棄物にした代償が4000万円になっていること。コンクリート処理され10倍の量になって帰ってきた高濃度の汚染物の処理費はどうなるのか明らかにすることを求めた。町民の税金が無駄に使われたことになっている。

本来自分たちが出したゴミの汚染物であり、当然それは自分たちのところで処理しなければ、どこも受け入れを望まないのは当然だ。当初、豊能町内での処理案が出ていたのに、それを覆して1億で処理ができるという話に乗ってしまった。それも頓挫したことで、事前通告のいらない産業廃棄物に変更して、神戸市に持ち込んだ。失敗を隠すように処理したため、大きな問題となった。いまだにその責任を取ろうとしていない。処理をどこで行うのか、地元でも処理する場所や保管場所を引き受けることを住民に拒否されているなかで、最終処理ができない状況は変わっていない。地元での完全処理を約束して当選した豊能町の新町長も、処理のための費用、その場所の問題でそのトーンが弱くなっていると報じられている。だれも責任を引き受けることのないまま再び漂流するのか?
 
            (北摂反戦民主政治連盟 戸平和夫)


200×40バナー
©2002-2016 地域・アソシエーション研究所 All rights reserved.