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アソシ研リレーエッセイ

T.K生への通信、SEALDsの事

 『前略、我がT.K生様、お元気そうで何よりです。実は小生も5月半ばに5日間ほど沖縄本島に行きました。基地巡りと反対派テントの皆さんの激励でしたが、辺野古では反対派の船に乗せてもらい、バリケードとして幾重にも張り巡られた浮揚性のロープ状のようなもの(名称は失念しました。悪しからず)を船で乗り越えて滑走路建設の阻止行動に参加しました。漁船組以外にカヌー組がいました。船組は辺野古のテントのところから出発するのではなくだいぶ離れた大浦という漁港から出発します。参加人数の増減はあるものの毎日朝から晩まで行っているそうです。海上保安庁、警察、警備会社、米軍が海と陸で警備していましたが、小生らが行ったのは工事が差し止められていた時期だったので、たいした弾圧もなく船で追いかけてマイクで警告する程度でしたが、工事中のそれはかなり過酷なものだそうです。長くなっては本論にすすめないので、機会があれば一献傾けながら沖縄独立論をご教授いただければ幸いです。それでは。 W.S拝』

(T.K生への通信)

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 予告どおりに8月15日にSEALDsが解散した。世間的にはSMAP解散の方が人々の耳目を集めたみたいだ(そらそうやろ)。Students Emergency Action for Liberal Democracy - sの略でシールズ(アメリカ海軍特殊部隊もシールズだがスペルが違う)。なかなかいい名称だ。「自由と民主主義のための学生緊急行動」。英語の苦手な私にもわかる程度の簡単明瞭な単語でスッキリと運動の内容、目的をイメージさせてくれる。ナンチャラ反対同盟とか粉砕闘争とかしか浮かばない世代の発想ではない。若者的でオシャレで浸透力と拡散力を意識した命名である。センスがいい。(ちなみにSMAPは何の略かは知らない)。

 シールズは確か「特定秘密保護法」に反対する学生組織が母体となって生まれたようだ。「安全保障関連法案」反対、廃案のデモが中心になっていた印象があるが、トータルな視点で安倍政権がいかに危険極まりない「戦争への道」に踏み込もうとしているのかを、若い感性が訴え続けた新しいスタイルの運動であったと思っている。ワンイシュー、ワンタイムオーガニゼーションてなとこか。こういう風な組織の方が学生という在り方や、今どきの若者気質にぴったしなのかも知れない。毎年、入学と卒業を繰り返し運動を担う人々も新陳代謝されていくのだから、ある程度の期間を目処に改組や解散を結成当初から視野に入れておいたのか?どうかは分からないが、70年代の学生運動の敗北から組織の有り様を考えたのかも知れない。なかなか次に繋げる爽やかな解体は難しい。いずれ社会人になる事をしっかりと前提にした現実的判断があったのか?機会があったらシールズの元メンバー逹に訊いてみたい。

「戦争への道」を拒否する意思表示

 今回の参議院選挙後の解散はあらかじめ宣言しておいて、野党統一候補擁立のために接着剤的役割を見事に果たした。選挙の結果は自民党を中心とする「改憲」勢力が勝利したが、野党統一がなされてなければもっと悲惨な状況になっていただろう。他国では、たまに聞くが、日本で学生運動や市民運動が国政選挙の黒子役をつとめたなんて実に素晴らしいことである。個別には勝手連などの支援運動は存在していたが、短期間でよくぞここまでと思ってしまう。しかも若い人々の運動が年寄りを元気づけたのも事実である。実際、私のまわりの先輩方も国会前集会とデモに参加した。ただし野党内でもシールズに批判的な政治家もいるようだが、基本的には「改憲」論者である。デモでは世の中変わらないみたいなトンチンカンな事言ったり、代議制民主主義の否定だなどと言っているが、デモは市民の権利であり、民主主義のりっぱな象徴的行為の一つでもあるのだ。デモだけで世の中が変わるなんて参加者の誰一人として思ってはいない。「戦争への道」を阻止するための一人一人の意思表示の一つとしてやむにやまれず民衆デモをしているのだ。死にかかった巨大組織に支えられている議員はそれを見ようとしない。

 「改憲」阻止のための新たなアクションを!

(W.S生)
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