アソシ研リレーエッセイ
大転換の時代のなかで
先日、よつば春の交流会で水野和夫さんの講演会がありました。難しい話のようで、残念なことですが、寝ている人が目立ったようです。よつばの職員の皆さんには事前に水野さんの著書を読んで講演会に望んで欲しいとお願いしたのですが、どれほどの人が読んでくれたのか?ですが、折角の機会を努力して活かさないといくら時間があっても、無駄にするだけ。
それはさておき、水野さんの講演で、今までの「より早く、より遠くに、より合理的に」という時代の流れが行き詰まり、これからの時代は「よりゆっくり、より近くに、より寛容に」が重要な行動原理となるとの話でした。資本の歴史的な流れの中で、そうならざるを得ない。歴史的な大転換の時代に私たちは生きているのだ、という時代認識です。そのように考えた方が、今様々に起こる社会現象を関連した一つの全体として把握することが容易になります。
もちろん、直ぐにそれが実感できるものに成るということではなく、今後数百年の歴史時間の中で起きるであろう、という事柄ですが、これからを考える上での大切な時代認識だと素直に共感できるものです。
「よりゆっくり、より近くに、より寛容に」というキーワードで、どんな社会を想定できるのか、といえば「農的な社会」という表現でイメージされるものは直ぐに思いつくひとつでしょう。
直近の社会はそれとは正反対で、まだ旧態依然とした状態が優勢ですが、それは今までの社会のあり方を必死で維持させようという勢力がまだ力を保ち、それにとってかわる力が弱い、ということでしかありません。政治の世界がその典型ということですが、人々の社会意識も大きく変わるにはまだまだ時間が必要ということなのでしょう。
何百年先に私たちが生きていることはないわけで、また今の私たちの想像力が及ぶ範囲も限られたものでしかない、としても可能な限り、次につながると思える仕事に汗を流したいものです。それが今を生きる私たちの役目と任じることができればうれしい限りです。
(鈴木伸明)