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コラム 地域から政治を考える

パレスチナの若者たちの反乱と
第3次インティファーダへの道



 
今年のオリーブの会パレスチナ援農団は、パレスチナのNGO、 UAWC(パレスチナ農業労働委員会)のラマラにある本部を訪問し、UAWCの代表代理のフアド・アブ−セイフ氏から話を聞いた。そこで援農団は「第 三次インティファーダ」は始まっているのかと聞いた。アブ―セイフ氏は「インティファーダになることを望む。政党、党派も巻き込み、もっともっと大き く進めたい」と答えた。この答えは、第一にいまだインティファーダに至っていないこと。第二に政党、党派が、現在の若者たちの闘いに役割を果たしてい ないことを意味していた。
 援農団が訪問した西岸のビリン村でも村人民委員会が組織する金曜日の定例デモが行われ、分離壁に対する抗議行動を継続していた。この平和的なデモに 対しても、イスラエルは暴力的に弾圧し、何人もの若者が殺されている。しかし、それに怯むことなく村人たちの抵抗は続けられている。
 第一次インティファーダの際には、民族統一指導部が形成され、そのもとに闘われた。しかし、現在は、報道などでも、旧来のパレスチナの政治組織の姿 がこの若者たちの闘いのなかにみられていないと伝えているように、いまだ、この蜂起を導く役割を引き受ける政治政党、党派の存在がない。パレスチナの 民衆の間での期待にも拘わらず、この2か月間、明確にかれらがそれを引き受ける能力も意思もないように見える。この間に118人のパレスチナ人たちが 殺されている。
 その一つの理由として挙げられているのは、政党、党派の指導者たちが、民衆抵抗を指導し、組織していくことでの対価を払うことを望んでいないこと。 すなわち、イスラエルによる組織的弾圧を恐れていること。もう一つは、かれらは、PLOのメンバーとして、財政的、政治的特権を失いたくないためであ るといわれている。
 ファタハの支配する自治政府は、いまだにイスラエルとの治安共同をおこなっており、それは若者たちの障害物であったとしても、支援するものではな い。自治政府のアッバース大統領は、明確に「蜂起は望んでいない」と言っている。
 ハマスなどのイスラム勢力も行動をしていない。かれらは、イスラエルにガザ攻撃させる口実を与えることを望んでいない。昨年のガザ侵略での破壊から の復興が終わっていない状況にあり、再び攻撃の口実を与えたくないという理由からだと思われる。
 そして、ハマス、ファタハの和解による民族統一政府の話も、合意をくりかえしながら、いまだに実現ができていない。
 現在の闘いは、西岸、エルサレム、ガザ、イスラエル領土内のパレスチナ人を団結させている。非常に困難な状況のなかで、パレスチナ解放へと導く指導 部は、武装闘争や旧来の枠組の中からではなく、非武装の抵抗運動をつづけている様々な社会組織、人民委員会、組合運動、農民運動などの草の根運動の中 から、そして、民族的な決定から取り残されてきたディアスポラのパレスチナ人たち、そして、彼らが持つBDS運動などの国際的なつながりの中から生ま れてくるだろうといわれている。生活に根差した闘いは、政治的な思惑を超えて進むものだからだ。
        

(北摂反戦民主政治連盟 戸平和夫)



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