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アソシ 研リレーエッセイ

ア ソシ研に来ています


 こんにちは。3月からアソシ研の事務局にいます、下前(シモマエ)と申します。よろしくお願いいたします。
 今、59歳で、少々とうがたっております。つれあいが一人と男の子どもが一人います。子どもは今12歳で、もうすぐ中学生。卒業、入学を控えた準備 やイベントごとがいろいろあって、見ていると、つい先日まで学童保育に頼りなげに通っていた姿がだぶって、まぶしいような、自分もうかうかしていられ ないなという気持ちになります。将棋とか、水泳とか、星座の名前とか、いろんなことで負けはじめてはいるのですが…。

配送という仕事


 アソシ研に来る前は、つい先日まで、関西よつ葉連絡会の東大阪産地直送センターというところで、主として、配送の仕事をしていました。社員は5人と パートの小さな産直です。
 朝7時半の朝礼のあと、一斉に現場に出て、牛乳、豆腐、野菜など日配品の仕分けをし、トラックに積み込んで、会員さん宅への配達に出発します。冬は 凍え、夏は汗だくになり、梅雨にはずぶ濡れという仕事ですが、晴れ渡った桜並木や新緑の道を通るときには、気分が晴れますし、なによりもトラックと身 体が一体となってスムースに動くとき、その心地よさはなににも代えがたいものがあります。逆に、腰痛やちょっとした身体の不具合、トラックの不調など があると、だましだまし、ようやくの思いで一日の配送をやり終えることもあるのですが…。
 よつ葉の配送の仕事としては、会員さん宅へ食べものをお届けし、生産者のことや産地の状況などを伝えたり、逆に会員さんのこと、子どものことや日々 のたわいない思いをやりとりすることが大事なのですが、その基盤には、仲間と一緒に身体を動かし、トラックと一体となって荷物を運びという、なかば無 意識的な、身体的な日常の運びというものがあって、それが個人としても、組織としても、とても大事なのではないかと思います。
 ところを変え、仲間を代えつつ、ほぼ30年、そういうことをやってきました。よつ葉で働き始めたときは、エアコンもなく、パワステもないおんぼろの トラックで、おんぼろの飯場のようなセンターに日があける頃集合して、大きなトレーラーで運ばれてくる牛乳を待ち受けたものです。身体ごとぶつかり合 うような仕事をした後、当番がつくったみそ汁とご飯の朝飯。それからそれぞれの配送センターへ。その朝の光景が頭のどこかに張り付いて、忘れられませ ん。あれから、毎日の仕事を飽きもせず繰り返し、いろいろな新しい試みや事業の展開などを経験しつつ長い時間が過ぎ、いまここにいます。

日常を捉える思想


 30年前と今と、なにも変わらないと言えば変わらない、ずいぶん変わった言えば変わったとも思います。組織としては大きくなったけれども、ふと身の 回りを見渡したとき、もしかしたら獲得したものと失ったものとの総量は同じなのかもしれないとも思います。
 しかし、うまく言えませんが、獲得すること、大きくなることそのものが大事なのではなくて、どう展開し、形を変えていくか、どう獲得し、どう失って いくのか、そのことが問題で、それを捉まえるのが思想というものだという気がします。そして、思想というのはとても日常的なものだとも。
 アソシ研にくるというとても貴重な機会をいただいて、できうればその毎日のなかになにがあったのか、どういう意味と価値とがあったのか、それをどう いうふうに取り出せばいいのかということを考え、今の世代、次の世代になにがしかを投げかけることができたらと思っています。   

           

(下前幸一)


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