市民環境研究所から
安倍政権の暴走を止めるチャンス
ー地方自治こそ政治の根本ー
年が明けてから京都では何度も雪が降り、めずらしく冬らしい冬を楽しんでいる。しかし、安倍政権の横暴ぶりとそれに対抗できない野党の寒々としたニュースを連日聴かされ、
観せられていると冬らしい冬などと喜んでいられない。
私たちはこの何十年の時代変遷を、「年々悪くなって行く」と表現してきたが、昨年の総選挙で自民党が制覇して以降は、「日々悪くなって行く」と
言わざるをえない状況である。
このコラムでも何度か書いたように、経済の好況を期待して安倍自民党に投票した人々は憲法解釈の変更や改定まで、決して安倍に任していないぞと
嘆いているはずである。その嘆きを表現し、行動しないと、日々悪化する事態は止まらないだろう。行動することが議会制民主主義をまともなものとし
て維持することに繋がるはずであるが、はたして人々はそのような行動をとるのだろうか。
そのチャンスはある。この4月に実施される統一地方選がそれである。なんだ国政選挙ではないから、それでは安倍の暴走を止められないと多くの人
は思ってしまうだろうが、地方自治こそ国の根本を築く政治そのものなのである。沖縄の知事選の結果が辺野古移設に大きく影響し、滋賀県知事戦は原
発再稼働阻止に大きな勇気を与えてくれたように、地方の政治を中央政府は無視できない。だから今回の統一地方選は、我が国の民主主義の帰趨とこれ
からの政治を決定するものと思っている。
『市民ネットワーク・きょうと』の結成
今から22年前の1991年に、筆者は京都市伏見区の古びたビルの市会議員選挙事務所にいた。政党でもなく、既存の大きな団体でもなく、市民運
動の活動家が集まって創った選挙母体の一員としてそこにいた。ぽっと出の新人候補であるが、人柄と弁舌のさわやかさもさることながら、きっちりと
した主張が人々の共感を呼び、日に日に支持が広がっていった。しかし、新人にとってはわずか10日間の選挙期間はあまりにも短過ぎ、三千数百票を
獲得したが、わずか150票ほど足らずで落選した。京都市では最初の市民派議員誕生を果せなかった惜敗であった。この選挙以前にも何度か各種選挙
の裏方として筆者は参加してきたが、この惜敗を最後に選挙運動への参加を封印してきた。
しかし封印を解かねばならない時がやってきた。安倍の暴走を許している今日の社会状況の中で、憲法改悪を許したままに人生を終わる訳にはいかな
い。既成政党のふがいなさをあげつらってみても事態は変わらない。となれば、長年封印してきたものを解き放す以外にはないだろうと思っていた矢先
に、3人の若者(筆者から見てのことだが)が市民派、無所属で京都市議戦に挑戦すると名乗りをあげた。この3人が連携し、政治団体として確認され
る手続きを始めたので、その確認団体の代表を引き受けることにした。まずは彼らが結成した団体「市民ネットワーク・きょうと」のメッセージをお読
みいただきたい。
「いのちとくらし・環境を守る取り組みに日々ご尽力いただいている皆さんに敬意を表します。さて、私たちは、4月の統一自治体選挙で市民の声を
市会に届けようと独自に立候補の準備を進めてきましたが、去る2月22日、その3つのグループをもとに、「政治を市民の手にとりもどす」、「原発
のない社会を実現する」、「戦争をしない国をこどもたちにのこす」、「格差のない社会をつくる」という共通の立場から「こども」「エネルギー」
「防災」「食」を課題として『市民ネットワーク・きょうと』を結成し、確認団体として共同で選挙に臨むことといたしました」とある。
1986年に筆者が事務局長となって立ち上げた「きょうと・市民のネットワーク」は2003年に活動を停止し、現在の市民環境研究所にその役割
を移設したつもりであったが、やはり活動内容は変更せざるを得なかった。ネットワークは多くの市民活動を網羅し、それぞれの掲げる課題を社会の共
通課題にし、情報だけでなく物も動かし、自らが政策を立ち上げて実施するまでの行程を繰りかえして、人とその動きの質を高めて行く運動体であり続
けようとしてきたが、志はままならず、上述した惜敗を最後に選挙は封印したのである。
しかし、安倍の数々の暴挙の中で、この勇敢な若者3人に賭けてみようと決意した。たぶん最後の闘いとなるだろうが、孫達のための闘いと思ってい
る。市民環境研究所の活動を支えてくれている女性たちからは、いくつ仕事を引き受けるのかと心配され、忠告されている。ありがたいことだと感謝し
ながらの毎日は多忙である。
私たちがいまやらねばならないことと少しでも向き合おうとすれば、仕事はいっぱいある。たしかにきびしいスケジュールの生活であるが、生来のい
いかげんさが支えてくれているから悲壮感などまったくない。この文章が掲載される頃は選挙の最中なのか、それともよい結果がでている頃だろうかと
楽しみである。
花を咲かせて、安倍の冬に終止符を打つ切っ掛けとなっていると確信し、この若者達の挑戦に拍手とお力添えをいただきたい。