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ネパー ル・タライ平原の村から(42)

田んぼ から見る地域像 その2 農地の確保

 今回 は、田んぼに植える苗についてお話しします。ネパールでは、雑草との競合に負けないためにも、ある程度茎が太い方が都合良いのですが、日本の苗 は、茎があまりにも短い(細い)ように思っていました。なぜ日本の苗は細いのか?この疑問を、一時帰国の際に出会った生産者の方に質問しました。返事 は「田植機に合わせて育った苗だからで、むしろ苗が大きく育っているのが自然」とのこと。
 逆に、生産者の方からは「米収量は、どんなもんかいな?」と聞かれました。測量単位や米の保存の仕方が異なることもあり、あまり正確に把握できてい ないのですが、日本の米収量一反当たり500sとしたなら、それの2/3、もしくはもっと少ないと答えました。その答えに生産者の方は「むしろそれく らいが土に負担がかからず、ちょうどいい収量」とお答えに。日本の米と違いネパールの米造りは、機械に合わせることもなく、土に負担をかけることもな い、ごく自然な成長と、それに見合った収量だということなのでしょう。
 農外 就業者、特に出稼ぎ人口が増えたことに伴って、ネパールでもトラクターや除草剤が徐々に普及しています。とはいえ、今なおネパールでは手植えが 主流であり、田んぼ労働の主役は人の手足です。
 そうすると、田植えや草取りは家族労働だけではどうしても賄ないきれないため、労働力を調達しなければいけません。労働力の確保には、以下2つの形 態があります。
 @ 結い・手間換えによる労働力の交換。ご近所4〜5軒で各戸1人か2人、無償で労働力を出し合う。
 A    ガンテ・ケタラァ((Ghantekhetala)。地域の中で一律1時間60ルピー(1ルピー=0.93円)と決まっている田んぼ労働の時給払い。
その他、私の所にはマンゴーや野菜と交換することを条件に田植えに来た人もいました。
 以前の田んぼ労働は日雇いであったのに対し、時間給制は、ここ4〜5年前からできた田んぼ労働の新しい形態であるそうです。金銭や時間にこだわった 農作業が主流となりつつあります。また、女性を中心に15〜20人程度の田植え/草取りのグループがいくつか(集落ごと)にあったりもします。
 近年は、男性の出稼ぎや耕耘の機械化により、ますます米作りに限らず、農作業全般が女性の仕事となりつつあるように思われます。
 田植えから、ひたすら草取りが続く雨季のサウン月(7月中旬〜8月中旬)。これら田んぼ労働の裏で、家畜の世話はいつも通りに続きます。堆肥を得る 水牛の飼料は、季節に応じ、ワラから飼葉中心に変更されます。そのため、・水牛・ヤギの飼料として、旺盛に伸びた枝葉の刈入れや畦畔草刈りも大切な仕 事となります。
 温故知新。“故(ふる)きを温(たず)ね、新しきを知る”という言葉がありますが、この地域での農業・稲作を吟味して、そこから新たにどのような見 解を得るのか?どうつなげて行くことができるのか?こうしたことを描くかたわらで、自身に問うことが多々あります。



 (藤井牧人)

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