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ネパー ル・タライ平原の村から(40)

逆カル チャーチョック

  4 年ぶりに「外国へ行く」、そんな気分で乾季後半の季節、家畜頭数を減らして、妻と一時帰国しました。
 久しぶりの物質文明の居心地は、率直に非常に良い、最高です。妻は、「本当に今日は停電ない?」と言って、念のため、懐中電灯をそばに置いて就寝し ました。いつでもお湯のシャワーが浴びられる。インターネットもスイスイつながる。坂道、自転車をこいでいると、年配女性が電動自転車で軽く僕を追い 越していく。トンネルでいくつもの山を簡単にすり抜けることができる。バス・電車・乗用車・家の中、スーパーの中、全てが快適でした。
 さらに、日中バスに乗ると皆お年寄りが乗車していました。実家の近所のコンビニだったところがデイケアセンターになっていました。閉塞感・不景気と いう言葉を耳にしていたのですが、JR大阪駅や近辺は新しくなり、高層ビルが建っていることに驚きました。ネパールでは、寝静まる“真夜中”10時な のに大阪駅にカッコよく、オシャレに若い人らが正しく列に並んでいました。通りがかりの美容院では、犬が散髪していました。聞けば、僕の散髪代より遥 かに高額とか。農村・農家にヤギ・牛がどこにもつながれてないこと。向こうでは貴重だった薪がここでは、森の中に大量にあるのに誰も拾わないことにつ いて考えてしまいました。
 ネパールにいる時は、日本の見方でネパールを見て、日本にいる時は、ネパールの見方で日本を見ている。つまり、これは「逆カルチャーチョック」とい う状況です。

暮らしを作るための農業


 そんな中、滞在中に農業関係者の個人・団体を訪問した時、ネパールや日本について、様々なご意見・感想が聞かれました。
 「毎日カレー喰ってんの?」、「だいたい、どれくらい自給しているの?」、「働きたい時働いて、休みたい時休む、思い気のむくままの暮らしなん だ」、「こっちは、(分刻みの)タイムテーブルに沿った暮らしで、そっちは、(土地固有の気候・風土が時を刻む)自然のリズムに沿った暮らしのよう で」
 「金があるところには、金がある(大阪の高層ビル群)」、大量消費・大量生産を前提にした「産業廃棄物(食品残渣)で飼っている家畜を見て、向こう で参考になるんやろか?」、人口の80%が農村で暮らすネパールに対し、「数%の生産者、90%以上の消費者の日本とネパールでは、そもそも社会構造 が違う」
 社会が分業化すると「生産地と消費地が遠くなる。そうすると金になるものを作って、それを金に換えて暮らす」
 「何でも金で売り買いするのがあたりまえになって来ると、買う人(金を持っている人)が強くなって、品質/量/味に厳しくなって来る。結果、どんど ん作る側に負担がかかって来る」
農の現場で携わる人達の言葉は、一つ一つが心に深く染み込みます。
 現在、ネパールでは、どんどん市場化が進んでいる状況ですが、そういう中にあって、お金を作るための農業よりも、暮らしそのものを作るための農業 に、できる限りこだわってみよう。ここでの農家の生き方に、もっとこだわってみようと思った次第です。      


 (藤井牧人)

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