アソシ 研リレーエッセイ
見 直されるべきシルビオ・ゲゼル
シ
ルビオ・ゲゼルと聞いて思い浮かべることができる人は多くはないでしょう。社会の
改革を考える人にとっても、マルクスに比べれば知名度は雲泥の差があるようです。マルクスの生きた時代の一部と重なるゲゼルですが、支配者層から
も社会変革を目指す共産主義者のどちらからも排除され、弾圧され、無視された思想家です。
実業経験ももつ人で、マルクスの資本理論を批判し、胡散臭い存在とみられたのかも知れませんが、マルクスが考察しなかった「貨幣の本質」につい
て、徹底的に考え抜いた人です。ゲゼルが書いた貨幣についての考察は読んでいても今でも有効であるように思えます。
100年前に書かれたものにも拘らず、臨場感があります。貨幣の形が、金属から紙幣、いまや単なる記号にまで替わってきていることの理由を理解
する手助けになるものです。貨幣の仕組みが貧富の格差をますます助長し、なぜ度々「恐慌」と呼ばれる現象を引き起こすのか?などゲゼル理論はよく
説明できる。
ゲゼル理論に基づいて、第一次大戦後のドイツの一地方“ヴェルグル”で実践された通貨革命と呼んでよい試みは、知る人ぞ知る有名な試みなのです
が、残念ながら、ゲゼルの理論は大きくは支配者層からも社会変革を志す側からも抹殺ないしは無視されてきた歴史があり、人々の目にはなかなか触れ
られない位置に置かれ続けてきました。
ゲゼルはもっと読まれてしかるべきです。つい最近知ったゲゼルですが、大変価値のある著作です。せめて、マルクスが読まれる程度には読まれるべ
きでしょう。
日本でゲゼルとその関連の著書を発行するのは1社のみです。貨幣の本質を研究し、もっと多くの人に知らしめようとしても、出版を引き受ける会社
は少なくそれこそ「パル出版」という会社のみです。不思議なことに、大きな本屋でもゲゼルの本は皆無です。
理由はわかりませんが、売れないからとか商売上の理由というのも?です。目に付く所にあれば必ず手に取る人は確実に増えていくはずなのに、で
す。人をバカにする、コケおどしのインチキ経済学者のくだらない本はいっぱい並んでいるのに、です。
(鈴木伸明)