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ネパー ル・タライ平原の村から(39)

タライ 農村地域におけるNGO活動から考える

 2月 12日から24日までの期間、栃木県・アジア学院のネパール・スタディーツアーに現地調整員として同行しました。参加者は、10代から80代の9名。 アジア・アフリカの農村地域から送られ、日本で研修を受けた現地のアジア学院“卒業生”(ネパール人)の活動地を訪問するという旅です。訪問先は主 に、タライ平原の農村地域で活動する個人・団体(NGO)です。

 カトマンズから西部へ約180km、僕が暮らすカワソティや約400qのトゥルシプルへ車で移動。訪問先NGOでは、時間の制約上、活動内容や報告 をプロジェクターや資料を利用して解説を受けることもあるのですが、現地の村に出向き、受益者の声を直接聞けることがツアーの醍醐味でもあります。
時に“牛やヤギの渋滞”に道を阻まれ、時に移動困難なため、ローカル・バスを貸切り、橋のない河の道を渡ったりもしました。そうしてようやく活動地 (農村)へたどり着きます。
 現地 では、NGOスタッフや地域のリーダーから聞くネパール語を日本語に通訳します。それに限らず、時に地域住民が日常使う言語をNGOスタッフがネパー ル語に訳し、それをさらに僕が日本語に訳すということもありました。こうして目に映る道、家、風景、言葉の差異は、ツアーの内容以上にそのこと事態が 参加者に大きなインパクトを与えたように思えます。
 行く先々で開発NGOが行っているのは、土地無し債務労働者の土地獲得運動、小規模融資組合、森林利用組合、協同組合の運営、学校建設、識字教室、 公衆衛生の指導、農業指導、灌漑事業、収入向上プロジェクト等、総合的な農村支援といった活動です。ほかにも、みかん栽培プロジェクト(規格に適合し たみかんの市場出荷や、規格外品のジュース加工への支援)や、海外出稼ぎ者を信頼あるエージェントに斡旋する事業、出稼ぎ先で事件・トラブルにならな いような生活指導等、市場化やグローバル化とのつながりが深い、現在の農村のニーズに合わせた活動もありました。
 NGO活動を見て僕自身が受けた印象は
@ 債務労働者の土地獲得運動以外は、非政治的であること。
A 本来、国が取り組むような、多岐にわたる総合的な支援をNGOが実践していること。
B 女性グループを対象にした活動がほとんどであること。(注1)
C ネパールと日本の農村・農業が抱える課題が重なること。(注2)
といったものでした。
 首都圏に拠点を置く国際NGOから、食べ物作っている農村、農民は助け合っているとか、“伝統的”な暮らしや自然に沿った暮らしを称賛する声が聞か れます。それを踏まえて教育がないとか、技術がないとか、遅れているとか。いつまでも伝統的な暮らしをしていてはダメという批判の声も聞かれます。
こうして称賛されたり、否定されたりと評価され続けるアジアの農業・農村ですが、逆にアジアの農業・農村の側から先進国をどう評価するのか?声を聞い てみたいと思うのです。

(注1)これについては、この連載で何度も繰り返し書いて来た「海外出稼ぎによる働き手(男性)の流出」と関連します。女性がいつまでも村に留まって いる現状を反映しているのです。
(注2)出稼ぎ者の増加から、農外に収入源がある兼業化が進んでいます。一方で小さな収入向上プロジェクトはあるものの、どれも産業が育つというとこ ろまでは至っていません。


 (藤井牧人)

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