タイトル
HOME過去号>120号

アソシ 研リレーエッセイ

「和 食」の胡散臭さ

新 しくアソシ研の運営委員になった、よつ葉の商品企画を担当している松原竜生です。よろしくお願いします。
 前号では河合さんが“歴史観”について書いていました。知性主義を自認するだけあり、よく見聞きし色々なことをよく知っている河合さんを尊敬し ていますが、ただ一点、よく通信やカタログで展開している「朝ご飯を食べましょう」という主張は嫌いです。“進歩史観”や“発展史観”ともつなが る話だと勝手に思い込んでいるのですが、いつの時代のどんな生き物が食べ物を決まった時間(しかも決まった回数)に口にできたんよ?・・・と。 「朝ご飯を食べないと頭と身体が働かず、朝から動けませんよ」というのが通説ですが、それって読み替えると「規則正しい生活をし、良質な労働力を 再生産しなさい」と言われているよう(ひねくれ過ぎ?)で。少なくとも「生き物としては退化し弱くなっているよなぁ・・・」という位の自覚がいる と信じています。
 さて、それと同じような文脈で胡散臭さを感じているのが「和食」の無形文化遺産登録。多くの人が喜ばしい事として捉え、よつ葉と同業者の中でも カタログ表紙で「これを機に、栄養バランスもよい伝統的な一汁三菜を家庭で見直そう」みたいな展開をしていた団体がありますが、おいおい“一汁三 菜”って茶懐石において定着した形式でしょ?それこそ、いつの時代に誰でもそんな食事をしていた(できた)という実績があるの?って感じです。
 “和食”として登録されるためには、各地域でみられる多様な食生活は統一されます。中央集権的な体制の中、宮廷料理として発達したフランス料理 は“フランスの美食”として既に登録されているようですが、「イタリアにイタリア料理はない。各地の郷土料理があるだけだ」と言い放つイタリアの 人は、そんな登録には反発するに違いありません。
 また、“和食”が日本文化である理由のひとつとして「自然の尊重」が挙げられています。豊富な山海の幸に恵まれそれによって育まれた事は認めま すが、福島第一原発事故によりその前提となる環境が汚染され、半永久的と言っても過言ではないくらい長きに亘り、それらの享受が実質的にも感情的 にも難しくなる事実、そして大豆など“和食”にとって大切な食材が、「自然の尊重」とは対極の存在である遺伝子組換えに席巻されている現状につい て全く触れられていないことを顧みると、やはり今回のお祭り騒ぎに冷ややかな眼差しを向けてしまいます。
 というわけで、生産者がカタログ向けに書いてくれた文章の「和食の無形文化遺産登録バンザイ!」的な部分を削除(笑)。他の団体みたいに一緒に なって喜んで盛り上げた方が、生産者からとってもかわいいんだろうなぁ・・・とか思っているところに、素晴らしいタイミングで相模女子大名誉教授 の河上睦子さんを招いて、「和食とイデオロギー」という講演会が5月24日(土)にアソシ研主催で開催されました。これを機会に「和食」について 改めて向き合ってみたいと考えています。(どう横谷さん!?うまくつなげたでしょ?)  

(ひこばえ 松原竜生)


200×40バナー
©2002-2019 地域・アソシエーション研究所 All rights reserved.