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市民環境研究所から


憲法記念日に思う



こ のコラムを書かせてもらってから何年が経過しただろうか。発行者と編集者が駄文に耐えてくれているから、かくも長続きしている。感謝の一言のみで ある。
 毎回の文頭には季節の様子を書いているが、起承転結の起になっていないことも多い。しかし、後日に再読した時に、そう言えばあの年は暑かったと 思い出すことができればと思う。もちろん再読するのは筆者本人だけの可能性は大であるとは承知の上であるが、お許し願いたい。
 本文を書いている2014年5月の大型連休中はもう夏日の連続で、京都は27度とか28度にもなっている。こんなことは今までなかったような気 がするが、そんなことはないだろう。
 そんな日に、毎年は失礼している京都の円山野外音楽堂での憲法集会に参加した。自民党の中でさえ異論が出ている安倍内閣の集団的自衛権容認論が まかり通る今年の憲法記念日に何の意思表示もせずに過ごす訳には行かないと、夏日の暑さの中を出かけた。野外音楽堂にはあふれるほどの人々が集 まっている。憲法を、とりわけ9条を考え、守る行動の一日となった。
 そう言えば、憲法集会と名付けなかったが、35年ほど前の5月3日には、京都の小さな市民団体同士で声を掛け合い、鴨川の三条大橋下の河原に集 合し、「命と環境を守る市民の行進」が出発し、円山公園まで歩いた。掲げる課題は種々あり、水問題もあれば、原発問題も農業も学校給食もゴミも反 戦などに取り組む市民団体が連帯して年一度の行進だった。
 何年まで続けたかは失念したが、命と環境を守るとはまさに憲法記念日の課題だと、この日を選んでの行進だった。今、当時の写真を取り出してみる と、その行進の隊列の中に、今も、毎週金曜日の夕方に関西電力京都支社を取り囲む脱原発行動(キンカン行動)に参加されている方々の若かりし姿が 見える。永き闘いをしずかに続けられている姿にただただ敬服するだけである。
 1枚の写真には多くのことを教えられ、時代の変化を感じさせる。行進の先頭には「命と環境を守る市民の行進」と書かれた横断幕が写っているが、 この幕を持っているのは若者で、行進の隊列にも若者が大勢いる。それから35年が過ぎた今年の「憲法記念日行動」でも、3月10日の「バイバイ原 発」行進でも若者のなんと少なかったことか。ここで改めて嘆くことはなく、あらゆる社会的な動きの場面で言われていることであり、先日も京大構内 でたまたま出会った先生も同じことを言っていた。どうしたらよいのか分からないし、今の大学では学生のそんなことまで対応する時間的余裕がないと いう。皆と同じ考えを持ち、疑問を持たず、目立たないことが良い子だと言って育てる教育を是認してしまった我々の責任でもある。
 そうならば、年寄りが当分の間はなんとか社会的発言と行動を続け、そんなに多くの若者でなくってもよいから、現代社会の理不尽さに気づき、悩 み、行動する者を一人でもいいから見つけ育てるために、集会場を埋めつくす動きを展開して行かねばと思う。 


(市民環境研究所代表 石田紀郎)


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