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ネパー ル・タライ平原の村から(38)

Study in Japan

 農業でなく、複業を営む僕の仕事の1つが、東京と大阪にある日本語学校とネパール側のエージェント(留学斡旋会社)を仲介する仕事です。仕事内容 は、日本文化を紹介したり、日本語を教えたりしている訳では、決してありません。カトマンドゥにあるエージェントに学校紹介や学生面接のお手伝い。そ の後口偽装が多々あると言われる各種証明書の確認作業もあります。実際、経費支弁者の信用組合発行の残高証明書があり得ない計算間違い?いや、ここで はあり得る計算ミス?偽装?もありました。 
 また、学校資料の翻訳等の雑務も行なっています。今の時期は、4月から留学する学生の入国手続きに必要な書類作成しているところです。
 低所得国のネパールは今、少子化した高所得国への留学生送り出し国となっています。新聞紙面に連日、海外出稼ぎ斡旋会社の広告以上に 「studyinOO」と大量の留学広告が載っています。移民受入れに積極的な英語圏を中心に、study inオーストラリア、USA、UK(イギリス)、カナダ、ニュージーランド、アイルランド。さらにドイツ、デンマーク、キプロス、リトアニア、ポーランド、インド、フィリ ピン、中国等。
 そして、従来の国費留学でない、私費留学による日本留学も、ものすごい勢いで増えているのです。独立行政法人日本学生支援機構、「国別留学生数上位 5」の統計(2012年5月)によると・・・

1。中国 86324人(前年比▲1209人 1.4%減)
2.韓国 16651人(同▲989人 5.6%減
3.台湾 4617人(同  46人 1.0%増
4.ベトナム 4373人(同  340人 8.4%増)
5.ネパール 2451人(同 435人 21.6%増)


 ネパールへ来た最初の数か月、読み書き習得のため、近所の小学2年生の国語(ネパール語)授業に週2回通いました。当たり前のことですが、農作業は 季節・天候と自然のリズムに合わせて進行するのに対して、授業は決まった曜日・時間に応じて進行します。そのうち都合が合わなくなって数か月後、僕の プチ留学(読み書き学習)は、頓挫してしまいました。そんな体験から、「・‥統計上、80%が農業に従事している人達の暮らしは学校・教育システムに 馴染まない。低識字率や、海外から教育援助が殺到するのもうなずける…」と妙に納得していたら、それは今や過去の話しでした。全国共通試験の高得点を マークしないと…、私立学校で英語教育を受けないと…、海外に留学し、自国の何倍もの収入が得られる給与生活者にならないと…。今やネパールは、しっ かり学校化され、教育システムのレールの上を走っています。人生は学校教育で決まってしまうかのような、どこかの国と同じレールを走らされているよう にも見えます。
 留学前の負担に加え、留学生には、留学先の言語の習得に限らず、異文化での暮らし、アルバイト先での苦労が重くのしかかります。このような教育や留 学のあり方は、いずれ経済効果以上にネパールの社会・政治に大きな影響を与えることになるのでしょうか? 


 (藤井牧人)

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