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ネパー ル・タライ平原の村から(43)

統計から観るネパール

 
  2011年、ネパール政府・中央統計局(CBS:Central Bureau of Statistics)による10年に1回の大規模な国勢調査が実施されました。ところが翌年、地元の公務員に訊くと、「結果が公表されたという情報はない」とのこと。よ うやく翌々年に公表されたようですが、地方では入手できませんでした。
 そこで“首都のカトマンドゥなら手に入るだろう”と、CBSの中央機関がある住所地へ行ってみました。ところが、門番からは「そんな建物は知らな い」との返事。“教育省に行けば何か情報があるかも”と思い、教育省を訪問すると、CBSが数年前に移転していたことが分かりました。
 こうして、ようやくCBSの移転先へたどり着いたものの、統計出版物は出数不足で、一般向けは数ヵ月待たないと入手できないとのこと。結局、入手で きたのは“Nepal in Figures”というタイトルの統計小冊子だけでした。
 あちこち訪問し、ようやく必要な情報・モノが手に入る、もしくは手に入らないのがネパール。と思っていたら、「わざわざ中央機関まで来なくとも、調 査に関する詳細は検索すればホームページに公表されている」と軽く言われる始末です。
 今回は、インフラ整備より先に情報化が進むネパールを、ホームページの方でなく、1年前ようやく手にした小冊子を見ながら、統計数字から改めて観て みたいと思います。

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 ネ パールの統計上の人口は2649万人です。1961年の人口は941万人だったので、50年で人口は2.8倍に増加したことになります。
 地域別の人口構成は、ヒマラヤ高山地178万人(7%)、カトマンドゥを含む中山間地1139万人(43%)、タライ平原1331万人(50%)。 1971年の人口分布では、ヒマラヤ114万人(10%)、中山間地680万人(53%)、タライ437万人(37%)だったので、この40年の移住 政策によって、平地タライの人口はネパールの全人口の過半数を超えるようになったことが分かります。
 また、都市/農村別の人口構成は、都市部452万人(17%)、農村部2197万人(83%)。さらに不在人口が192万人。「不在人口」とは海外 への出稼ぎ者で、全人口の7%に相当します。ネパールは農村に限らず都市でも産業が少ないことが一因となって、海外への出稼ぎが常態化しています。
 識字率は全国民で65.9%。うち男性は75.1%、女性が57.4%。都市部が82.2%、農村部は62.5%。実際、農村部の女性で年齢が高く なるに従い、読み書きを知らない人が増えます。
 そのほかにも、経済・保健医療・農産物・教育・エネルギー・家計消費と、多岐に渡る指標が示されています。
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 ところで、統計の序文の末尾には、一人当たりのGDPは57,726ルピー(735USドル)、年平均の経済成長率が4.63%で、人口のおよそ 1/4にあたる25.16%が貧困線以下である、と記されていました。たしかに、ここでの暮らしには、不足しているモノがたくさんあります。しかし、 そもそも貧困線というラインは、どんな物差しで引かれたのでしょうか? 何か単一の価値基準のようなものがあり、そこから“計測”して貧困線より “上”とか“下”とか、あたかも当たり前のように語られること、そのものに違和感を覚える次第です。
(藤井牧人)

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