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『Shinobi 3D』とは 『Shinobi 3D』は2011年11月にニンテンドー3DSで発売された。2003年の『Kunoichi 忍』から実に8年ぶりの『忍』シリーズ新作である。グラフィックは3Dだが、ゲーム性は1995年の『新・忍伝』以来となる2D横スクロールアクションに回帰している。 ストーリーはシリーズ全体の前日譚に当たり、主人公はジョー・ムサシの祖先ジロー・ムサシだ。物語は鎌倉時代の日本から始まるが、朧の里の大爆発に巻き込まれたジローは未来へタイムスリップしてしまう。そして西暦2056年の世界で、宿敵ZEEDと戦いを繰り広げるのだ。これだけで分かるように、『忍』シリーズらしい奇想天外な世界観は本作でも健在どころか、今までのどの作品よりもブッ飛んだ設定になっている。 『Shinobi 3D』を開発したのはアメリカのGriptonite Gamesである。本作はもともと海外をターゲットとしており、当初は日本で発売される予定はなかった。『Spider-Man Web of Shadows』や『Assasin's Creed II: Discovery』など、2Dアクションゲームの開発を得意とし、しかも『忍』シリーズの熱烈なファンでもあるGriptonite Gamesのスタッフは、まさに本作にうってつけだった。そして実際に『Shinobi 3D』は、『忍』ファンによる、『忍』ファンのためのゲームというべき、素晴らしい内容に仕上がっている。 進化したゲームシステム 『Shinobi 3D』はシリーズの伝統に忠実な横スクロールアクションであり、ゲームシステムは主に『ザ・スーパー忍II』を手本としている。八双飛び、八双手裏剣、忍術といったシリーズ定番のアクションに加え、鎖鎌を天井に引っかけてぶら下がったり、コンボのような今風の要素も取り入れており、シリーズ中最も多彩なアクションが可能だ。 過去のシリーズとの大きな違いは、忍刀による防御のシステムだ。本作の防御はとてつもなく万能で、地上でも空中でも発動でき、背後や頭上からの攻撃もすべて防ぐことができる。しかも防御が成功すると、強烈なカウンター攻撃を繰り出せるのだ。ただし、防御のボタンは攻撃が当たる瞬間に押さなければならず、少しでもタイミングを誤れば逆にダメージを受けてしまう。まさにハイリスク・ハイリターンなテクニックだ。 防御を使わなくてもゲームクリアはできるが、防御を使いこなせばより美しいプレイができ、さらに高得点も得られるようになっている。ダメージを受けずに、攻撃や防御を連続で成功させると、スコア倍率が上がっていくのだ。しかも、スコア倍率が上がると移動スピードやジャンプ力もアップするため、うまくなるほどスピーディーに進める仕組みになっている。最終的に上級者のプレイは、背後からの敵の攻撃を振り向きもせず防いだかと思うと、返す刀で敵を両断し、そしてステージを疾風のごとく駆け抜けていく。これぞ『忍』だ。 『忍』シリーズの集大成 『Shinobi 3D』は、まさにこれまでの『忍』シリーズの「いいとこ取り」といえる作品だ。ゲームの核となるプレイヤーのアクション、ステージ、ボスなどの多くは、主にメガドライブの『ザ・スーパー忍』、『ザ・スーパー忍II』から着想を得ている。また、ジローの赤いマフラーや四つ穴の鉢金といったデザインは、プレイステーション2版『Shinobi 忍』の主人公、秀真をイメージしたものだ。そして、アーケード版『忍』の手裏剣投げを再現したボーナスステージや、エクストラで使える黒装束のジョー・ムサシ、ライフ制ではなく一撃死のレトロモードなどは、長年のシリーズファンには感動もののフィーチャーだろう。 『忍』シリーズにとどまらず、オールドゲーマーを喜ばせるようなセガの名作ネタも盛り込まれている。鎌倉時代の雪山で『ゴールデンアックス』のギリウス・サンダーヘッドが氷漬けになっているのも笑えるが、何といっても最高なのは、ジローが戦闘機の上で戦うシーンだ。戦闘機を後方から見たカメラアングルが『アフターバーナー』そっくりで、しかもBGMもアーケード版の「After Burner」が原曲のまま流れるのである。実は本作のためにアレンジした「After Burner」も制作されたのだが、仮置きでアーケード版の曲を入れたところあまりにインパクトが大きかったため、そのまま製品版に採用されてしまったのだ。 ニンテンドー3DSによる演出 『Shinobi 3D』は、ニンテンドー3DSの立体視やジャイロセンサーを活用した特殊アクションシーンもウリのひとつとなっている。ステージの随所に、画面奥に向かって進む騎馬シーンや車上シーンなどがあり、さらにイカダで地下水路をサーフィンするシーンでは、ニンテンドー3DS本体を左右に傾けて操作する。これらのシーンは見た目は新鮮だし、決してつまらないわけではないが、正直いってなくても構わない要素だ。ニンテンドー3DS初期のタイトルとして、入れざるを得なかったというのが実際のところだろう。 また、『Shinobi 3D』が発表された時、画面写真を見た多くの人は「グラフィックがショボい」と批判した。確かに本作は見た目が抜群とは言い難く、その点で損をしているのは否めない。しかし実際にゲームをプレイすると、動かしているだけでとにかく気持ちよく、グラフィックのことはほとんど気にならない。開発スタッフはあくまで画面の見やすさと、処理落ちしないスムーズな動作に重点を置いた。そして同時に、独特のアートスタイルも表現できるハードエッジなグラフィックを目指したのだ。携帯ゲーム機のアクションゲームということを考えれば、正しい選択だったといえるだろう。 日本とアメリカの才能が融合 『Shinobi 3D』の初期コンセプトイメージは、アニメーター、アニメーション監督として著名な前田真宏が担当している。それをベースに、アメリカのアーティストがハードエッジな水墨画スタイルのビジュアルを作り上げていったのだ。『Shinobi 3D』は基本的にアメリカ主導で制作されたが、日本人から見て違和感のある部分などは、日本のセガがきちんと監修している。例えば、試作版ではジローの正座の姿勢が悪かったので正しい姿勢に修正したり、漢字のフォントを書道有段者の社員が書き直したり、といったことだ。 『Shinobi 3D』の音楽を手がけたのは日比野則彦と、彼が代表を務めるジェム・インパクトの鈴木克崇、イズタニタカヒロだ。過去に日比野が手がけた『NINJA BLADE』の曲を気に入ったGriptonite Gamesが、日比野に直接作曲を依頼したのである。最初は古代祐三も参加し、日比野との共作になる予定だったが、残念ながら古代のスケジュールが合わず実現しなかった。そこで日比野は和楽器のサンプリングなど、古代が『ザ・スーパー忍』で作ったイメージを本作にも取り入れつつ、今の時代に合わせた楽曲に仕上げた。特に日比野が最初に作ったメインテーマは、『Shinobi 3D』の方向性をハッキリと示し、開発チーム全体が作品のイメージを共有する上でも重要な役割を果たした。 シリーズの伝統に忠実な新作 セガとGriptonite Gamesは『Shinobi 3D』を、『忍』シリーズのファンだけでなく、アクションゲームを愛するすべての人々に向けて作ろうという、強い思いを持って取り組んだ。そして開発中、議論と修正を何度も繰り返し、単純に面白くないと感じたら、ステージさえも丸ごと一から作り直した。そんな彼らの情熱は、完成したゲームから確かに伝わってくる。 アクションゲームファンに向けただけあって、『Shinobi 3D』の難度はかなり高い。シリーズ中最も難しいといっていいかもしれない。そういう意味では、明らかに万人向けのゲームではないだろう。ただしシリーズの伝統に従い、本作も完全なパターンゲームなので、繰り返しプレイすれば確実に先へ進むことができる。そして、最初は遠くから手裏剣を投げて慎重に進んでいたのが、上達するにつれ忍刀や防御を駆使して大胆に攻め込めるようになる。この絶妙なバランスこそ、『忍』シリーズの不変的な魅力といえるだろう。 『Shinobi 3D』は、『ザ・スーパー忍』をはじめとする過去のシリーズに並び立つ傑作だ。グラフィックやサウンドに関しては好みが分かれるかもしれないが、防御やスコア倍率など、新たに追加されたシステムのおかげで、ゲーム性の面ではシリーズ中最も奥深い作品となっている。『Shinobi 3D』は、クラシックな2Dアクションの『忍』を、見事に現代に復活させた。そして四半世紀にわたって続く『忍』シリーズが、今日でも通用することを証明したのだ。 |
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