スター・ウォーズ ローグ スコードロンII
Star Wars Rogue Squadron II: Rogue Leader





 ゲームキューブソフト『スター・ウォーズ ローグ スコードロンII』は、クラシック・スター・ウォーズ(エピソード4、5、6)ファンの夢をかなえてくれるゲームだ。
 1面、つまり購入後最初のプレイから、プレイヤーは最も有名なシチュエーション、デス・スター・トレンチ(溝)突入を体験することができる。その後も、惑星ホスでAT-ATの足にケーブルを巻き付けて倒したり、エンドア上空でスター・デストロイヤーのブリッジに突撃したり、第二デス・スターの狭いトンネルを突破して反応炉を破壊、炎に追い付かれる前に脱出したりと、映画(およびスピンオフ)そのままのミッションが展開される。
 優秀な制作会社ファクター5が、ルーカスアーツとの密接なコラボレーションのもと、この作品を作り上げた。それだけあって、グラフィックの美しさは、誇張でなくオリジナルの映画以上。そしてサウンドも、まさに映画そのものだ。映画のオリジナルサウンドトラックが使用されているだけでなく、映画同様、シーンに合わせて曲が自然に変化していき、数々の名セリフも絶え間なく挿入される。
 例えば、1面「ヤヴィンの戦い」。仲間のウェッジ、ビッグスがやられ、ルーク(プレイヤー)は一人排熱ダクトを目指す。激しい戦闘のさなか、突然静かな「あの曲」に切り替わり、師オビ・ワンの声が響く。
 「フォースを使え、ルーク……」
 照準コンピュータを切り、フォースに身を委ねるルーク。だが、背後から迫るベーダー機が、ルークのXウィングを照準に捉える……。
 「ヒャッホーー!! さっさと片付けて、帰ろうぜ!」
 間一髪、戻ってきたハン・ソロがルークの危機を救う。排熱ダクトが近づき、「あの曲」が流れ出す。最高に盛り上がる中、Bボタンでプロトン魚雷発射……命中! デス・スターは大爆発を起こす。
 これまでにも、アタリの『スター・ウォーズ』、スカルプチャードの『スーパー・スター・ウォーズ』、セガの『スター・ウォーズ・トリロジー・アーケード』など、クラシック・スター・ウォーズを忠実に再現したゲームはいくつかあった。その中でも『スター・ウォーズ ローグ スコードロンII』は、現時点の「決定版」といえるだろう。
 最高のグラフィックやサウンドはもちろんだが、本作の素晴らしい点は、単に見た目が豪華なだけでゲーム性の薄い、いわば「ライドムービー」的な作品に終わっていないところだ。『スターフォックス』や『エースコンバット』のような「本格3Dシューティングゲーム」としても、抜群に面白く、そして奥深いゲーム性を備えているのである。
 本作には基本的に、近年の流行である派手なロックオン攻撃はなく、プレイヤーは手動で照準を合わせなければならない。闇雲にボタンを連射しているだけで、お手軽に爽快感を得られるゲームとは違い、プレイヤー自身の正確なコントローラさばきが試されるのである。映画さながらにちょこまかと動き回るTIEファイターには苦労させられるが、それだけに撃墜した時の爽快感は格別。これぞドッグファイト、これぞシューティングゲームだ。
 そして、広大な360度空間で、大量の敵・味方が入り乱れる。一機一機がまるで意思を持っているかのように動き、無数のレーザービームが交錯する。そんな本作の戦闘は、毎回同じ展開になることはなく、常に新鮮な緊張感がある。ただし、敵の出現位置・タイミングなどは完全なパターンなので、何度も繰り返しプレイして覚えれば、確実に先へ進めるようになっている。リプレイアビリティの高さと、攻略性の高さが、高次元で両立されているのだ。
 最終面の1つ前、「エンドアの戦い」ステージを初めて見た時、スター・ウォーズファンは体が震え、鳥肌が立つだろう。このゲームを買って、もしこの面を見なかったら大損だ。
 エンドア上空に集結した反乱軍の第二デス・スター攻撃隊は皇帝の罠にはまり、帝国軍の大艦隊に包囲される。そして「あの曲」とともに、ゆうに百機はいるTIEファイターの大編隊が一斉に向かってくる!
 「すごい数だ!(There's too many of them!)」
 本当にすごい数なのだ。映画の同じシーンを思い出して欲しい。あの光景がそっくりそのまま、ゲーム内に広がっている。この宇宙空間での「大乱戦」こそまさしく『スター・ウォーズ』であり、『スター・ウォーズ ローグ スコードロンII』の何たるかを体現しているといえるだろう。
 『スター・ウォーズ ローグ スコードロンII』は決して簡単なゲームではないが、理不尽な難しさはまったくない、と断言できる。ただクリアするだけなら、何度も挑戦すれば、初心者でも必ず達成できるはずだ。兵器をアップグレードするアイテムや、最終手段としてパスワードという救済措置もある。
 そして上級者には、メダル獲得という大きなチャレンジも用意されている。各ミッション終了時の戦績に応じて、ブロンズ、シルバー、ゴールドのメダルが授与される。それらを集めることによって、ボーナスミッションや隠し機体、高難度の「エースモード」など、様々な隠し要素がオープンできるようになるのだ。
 この隠し要素がとにかく充実していて、どれもゲットしてうれしいものばかりだ。ボーナスミッションでは、ミレニアム・ファルコンの機銃でTIEファイターを撃墜する「デス・スターからの脱出」(エピソード4)や、ミレニアム・ファルコンで帝国軍の追跡を振り切る「アステロイド・フィールド」(エピソード5)など、ローグ中隊以外の名場面もゲーム化されている。
 また、プレイヤーがダース・ベーダーとなり、TIEアドバンスドで反乱軍を撃滅する「デス・スター防衛戦」、「ヤヴィンIV壊滅作戦」など、ゲームならではの「裏」ストーリーもある。「デス・スター防衛戦」は、まさに1面を帝国軍の立場からプレイするもので、トレンチを進む反乱軍にプロトン魚雷を撃ち込まれたら、プレイヤーの「負け」というわけだ。
 ボーナスビデオの「メイキング・オブ・ローグ スコードロンII」では、ディレクターのジュリアン・エッゲブレヒトによる制作秘話(彼らはこの傑作を、わずか8ヵ月で作り上げた!)や、ファクター5内の制作風景を見ることができる。さらに、「オーディオ・コメンタリー」をオンにすることで、ゲーム中、制作者によるそのステージの音声解説を聴くこともできる。例えば1面なら、「映画の名場面を再現すると同時に、導入ステージとして、難しすぎず、プレイヤーにゲームに慣れてもらえるようデザインした」といった具合だ。
 音声解説は映画のDVDなどではおなじみの機能だが、それをゲームに取り入れたのは画期的な試みだ。今後、他のゲームでもどんどん採用してほしい。ただ残念なことに、この「オーディオ・コメンタリー」だけは、日本語吹替えされていない。音声の量が膨大なので仕方なかったのかもしれないが、せめて字幕だけでも入れてほしかった。
 『スター・ウォーズ ローグ スコードロンII』は海外では大ヒットし、数多くの賞も受賞した。すでに第3作の発売も決定している。だが日本での知名度は低く、完全に埋もれた作品となってしまった。このゲームのすごさ、素晴らしさは、一目見ればわかる。例えばの話、もし2002年のエピソード2公開中に、劇場の大スクリーンでこの作品のプロモーションを流していたら、間違いなくもっと多くの人が購入し、もっと高い評価を受けていただろう。
 スター・ウォーズファンにとって『スター・ウォーズ ローグ スコードロンII』は、このゲームのためだけにゲームキューブ本体を買っても絶対に損はない、まさにキラータイトルだ。また、歯応えのあるシューティングゲーム、本当の達成感を得られるゲームを求めているゲーマーにとっても、永久保存の一本となるはずである。




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