BIONIC COMMANDO
CHAIN OF COMMAND




バイオニック コマンドー チェイン・オブ・コマンド

 『バイオニック コマンドー マスターD復活計画』から最新作『バイオニック コマンドー』までの10年間に、ネイサン・スペンサーに何があったのか? 『バイオニック コマンドー チェイン・オブ・コマンド』は、2つのゲームをつなぐオンライン・コミックである。本作は『バイオニック コマンドー』の海外公式サイトで読むことができる。以下はストーリーの要約である。



 TASC本部。ジョセフ・“スーパージョー”・ギブソンが、部下のミラーと話している。

ミラー「お言葉ですが……やはり納得がいきません。ブラックアウト作戦をバイオニック一人に任せるなど危険すぎます。もし真実が明るみに出るようなことがあれば……」
ジョー「そんなことにはならんさ。私が責任を持つ」
ミラー「この件に関しては、あなたたちの友情が判断を曇らせているとしか思えませんね。バイオニックだろうと何だろうと、彼は一人の人間ですよ」
ジョー「いや、彼は“一人軍隊”さ。この任務を遂行できる人間がいるとすれば、それはスペンサーだ。私は彼の戦いぶりを知っている。マスターDのミッションで、彼は私を帝国の収容所から見事に救出した」

 そう、スーパージョーが呼び寄せたのは、ネイサン・“ラッド”・スペンサーだった。

スペンサー「スーパージョー」
ジョー「知ってるだろう、今の私の肩書きは“スーパーバイザー”だ」
スペンサー「何と言おうと、あんたは“スーパージョー”だ」
ジョー「フッ……相変わらずだな」

 再会を喜び合うジョーとスペンサー。

ジョー「休暇を返上させてしまったかな?」
スペンサー「いや、“新人募集”をしてたのさ。負傷兵の連中に言ってやったよ。まだお払い箱じゃない、TASCのバイオニック技術があれば、まだ働けるぞってな。……俺はウソを言ってるか?」
ジョー「そうでないと願いたいな。だがこのままでは、国防長官は我々への支援を打ち切るだろう……君がこの任務を成功させない限りはな」
スペンサー「俺はバイオニック部隊に命を捧げる覚悟だ。任務を教えてくれ」

 ジョーはスペンサーに極秘任務の内容を説明する。

ジョー「君のターゲットは2人。暗号名フォージ、そしてシュライクだ。彼らはバイオニック部隊の最初のプロトタイプだったが……手術の後、極めて不安定な精神状態となった。その凶暴性から施設に拘留されていたのだが……4日前に施設を脱出し、国境を越えた。我々のつかんだ情報では、彼らは現在、アラスカのウラン採掘施設跡にいる」
スペンサー「アラスカだって? 何てこった……奴ら、サイバーテクノロジーの機密を分離派に流すつもりか?」

 アラスカ分離派はFSAから独立し、自分たちの国家を築こうとしていた。それは同時に、彼らがベーリング海峡の支配権を得ることを意味する。氷河融解以後、ベーリング海峡はFSA本土にとって重要なライフラインとなっている。何があっても、分離派にバイオニック技術の情報を渡すわけにはいかない。スペンサーの任務は、分離派と接触したフォージとシュライクを、隠密裏に抹殺することであった。

 アラスカに単独潜入したスペンサーは、ジェイン・“マグ”・マグダレンとコンタクトする。彼女はTASCの二重スパイとして、分離派の内部に潜入していた。

マグ「少佐、こちらマグダレン中尉。聞こえますか?」
スペンサー「良好だ、中尉。ターゲットの状況はどうだ?」
マグ「それが……事はそう単純じゃなさそうよ。スーパージョーの情報はウソっぱちだわ。フォージとシュライクは、ここに来てから何ひとつ話してない。分離派に機密を流す気なんてさらさらないのよ」
スペンサー「……今はまだ、だろ」
マグ「でも! 分離派の方も、彼らに興味すら持ってないわ。これから旧ロシア軍のヘリが彼らを回収に来る。それで分離派は、彼らをここから追い出すつもりよ」
スペンサー「つまり? ……彼らは我々にとって脅威ではないと言いたいのか?」
マグ「彼らは死ぬ必要などないって言ってるのよ。彼らはバイオニックなしでは生きられない。国防長官がバイオニック廃止令を求めるなら、それは彼らにとって死刑宣告と同じだわ。分からない? 彼らはただ生き延びようとしているだけなのよ!」
スペンサー「……マグ、お前も分かっているはずだ。作戦中に迷いは禁物だ。組織には指揮系統(Chain of Command)がある。決定を下すのは俺たちじゃない」
マグ「『黙って命令に従え』って? ハッ! おかしいわね、そのセリフ、帝国のファシストどもが言っていたことと同じじゃない?」
スペンサー「……いいからターゲットの座標を教えるんだ、中尉」

 マグの情報をもとに、狙撃ポジションにつくスペンサー。ターゲット2人を照準にとらえる。

 ――1発。それで終わりだ。……だが、なぜためらう?

 ――そうだ……俺はスコープの中の彼らに、自分自身を見た。

 ――彼らは戦士だ。祖国のためにすべてを捧げた戦士。……俺と同じように。

スペンサー「クソッ、マグ、作戦中止だ。彼らを行かせろ」

 フォージとシュライクの暗殺を中止したスペンサーとマグは、ひそかに2人と合流する。

マグ「落ち着いてフォージ、私たちは味方よ。あなたたちを助けに来たの」
シュライク「馬鹿を言うな。FSAは俺たちを消したいんだろう。俺たちはな……お前らのように志願してバイオニックになったわけじゃない。奴らは俺たちを“無理矢理”バケモノに改造したんだ。その挙句、俺たちが思い通りに働かなかったからと言って放り出した。……俺たちは国のためにすべてを犠牲にしてきた。その見返りがこのザマだ!」
スペンサー「俺たちと一緒に来てくれ。あんたたちが正当な扱いを受けられるよう、上にかけ合ってやる」
シュライク「とんだ甘ちゃんだな……彼らが自分たちの汚い秘密を認めるなどと、本気で思っているのか?」
スペンサー「約束する。俺を信じてくれ」

 ――殺害ターゲットを連れて帰るなど、お偉方は到底納得しないだろう。……だが、俺にはジョーがいる。かつて俺は彼の命を救った。今度は彼が俺を助けてくれるはずだ。

 スペンサーとマグは、フォージとシュライクを連れ、ミラーの部隊が待つ脱出地点にたどり着いた。

ミラー「武器を捨てろ! 少佐、一体どういうつもりだ?」
スペンサー「ミラー、彼らは丸腰だ。俺には彼らが本当に裏切り者かどうか判断できん。軍法会議に委ねるべきだ」
ミラー「……少佐、貴様は命令に背いた。貴様ができないと言うなら、私が任務を引き継ぐまでだ」
スペンサー「落ち着け、ミラー」
ミラー「総員、少佐が10秒以内に降伏しなければ発砲しろ」
スペンサー「やめるんだ! 彼らは俺たちの仲間だ。彼らがクソの塊を押し付けられたのは彼らの罪なんかじゃない、国のためなんだぞ!」

 銃を向けられ、やむなく武器を捨てるスペンサー。ミラーは部下にフォージとシュライクの処刑を命じる。

スペンサー「くそったれ、ミラー、彼らを殺させはせんぞ。俺たちは戦士だ、殺し屋じゃない!」

 怒りのバイオニック・アームが閃き、ミラーと兵士たちを打ち倒す。

シュライク「今だ、ここから逃げるぞ!」

 しかし次の瞬間、ヘリの機銃掃射が、容赦なくフォージとシュライクに降り注いだ。

スペンサー「やめろーーーーーー!!」

 冷たい雪の上で息絶えるフォージとシュライク。スペンサーもヘリの砲撃を受け、降伏する。マグは混乱に乗じ、一人その場を脱出した。

ミラー「任務完了だ、少佐」

 ――軍法会議で、ジョーは俺の目を見ようともしなかった。俺を見捨て、この件からあっさり手を引いたのだ。彼らは俺の腕を、階級を、そして唯一の生きる理由を奪い去った。

 ――あれから5年が過ぎた。俺は今も監房の中で、ただ死を待っている。俺はもう、窓から外を見ることもない。そこに広がる空も、自由も、ただ空しいだけだ。この鉄の檻だけが俺の世界だ。だが、すべてを失った俺にとっては……それで十分だ。

To Be Continued...



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