わかると嬉しい｜げんきＤＡＳで治そう！００４

そこだけ先生の奥さんは、受付をして治療院をもり立てるしっかり者。
患者さんの古里のおばあちゃんが、そこだけ先生をやり込めるのを聞いて、イラっときました。
でも、それ以上に、何か大事なことに気づいたようです。

患者さんにも、柔道整復師、鍼灸師の先生方にも楽しんで読んでいただけるように、「そこだけ先生とえだね先生」の話として、なるべくわかりやすく工夫しています。

各ページは、４～５分で読める文章量でまとめています（文庫本２ページ分くらいの文量です）。
それぞれの章は読み切りになっていますが、順番に読んでいただくとさらにわかりやすくなると思います。

患者さんが喜んで通う治療院にはどんな特徴があるでしょう？
治るだけでは、患者さんはファンになってはくれません。

患者さんが通う

そこだけ先生の奥さんは受付に座って、話を聞いていました。

ご近所のおばあちゃんが先生をやり込めているのを、半分笑いながら聞いていましたが、おばあちゃんが「あたしの先生」というのが気にかかりました。
よっぽどお気に入りの先生に違いないのです。何か秘密があるはずです。

「こんにちは、古里さん。ずいぶんお気に入りの先生がいるんですね。その先生って、どんな先生？」
奥さんも、子供のころから古里のおばあちゃんを知っています。
奥さんは、そこだけ先生と幼なじみで、近所で育ちました。

「ちゃんと測って見せてくれるんだよ。代謝が悪いところがありそうだって。その見せてくれた絵のとおりに治すと、しばらくは調子がいいんだよ。だから、悪くなる前に毎月一回行くんだよ。こってるとこだけじゃなくて、手首と首にも電気をするよ。神経の枝と根っこだって、えだね先生は言ってたよ。」

えだね先生の名前を口に出してから、古里のおばあちゃんは「しまった」という顔をしました。

「えだね先生か、あとで検索しなくちゃ。」と、そこだけ先生の奥さんは思いました。

「古里さん、ずいぶん詳しいじゃない？神経の話って、むつかしくないの？」

「見ればたいていわかるんだよ、絵で出てくるからね。私は、神経の枝と根と、代謝っていうのしか覚えてないけど、それでたいていわかるからね。パンフレットにも書いてあるよ。」

それか…！
そこだけ先生の奥さんは、カンが鋭いのです。
「そのパンフレット、伊丹さんにも見せたでしょ？」

「あいたたたっ、どうも足首が痛いねぇ、ちょっと、守、あんた、湿布しとくれよ。年よりは、大切にしとくれよ。」
伊丹のおばあさんは、急にそこだけ先生を名前で呼んで叱りつけながら、はて？何のことでございましょう？という顔をしました。

そのごまかしようをみて、やっぱりね…と奥さんは思いました。
「だから伊丹さんちは、おばあちゃんだけでなく、おじいちゃんも最近来ないんだわ。」と思いましたが、そこまでは口に出しませんでした。

「古里さんったら、絵を見せてもらっただけでわかった気になって、いい気になってんだわ。」

そこだけ先生の奥さんは、むつかしい話が苦手です。数学とか物理とか、説明されてもわかりません。むしろ、わかる方がどうかしてると思っているタイプです。

「でも、古里のおばあちゃんのほうが、むつかしい話は苦手なはずなのに。神経とかいって威張ってて、ホントどうかしてるわ。」

何より、得意満面で、夫であるそこだけ先生に説教をしたことが許しがたいのです。

「その、えだねさんとかいう先生は、なんだかウマいことやってるに違いない。
説明がうまいテレビ解説者の、林なんとかとか、池上なんとかみたいに、わかりやすいことで人気があるんだわ。」

そう思ったところで、そこだけ先生の奥さんは、ふと気がつきました。
「うちの先生は、説明なんてしたことないかもね。」

サッカー部でキーパーをしていたそこだけ先生は、スポーツマンらしく朗らかで、会話もじょうずです。カラオケもうまいし、社交的です。自慢のだんな様です。

「でも、症状の説明は苦手なのよね。肩こりとねんざの違いを、言い返せなかったし。」
夫婦そろって、むつかしい話は苦手なのです。

「絵で見せるだけで、わかった気になって、他の先生に説教までするくらいなら、その測定器とやらを見せてもらおうじゃないの！」

そこだけ先生の奥さんは、えだね先生のようすを確かめてこようと考えました。
ついでに、私のがんこな肩こりも治るといいな。
そう考えながら、そうか、たしかにうちの先生は肩こりは治せてないな、と思いました。

（2018年09月05日公開）

次のお話

肩の治療はどうやるの？
そこだけ先生の奥さん、えだね先生に会いに行く