無題 その3


 彼も女の子にもてませんでした。
 その一番の理由は不潔でした。
 彼は何よりもお風呂に入ることが嫌いだったのです。
 そんな彼がつぶやきます。
「ああ、風呂に入らなくてもきれいでいらればなぁ…」

「そんなあなたにはこれをどうぞ!」
「うわっ。なんだよ、お前」
「だから無駄な説明は致命的なんですよ。単なる通りすがりのセールスマンです」
「?」
「ともかく、そんなあなたはこれを飲みなさい」
「何、これ?」
「お風呂に入らなくても体がきれいなままでいられる薬です。体にありとあらゆる汚れやバイ菌を寄せ付けない体になるのです」
「マジで?」
「だから致命的なので失礼します」
 謎の男は去っていきました。
 残された彼は迷わず薬を飲みました。
 するとどうでしょう。
 セールスマンの言った通りに彼の体には汚れもバイ菌も受けつけない体になったのです。
 まあ、一見しただけではよく分かりませんが、なったのです。
 これでお風呂に入らなくても決して体は汚れません。きれいな体のままいられるのです。
 ただ、人間の体というものにはいくらきれいに洗ってもバイ菌というものはいるものなのです。
 ということは、他の人とは触れることが出来ないのです。
 結果、彼は一生女の子にもてるどころか、触れることさえ出来ないのでした。

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