無題 その2


 彼は背が低いのがコンプレックスでした。
 彼はそのせいで女の子にもてないといつもぼやいていました。
 そんな彼がつぶやきます。
「ああ、背が高ければもっともてるのに…」

「そんなあなたにはこれをどうぞ!」
「何だよ、お前は」
「自己紹介はショートショートには無駄なので、通りすがりのセールスマンということで」
「それがなに?」
「ともかく、そんなあなたはこれを飲みなさい」
「何これ?」
「背が高くなる薬です」
「本当に?」
「理由などの解説も無駄なので、これで失礼」
 謎の男は去っていきました。
 残された彼は少し頭を傾げてから薬を飲みました。
 するとどうでしょう。
 彼の背がどんどん大きくなっていくではありませんか。
 あっという間に彼の身長は2メートル以上です。
 確かに背は高くなりましたが、ただでさえもてなかった彼にこの長身はあまり意味がありません。
 結果的に、彼が女の子にもてるなんてことはありませんでした。

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