カシマの幽霊 |
1979年から全国の子供をおびやかして猛威を奮った風説「口裂け女」を初めて聞いた時、「ああ、またか」と思った。小学生の時、似たような風説事件があったからである。 1970年代初めに流行ったこの風説を知っている人は、ほとんどいないと思う。 当時、新潟県の上越市内の小・中学生の間ではかなりの評判になり、地方新聞にも否定記事が載った記憶があるので、ある程度の拡がりはあったはずである。ただ、「口裂け女」の話を聞いた時、下越(新潟市)出身の知りあいに「カシマの幽霊」の話を知っているかと聞いてみたが、返事は否であった。 ![]() 「カシマの幽霊」とは、鎌を持った、片足のお婆さんの幽霊である。 幽霊とはいえ、昼間でも、独りでいる時ならどこにでも出現するというのが、当時の子供心に恐怖であった。いやあ、今なら笑って話せるけど、当時はホントに怖れおののいてたよ(笑)。 「カシマ(鹿島?)」は名前である。幽霊婆さんの名前ではなく、お婆さんを殺した男の名だ。婆さんはカシマという男に片足を切断されて殺されたのだという。 ![]() 婆さんの幽霊は、すでに述べたように、対象が独りの時なら時間に関係無く現われる。そして、まず、名前を聞く。対象者が名前を言うと、次に「足は一本か、二本か」と聞くのである。 「一本」と答えれば、持っている鎌で足を一本切られ、「二本」と答えれば二本とも切られてしまうのだ。どっちにしろ、切られちゃうんだよ〜(笑)。 しかし、対処法はちゃんとあった。ひとつは、名前を聞かれたときに、「カシマだ!」と名乗ること。婆さんは自分を殺した男に怯えて消えてしまうという。 そしてもうひとつが、「ポマード」と言うことであった。驚いたことに、「口裂け女」と同じなのだ。「カシマの幽霊」の場合は、婆さんを殺したカシマという男がポマードを使っていたからという。 ![]() 鎌やポマードなど、「口裂け女」との類似点はなんなのだろうか。 「口裂け女」の発信源は岐阜とされており、どちらかというと新潟は「口裂け女」の流行らなかった特異地域らしい。 この2つの話、何か関連があるのか、何冊か「口裂け女」関連の本を読んだが、局所的風説だったと思われる「カシマの幽霊」を引きあいに出している本は皆無であった。 「カシマの幽霊」を未だ覚えている人間がどれくらいいるか分からないが、そのうち、誰かがちゃんと調べてほしいなあ。 |