語る会モニター報告


       「ロシアによるウクライナ侵略戦争」報道
           7つの視点からみた各局ニュース番組
                       
                       2022
年9月10日放送を語る会



   はじめに

 2022 年 2 月 24 日未明、ロシア軍は突如ウクライナへの侵攻を開始した。「迫害を受け、 民族の虐殺に遭っている人々を守るため、ウクライナの非軍事化と非ナチス化を目指す」。 これが侵攻を始めたロシアのプーチン大統領の大義であった。ウクライナ侵攻はそのため の「特別軍事作戦である」とプーチン氏は発言していた。こうして、ロシア軍の攻撃は首都 キエフ(のちにキーウ)をはじめ、ウクライナ第2の都市ハルキウへと拡大していった。
  私たち「放送を語る会」がロシアによるウクライナ侵略戦争に関するテレビ報道のモニタ ーを開始したのは、ロシア軍がウクライナ南部の都市ヘルソンを制圧し、3回目の停戦協議 が行われた翌日の3月8日のことだった。
 今回モニターの対象としたのは、以下の番組である。
  NHK「ニュースウオッチ9」、テレビ朝日系列「報道ステーション」、TBS系列「new s23」(ただし、「news23」については、準備の都合により3月15日からモニター開始) ウィークリー番組としてTBS系列の「報道特集」(土)「サンデーモーニング」(日)。
  モニター終了の期日は5月15日とした。理由は、5月9日のロシア戦勝記念日にプーチ ン大統領が次のステップへ向け、国家総動員を宣言し、より大規模な戦争へ突入する危険も うわさされていたからだ。そこで、私たちは5月9日を一つの区切りとしたのだが、この 日は月曜日で、ウィークリー番組が戦勝記念日に言及するとしても、この週末の放送になる と考え、モニター期間は5月15日(日)までとした。
 今回は、モニターのまとめを「7つの視点」から検証する方法を試みた。すなわち

  視点1 記者やジャーナリストはいつどこから現地の様子を伝えたか…p2
  視点2 目についたのは防衛省関係の出演者の多さ…p3
  視点3 モニター中の出来事で記録にとどめておくべき事項…p6

  視点4 日本の動きはどう伝えられたか …p12
  視点5 「ウクライナは善 ロシアは悪」とする報道姿勢…p17
  視点6 事実を伝えることの重要性(フェイクとファクトの見分け方)…p18
  視点7 調査報道はどの程度あったか …p20
 
以上の視点から検討したのが以下の報告ある。

  視点1 記者やジャーナリストはいつどこから現地の様子を伝えたか
 「はじめに」でも触れたとおり、私たちがモニターを開始したのは「ニュースウオッチ9」 と「報道ステーション」が3月8日から、「news23」は3月15日からだった。したが って、「news23」については、15日より前に現地に記者やジャーナリストがいたかどう か把握していないことをお断りしておく。
 ところで現地に記者やジャーナリストがいることがなぜ大切なのか。それを的確に表現 してくれたのは3月27日の「サンデーモーニング」でのジャーナリスト青木理氏の発言だ った。
  青木氏はこの日、激戦の続くマリウポリに最後まで残り、脱出しながら記事を書いたとい うAP通信の記者たちのルポを引用した。「情報を遮断することで何が起こるか。理由は二 つ、一つは混とんとカオス。何が起きているかわからないので、人々はパニックに陥ってし まう。もう一つは責任逃れ。破壊されたビルや死にゆく子供たちの写真がないと、ロシア軍 はやりたい放題のことをやり、何事もなかったことにしてしまう。だからこそメディアやジ ャーナリズムは大切で、だから私たちは沈黙しない」。
 青木氏はこのルポに感激したと話し、メディアやジャーナリズムの原則は「そこにいて、 きちんと事実を伝えることだ」と強調した。
 「報道特集」の金平茂紀キャスターも、「ジャーナリズムの役割は、事実を客観的な証拠に 基づいて話すことがなによりも大切」と述べている(「報道特集」4月23日)。
 そうしたことを前提にして【付表1】を見ていただきたいのだが、ロシアとウクライナ双 方の外相による会談がトルコで行われた3月10日、「報道ステーション」はフリーのジャ ーナリストによるウクライナからのレポートも放送している。ウクライナ西部の都市チェ ルニウツィから報告したのはフォトジャーナリストの児玉浩宣氏だったが、戦争の後方支 援に励むこの街の人々の様子を紹介したこのレポートは、戦況報道だけでは見えてこない ウクライナを、多角的に知る材料となった。この日、「ニュースウオッチ 9」は、会談が行 われたトルコ・イスタンブールからの報告だけだった。
  3 月14日からの週、「報道ステーション」はメインキャスターの大越健介氏をポーランド に派遣して、そこを拠点に東京のスタジオやウクライナ現地を結ぶ、大規模な中継を実現さ せた。モニター担当者は、リポーターが現地にいることで現地の様子がリアルに伝わってく ると感想を述べている。
 この週、「ニュースウオッチ9」は、ウクライナ西部の都市リビウから14日は田端祐一ヨ ーロッパ総局長、15日は別府正一郎記者と二人の記者が交代で現地の様子を報告した。
  一方、「news23」の須賀川拓記者は16,17日オデッサから、ロシア軍の攻撃に備えて 日々緊張感を増していく現地の様子を伝えていた。
 その後、4月上旬はキーウ近郊での民間人の大量虐殺が問題になり、各社盛んに現地から の報告を送ってきていた時期だったが、「ニュースウオッチ9」に記者が登場したのは4月 14 日で、それまでは自社の記者やジャーナリストによるレポートが、1 回も現地から届け られなかった。
  「news23」キャスター国山ハセン氏がアンカーとなって4月5日はウクライナの隣 国ルーマニアから、翌日からはモルドバに中継拠点を構えて、ウクライナからの情報を伝え 続けていた。「報道ステーション」と共通するのは、大量虐殺が発覚した当初は、フリーの ジャーナリストたちを活用していることだった。詳細は「視点3」に譲るが、彼らの報告か らはその殺害の残虐なさまが生々しく伝わってきた。
  記者やジャーナリストの現地からの報告は、映像だけでは伝えきれない現地の細部にわ たっての情報を私たちに提供してくれている。のみならず、偽情報を質すという重要な役目 も担っている。その本領を発揮したのが、4月23日放送され「報道特集」だった(詳細は 「視点6」)
。 「ニュースウオッチ9」は、5月に入ってからキャスターを現地に送り込んだ。田中正良 キャスターをアンカーに、キーウをはじめ、ウクライナとの国境に近いポーランドの街やフ ランスのパリを拠点として放送した番組は、NHKのヨーロッパ各地の支局を動員した大規 模なもので、中身の濃いものだった(「視点7」に詳述)。しかし、これだけの組織力を持つ NHKが、大量虐殺が明らかになった時期、1か月もの間「ニュースウオッチ9」が、現地か らの中継や記者レポートを取り入れなかったのは物足りなかった。

  視点2 目についたのは防衛省関係の出演者の多さ
 【付表 2】をご覧いただきたい。これは、「報道特集」を除いた各モニター番組にナマ出 演した人たち(オンライン出演も含めて)を一覧表にしたものである。ここには、小泉悠氏 (東京大学先端科学技術研究センター専任講師)、東野篤子氏(筑波大学教授)、廣瀬陽子氏 (慶応義塾大学教授)ら、今回のウクライナ問題で度々コメンテーターとして出演している 人たちも名を連ねている。が、それにも増して防衛省関係の人が多いのが目につくのではな いだろうか。
  「ニュースウオッチ9」の場合、元防衛大臣を筆頭に、元陸上自衛隊東部方面総監、元情 報分析官など実戦に備える部署の人たちまで出演している。
 そうした中で一段と出演回数が多かったのが防衛研究所の研究者たちである。私たちが モニターしたどの番組にも彼らは出演しているが、中でもその出演回数が突出していたの が「報道ステーション」だった。
 そもそも防衛研究所(以下「防衛研」)とはどんな組織なのか。防衛研が2023年研究職職 員採用のため作成したパンフレットには次のようにある。「(防衛研究所は)防衛省のシンク タンクであるとともに、防衛・安全保障に関するわが国唯一の国立の学術研究機関です。日 本の平和、防衛・安全保障に寄与することを目指し、政策研究や国際・地域情勢分析に加え、 法律、経済、歴史、社会など多岐にわたる分野の研究を行っています」とあり、防衛省や自衛隊の幹部職員のための教育機関として、また日本最大の戦史研究機関としても重要な存 在であると説明している。
  その防衛研が、今回なぜ重用されたのか。考えられるのは、彼らが日常的に実際の戦争を 研究の対象としていること、ロシアのウクライナ侵略に特化した情報を提供できることな どにあったのではないか。ただ、その出演についてはメディア側が要請したものだったのか、 防衛省側からの働きかけがあったものなのかは現時点ではわからない。
  また、出演者が兵頭愼治氏、高橋杉雄氏、山添博史氏の3人にほぼ限られ(これに加えて 数回長谷川雄彦氏が出演したことがあるが)、しかも防衛研究所政策研究部長、防衛研究所 政策研究部防衛政策研究室長、防衛研究所地域研究部米欧ロシア研究室主任研究官と要職 にある人たちだったということは留意しておく必要があるであろう。

  では、彼らは番組の中でどのような発言をしていたのか。ここでは最も出演回数の多かっ た「報道ステーション」を中心に見ていくことにする。同番組は9週間にわたるモニター期 間中43日にわたってゲストをスタジオに招いているが、そのうち7割強にあたる32日は 防衛研の人が占めていた。とりわけ、兵頭氏は24日に及ぶ出演回数があり、同番組の準レ ギュラーのような存在だった。
  彼らの発言の一部を紹介すると
 2022 年 3 月 10 日、トルコの仲介でロシア、ウクライナの外相会談が実現した。この日 兵頭氏は「通常外相会談で論点整理がなされ、次の段階に進むものだが今回はそうはならな かった。むしろ、ロシアの主張を一方的にウクライナにのませようとするものだった」と分 析している。
  3 月18日、ロシア軍によって繰り返し行われる無差別攻撃について高橋杉雄氏は次のよ うに解説していた。「その国を支配するには人口1000人に対し200人の兵士や警察官が必 要といわれている。ウクライナの人口4000万人、それを支配するには80万人の兵士や警 察官が必要になる。だとすると、ウクライナ国民の心を折り、自分たちの好むような停戦協 定を押し付けるしか戦争を終わらせることはできない。そのためには、民間人を巻き添えで はなく、積極的にターゲットにして殺傷していくのが、ロシアにとっての現実的な戦い方に なる」。
  高橋氏の言い方は一見冷酷である。が、そこに戦争の本当の姿が見えてくるのではないか。  4 月5日、ブチャでの民間人虐殺のニュースについて、司会者から「これは個人の仕業か、 軍の作戦の一部か」と問われた兵頭氏は「組織的行動と思わざるを得ない。モスクワの高い レベルの指示がないとできないのでは」と述べていた。
  4 月14日、ウクライナ軍はロシア艦隊の旗艦「モスクワ」を攻撃し炎上させた、と発表 した。同日ロシアは「ミサイル巡洋艦モスクワで火災が発生し、弾薬庫が爆発した」と、こ の火災が自損事故であることを強調する談話を発表した。
  高橋杉雄氏はこの日、「どちらも可能性としてある」と発言している。「2000年にロシアの原子力潜水艦がバルト海で爆発して沈没したことがある」との例をあげ、「考えにくいこ とが起こる可能性」もあることを実例で示して見せた。一方で、ロシア側がウクライナの戦 果を認めたくないので、虚偽の情報を流している可能性もあるとも述べている。
  5 月9日ロシア戦勝記念日でのプーチン大統領の演説を聞いた兵頭氏は「演説にはプーチ ン氏の苦悩のようなものが感じられた。理由は、戦況は悪化していくが国内の世論を気にし て国家総動員には踏み切れないからだ。戦闘が長期化すればするほどジレンマは深まって いくだろう」と分析した。
  以上、彼らの発言のごく一部を紹介したが、ここで伝えたかったことは、彼らがあくまで 冷静沈着な分析者の役割に徹しようとしている姿勢についてだった。彼らの発言内容から は、特段偏った主張も世論誘導的な発言も見られず、むしろモニター担当者からは「彼の解 説で今の状況がよく分かった」「防衛省の肩書なので警戒したが、事実に基づく冷静な分析 で信頼できる感じを受けた」などの感想が再三寄せられていた。
  また、「報道ステーション」以外の番組に出演した防衛研の高橋杉雄氏の、次のような発 言もあった。
 4 月17日の「サンデーモーニング」でのこと。司会の関口宏氏は問いかけた。「ロシア国 内から、この戦争をやめようっていう声は大きくならないもんでしょうかね」。それに対す る高橋氏の答え。「戦争が終わるのはそこしかないでしょう。ロシアはそれがわかっている ので、国外からの情報を遮断し、国内にはプロパガンダしか流さない。
  その壁を市民の声なり、ジャーナリズムがどのように越えていくのか。それは武器ではで きないことです。武器ではできないことをメディアとジャーナリズムが果たさなければな らない。そういう戦争だと思います。」 この時のモニター担当者は、高橋氏の答えはまっとうなもので、その姿勢は番組全体に貫 かれていた、と記している。
 以上を総合して、私たちがモニターした番組に限定した場合、防衛研の人々の発言からは 軍事対軍事の対決や軍備増強をあおるような論調は見られなかったことだけは事実として 報告しておく。
  ただし、疑問は残る。「報道ステーション」の防衛研重用の問題である。なぜあれだけの 回数防衛研の人たちを出演させたのか、それは番組の演出上必要なものだったのか。 たとえば、TBS系の番組では「サンデーモーニング」も含めて、折に触れて、ロシアの軍 事・安全保障研究の専門家である小泉悠東大先端研専任講師も起用していることと考え合 わせると、疑問点は数多くあるのだ。
  また、これがきっかけになって、今後ほかの地域で何らかの摩擦が生じた場合、その最新 情報を握っているであろう防衛省や外務省へのメディアの依存度が増え、これらの省庁と メディアが一体化してしまう危険性も心配される。
 そうした懸念を払しょくするためにも、メディアは心してこれらの省との距離をとるこ とに注意を払っていく必要があるだろう。

  視点3モニター中の出来事で記録にとどめておくべき事柄
 1) 3月15日 ロシア国営放送の反乱(月日はどの項目も放送日)
  事件が起こったのは、14日ロシア国営放送のニュース番組が放送されているさなかだ った。ニュースを伝え続けている女性アナウンサーの後ろに突如紙を抱えた女性が現れ、そ の紙を広げたのだ。そこには「戦争反対」「プロパガンダを信じないで。あなたはだまされ ている」と書かれていた。女性の名はマリーナ・オフシャンニコワ、この放送局で編集業務 に携わっている女性だった。
報道ステーション」は15日、その事実関係を映像で紹介するとともに、事前に彼女が ビデオメッセージとしてSNSに投稿した全文を紹介した。
 メッセージは「今ウクライナで起きていることは犯罪。ロシアは侵略国で、その責任はプ ーチンに。テレビを通じウソを伝え、人々が騙されるのを許した自分を恥じている」といっ た言葉で始まり、最後は「暴挙を止められるのは私たちだけ。抗議集会に行こう、恐れずに」 と結んでいた。
  この日スタジオ出演した防衛研究所の兵頭愼治氏は「メディアで働く人たちの、今のロシ アの報道規制への強い批判」としたうえで「情報統制にたいするロシア国民の反発は今後強 まるのではないか」との見通しを語った。
  「ニュースウオッチ9」は事実関係を一通り紹介した後、田中キャスターの感想として「こ うした一人一人の声がプーチン大統領を孤立させ、追い詰めていくことになると思う」と、 この女性の行動を評価する感想を述べていた。
 「news23」は、この女性が抗議行動の後警察に連行された様子も伝え、一方で、ロシ ア教育省公開の映像として、歴史家たちが子供に「ウクライナ侵攻はフェイクニュース」と 強調し、この動画が学校の授業に使われていると報道した。
 短い時間の報道ではあったが、いまのロシアがおかれた言論統制の状況が明らかになる 企画だった。
 なお、「報道ステーション」はその後オフシャンニコワ氏の単独インタビューに成功、3月 22 日その肉声を伝えた。その中で彼女は「局内でも『裏切者、イギリスのスパイ』といわ れたのはショックだった」と述べる一方、自分は「真の愛国者」であると強調した。この談 話をスタジオで引き取った大越キャスターの「情報統制が一日も早く解除されることを願 っている」とのコメントに、モニター担当者は、ロシアの言論統制に対するジャーナリスト としての危機感が強く感じられたと評価している。
 一方、ウィークリー番組はこの一件をどう扱ったのか。
  3 月20日の「サンデーモーニング」では事実関係のほかに、3月16日彼女が釈放された と伝え、同時にプーチン大統領が、反戦を訴えた国民に対し「裏切者、ハエのように排除す る」と述べた演説の一部を紹介した。が、この件について司会の関口氏は、スタジオ出演者 に発言を求めていなかった。
 また、「報道特集」は19日この件については一切触れず、特集として、ベラルーシのルカシェンコ大統領に金平茂紀キャスターが単独インタビューした その内容について報道した。

  2)3月23日 ウクライナ・ゼレンスキー大統領 日本の国会で演説
 この日ゼレンスキー大統領は開催中の日本の国会にオンラインで参加し「アジアで初め てロシアに圧力をかけはじめたのが日本」だと評価し、「どうかそれを継続してほしい」と 訴えた。
 「ニュースウオッチ9」はこの日演説の概要を紹介するとともに、街の人の声も拾っている。 そのなかでウクライナ料理店の店主は「演説を機に、反戦を世界に訴えてほしい」と発言、 一方ロシア出身で日本に暮らす女性は「ロシア政府は、民間人を殺害しているのはウクライ ナ人だといい続けている」と、ロシアとウクライナでは伝え方が全く違うと訴えた。
  そうした例の一つとして、ウクライナ南部で2000人の市民が催した戦争反対のデモに対 しロシア軍が発砲し、5人がけがをしたという事実を、ロシア国営放送がどう報じたかを紹 介した。それによると、「住民たちはロシア軍を受け入れ、戦闘も起きず治安も安定してい る」と放送しているという。
  この報道の最後、田中キャスターは「日本でも戦時中、大本営発表という、戦争を遂行す るために都合のいい情報が流され、国民は誤った方向へ誘導されてしまいました。悲惨な戦 争を止めるために、情報を見極める力、そのもとになる言論と報道の自由が大切だと感じま す」と結んだ。
  この言葉はジャーナリストが常に心にとどめておかねばならないことであろう。
 23 日「報道ステーション」は演説内容を紹介した後、与野党の感想を聞いている。
 岸田 首相「ロシアへのさらなる経済制裁、ウクライナへの人道支援追加を考える」、立憲・泉健 太代表「難民受け入れにチャーター便も検討を」、共産・志位委員長「経済制裁、非軍事の 復興支援をしっかりやっていく必要がある」、維新・鈴木宗男議員「話し合い解決しかない。 日本政府がその音頭取りを」など各党の主張を伝えた。
  番組では、ゼレンスキー演説の動画は15万人が視聴したと紹介し、大統領の「日本がウ クライナとともに反戦争の立場にあることを期待している」との結びの言葉を使っている。
  この番組のモニター担当者は、ゼレンスキー大統領の言葉は憲法9条を持つ日本への理 解と配慮があったのでは、と推測しているが番組としてそこまで踏み込んでいないことに 物足りなさを感じていた。
  その推測を裏付けるような内容を放送したのは「news23」だった。この日、TBSス ペシャルコメンテーターの星浩氏は「ウクライナは日本国憲法の制約」を理解し、日本は事 前にウクライナに「北方領土と中国に関しては複雑な経緯を持っている」と説明していたよ うだ、と演説の舞台裏で行われていたことを明らかにした。
  3 月26日の「報道特集」では演説の映像は使わなかったが、スタジオのまとめの中で金 平キャスターが、ゼレンスキー大統領の演説に対する山東昭子参議院議長の返礼演説で「閣下が先頭に立ち、貴国の人々が命をも顧みず祖国のために戦っている姿を拝見し、その姿に 感動しております」と述べたことに触れ、「感動している場合だろうか。日本の政治家であ っても、命をささげるような事態にならないよう努めるのが役目ではないか」と批判した。
 なお、27日の「サンデーモーニング」は事実報道のみであった。
  3)4月初旬 キーウ近郊で民間人の大量虐殺死体発見
 4 月4日月曜日、新年度を迎えどの局も新しい陣容で放送に臨んだ初日、トップニュース に据えられたのは、ロシア軍が撤退したキーウ近郊の街ブチャ、ボロディアンカ、イルピン などで、民間人の大量の虐殺死体が発見されたというショッキングなニュースだった。
  「news23」は、4月5日他社に先駆けて悲劇の街の一つボロディアンカから、ジャー ナリスト・伊藤めぐみ氏の現地レポートを伝えた。それによると、彼女がウクライナ当局の 人に案内された地下室には5人の遺体が後ろ手に縛られた状態で折り重なっていたという。 彼らは拷問されたのか、顔や頭部がひどく傷ついていた。
  翌6日、同じくボロディアンカからジャーナリストの綿井健陽氏が「多くの遺体が広範 囲にわたって発見され、住民は怒り心頭に達している」とリポートしている。
  8 日には秋葉聖治記者を含むJNN取材団が、キーウ近郊のホストメリ、ブチャに入った。 ホストメリでは400人の市民が行方不明になっているというし、ブチャでは320人の市民 の死亡が確認されているが、その9割は銃殺によるものだった、と秋葉記者がライブレポ ートで伝えた。
 「報道ステーション」で6日現地からの報告に登場したのは、「news23」と同じジャ ーナリストの綿井健陽氏だった。綿井氏はレポートの中で、住民から「人の家に入ってきて めちゃくちゃにした。家族が拷問され2日間極寒の外に放置されたあと銃殺された」と生々 しい体験をきかされたことを報告した。
  同番組は7日にはジャーナリスト村井祐介氏のボロディアンカ、イルピンでの取材結果 をVTRにまとめて報告している。
  では「ニュースウオッチ9」は同時期、どんな内容の報道をしていたのか。結論から言え ば、「視点1」でふれたように、この時期NHK関連の日本人の取材者は現地にいなかった のだ。
 5 日の報道内容は、アメリカABC放送のニュース番組とニューヨークタイムズの動画を 引用した現地の様子にとどまっていた。6日は、ロシアの独立系世論調査機関レバダセンタ ーのレフ・グドウコフ氏の「ロシア国民は戦争を望んでいなかった。そのためプーチン大統 領は、ウクライナの『非ナチ化』を持ち出し、国民感情に訴えようとした」という談話を紹 介し、以後NHKのウクライナ関係のニュースはキーウ近郊の虐殺関連より、国際社会がい かにロシアを孤立させていこうとしているかに軸足を移していった感がある。
 
  一方、ウィークリー番組では4月9日「報道特集」が特集枠でこの問題を取り上げた。ブチャからはジャーナリストの新田義貴氏が、キーウからは秋葉聖治記者が現地レポートし、 金平キャスターはTBSが単独取材に成功した駐日ロシア大使のガルージン氏へのインタビ ューを伝えた。
 現地の2人から報告される、戦争犯罪ともいうべきロシア軍の数々の行為を引き取る形 で、金平氏はガルージン氏にインタビューしているが、大使は一貫して民間人の犠牲に関す るロシア軍の関与を否定し続けた。
  番組のまとめで金平キャスターは「戦争は人間を狂わせる。早く戦争をやめろ。殺すなと いいたい」と結んだ。
 この番組のモニターを担当したメンバーも「先の大戦でもいつの間に か国中が熱狂し、悲惨な結末を迎えたことを忘れてはならない」と感想を述べている。
  ロシアはこの一連の大量虐殺について「これはウクライナによるフェイクニュースだ」と 言い続けていた。この問題は「視点6」で取り上げるので、ここではこの程度にとどめてお く。

 4)4月21日 マリウポリ攻防でプーチン大統領勝利宣言
 ロシア軍の猛攻が続くウクライナ南部の港湾都市マリウポリ。その攻防をめぐって、プー チン大統領は21日、突如「ロシア軍はマリウポリで勝利した」との勝利宣言を発した。
  モニター対象とした3番組とも、その事実を報じるとともに、識者の見解として「プーチ ン大統領は、マリウポリの最後の拠点アゾフスターリ製鉄所で抵抗するウクライナ兵を、兵 糧攻めにしようとしている」と伝えた。この点では3番組とも同様の見解を報じている。た だ、番組構成を見ると、かなり様相が違っていた。
  この日「報道ステーション」はプーチン大統領の勝利宣言の模様を詳しく紹介した後、ア メリカメディアの反応やウクライナ市民の反応を、中継を交えて伝え、ヨーロッパでの受け 止め方をロンドンの大平一郎支局長とネットで結んで聞いている。
 一方「news23」はこの日の事実関係に加えて、マリウポリの戦闘に投入されているロ シア軍は、ロシア正規軍に加えて、チェチェン共和国のカディロフ部隊が参戦していると伝 えた。スタジオ出演の慶応大学教授廣瀬陽子氏によると、この部隊はチェチェンのムザン・ カディロフ首長が率いる私兵で、その残忍性で知られているという。「プーチン氏はカディ ロフ氏が汚れ役をやってくれるので便利な存在だ」と廣瀬氏は言う。
  同時にこの日の放送では、日本企業に就職が内定していたロシア人男性が突如内定を取 り消された話、世界3大音楽コンクールの中でも特にその名が高い「チャイコフスキー国 際ピアノコンクール」から、世界連盟がロシア人を除外したこと、ウィンブルドン選手権主 催者がロシアとベラルーシの選手の参加を認めないことにしたことなど、ロシア侵攻の余 波が戦争とは無関係の分野にまで及んでいることを伝えていた。
  「ニュースウオッチ9」も一連の経緯を伝えたことに変わりないが、それに続けて、前日 開かれたG20の閣僚級会合で、ロシア代表が発言しようとした際、参加者が一斉に退場し、 最終的に共同声明が採択できなかったことを伝えている。
 さらに重要なことは、この日自民党が安全保障政策を提言し、「敵のミサイル攻撃などを 破壊する能力を保有し、名称を『敵基地攻撃能力』から『反撃能力』に変更する」としたと 報じたことである。同放送は、これに対して賛成の立場から拓殖大学教授佐藤丙午氏、反対 の立場から流通経済大学教授植村秀樹氏らの談話も伝えている(「 視点4」で詳述)。
 ウクライナ情勢を伝えることはもちろん大切である。が、同時に国内の動きを伝えること も日本の放送局としては細かく気を配る必要があるだろう。ちなみに、この日「報道ステー ション」と「news23」はこの事実を伝えていなかった。
 
  ウィークリー番組は「勝利宣言」をどう伝えたのだろう。
 4 月23日の「報道特集」は、マリウポリの攻防戦を情報戦の観点から特集している。 そのなかで、ロシアがしきりに使う「ネオナチ」の正体がアゾフ連隊のことだと明かして いる。
 マリウポリの最後の拠点となったアゾフスターリ製鉄所を守るアゾフ連隊は、ロシアが クリミア半島に侵攻した際、ウクライナの祖国防衛の民兵部隊として結成されたもので、そ の創設者が極右主義だったことから、西側の一部からもネオナチとの関係を指摘されたこ ともあった。ロシアはこれを利用し、第 2 次大戦の際ナチズムからロシアを解放したこと になぞらえて、アゾフ連隊に批判の矛先を向け、「ネオナチからの解放」という大義名分を 作り上げたというのだ。
 この日の放送で金平キャスターはネットを通じてアゾフ連隊の司令官へのインタビュー を実現している。
   金 平 アゾフ連隊のことをネオナチズムの象徴だとして非難していますけど。
   司令官 ロシアと違って他国に侵攻したこともないし、他国の政治に干渉したこともな い。    金 平 アゾフ連隊が極右団体だというのはフェイクニュースだと思ってるんですね。
   司令官 もちろんロシアの真っ赤なウソ。今ナチズム体現者はプーチンただ一人だ。
 このインタビューは時宜を得たものといえるだろう。
 
 「サンデーモーニング」は4月24日にプーチンの勝利宣言を取り上げたが、同時にマリ ウポリ郊外に無数の穴が掘られているとの衛星写真を提示した。市内から遺体を納めた袋 が次々と車に積み込まれる風景と合わせて、マリウポリ市議会の「ロシアが遺体を埋めて、 戦争犯罪を隠蔽しようとしているのではないか」との見解を伝えている。
  デイリー番組は速報を要求されるが、ウィークリー番組は調査報道などを加えて事実を より深く伝えられる利点がある。この 1 件に関する報道の仕方の違いは、それぞれの特徴 をよく表した例といえるのではないか。
 5)5月9日 第77回ロシア戦勝記念日
 5 月9日はロシアにとってとりわけ重要な日である。いまから77年前の1945年のこの 日、第2次世界大戦で当時のソ連がドイツに勝利した日だからだ。以来国名がロシアに変 わっても、この日はナチスドイツに打ち勝った日として、大規模な軍事パレードを中心とし た国威発揚の場として受け継がれてきた。
  ちなみに、今回のウクライナ侵略に際し、他国との識別に使われているロシアの軍用車な どに記された「Z」という文字は、77年を記念して77の一方を逆さにして組み合わせたデ ザインだといわれている。
  ウクライナ侵略の最中に行われた今年の「戦勝記念日」、巷間伝えられていたのは、プー チン大統領はマリウポリで勝利し、東部ドンバス地方を制圧して、一層の国威発揚を促すこ とを目論んでいるということだった。だが、実際には勝利宣言は発したものの、マリウポリ では依然アゾフスターリ製鉄所の攻防が続いており、東部2州の制圧は程遠い状態にある 中で、この日を迎えることになった。
  「ニュースウオッチ」「報道ステーション」「news23」の3番組は、いずれもスタジオ のメインキャスターと現地モスクワからの中継映像を結ぶことを基本としていた。さらに 「報道ステーション」「news23」は、ウクライナからの現地レポートを加えていた。
 モスクワからの報告はいずれもパレードのみならず現在のロシアに否定的な発言だった が、この日の番組構成は、さらにロシアへの批判的な事例からなりたっていた。
  「news23」はパレード関連のニュースに続けて、チョルノーボリ(チェルノブイリ) 原発を単独取材した結果を報じている。原発には‟赤い森“とよばれる汚染エリアがあるが、 極めて高い放射線量が記録されているこの地で、ロシア兵たちが塹壕を掘らされたという のだ。当然兵士たちの中には、重度の放射線障害を負ったものがいるはずだ。取材にあたっ た須賀川拓記者は、「捨て駒のように扱われた兵士がいたことも否定できない」と伝えてき た。
  「ニュースウオッチ9」は、ウクライナのクレバ外相とのオンラインでの単独インタビ ューの模様を伝えた。インタビューの中でクレバ氏は「プーチン氏は、スターリン氏が1940 年代にしたように、ナチズムとの戦いという彼自身の世界に生きている。しかし、それはつ くられたもので、現実と一致していない。ウクライナにネオナチなどいない。だが、我々に 勝利以外の選択肢はない。この戦争に負ければウクライナはなくなる」と強い調子で言い切 った。
  これに対し「報道ステーション」は、キーウからの報告にあたった大平一郎ロンドン支局 長が「プーチン氏が演説の中で一度もウクライナという言葉を口にしなかったことに現地 メディアは注目している」として、「それは存在そのものを消そうとしているからだとウク ライナメディアは批判している」と述べた。そして「ウクライナ市民も冷めた目で見ている ことが印象的だった」と感想を語っていた。
  一方、5月15日の「サンデーモーニング」は、パレードの最中沿道で戦争反対のプラカ ードを掲げた人がいたことや、身の危険を顧みず、プーチン大統領を糾弾する記事を書いた 新聞記者など、ロシア国内で巻き起こる反戦の動きに重点を置いていて報道した。 これに ついて出演した小泉悠氏は「国民の声がこれからどれだけプーチン大統領に向かって上が っていくか、楽観はしていないが期待している」と述べている。
  また、寺島実郎氏は次のように発言した。「プーチン氏がやろうとしていることは、共産 主義への共感を捨てて、ロシア正教による宗教大国を目指すという統治概念。ロシア正教は 民族宗教としてロシア愛国主義につながる極端な排他主義と自己正当化を持っている。欧 米の論壇はこの状況を、80 年前の日本と似ているとみている。日本も神の国、日本を中心 にアジアをまとめていこうという思い込みが強かった。本人は大まじめだが外から見ると 狂気の沙汰。だとすると、ここは腹をくくって、しばらくはこのゲームに付き合うしかない のではないか」。
  この日のスタジオは出演者がそれぞれロシア人の内面にまで踏み込んだ発言を繰り広げ, モニター担当者は、淡々と戦況分析を語りがちなNHKより、視聴者に多角的な視点でウク ライナ侵攻を考えるヒントを与えたのではないかと評価している。
  「報道特集」(5月14日)は戦勝記念日には一切触れなかったものの、欧米各国からの武 器援助で、ウクライナ軍が攻勢に転じている戦況について伝えた。ただ、スタジオのまとめ では、武器の供与は戦闘継続の支援をすることにつながるので、むしろどうしたら停戦に持 ち込めるのかを、日本から提案できないものかと問題提起していた。

   視点4 日本の動きはどう伝えられたか
 1) 日本の安全保障をめぐって
 ロシアのウクライナ侵略を受けて、「報道ステーション」は日本の安全保障について国 民がどう受け止めているのか、独自の世論調査を行い、その結果を3月21日公表した。そ れによると、「日本の安全が脅かされる脅威は増したと思うか」という設問に対して79%の 人が「高まった」と答え、「高まってはいない」と答えた人の11%を大幅に上回った。また、 自民党の政調部会などで議論されている「核共有の議論」については、議論の必要ありと答 えた人53%が、必要なし37%を上回っている。
  当該番組はこれ以上細かく世論調査について伝えていないので、詳細は不明であるが、 ロシアのウクライナ侵略をきっかけに人々の意識が変わり始めているのではないかとの傾 向はみてとれる。
 一方、「ニュースウオッチ9」は、4月4日独自の企画として「今考える日本の安全保障」 を特集した。
 番組では、この番組のキャスターを務める田中正良氏が与那国島まで出向いて取材して いる。与那国島は日本の最西端にあって、中国の主張する第1列島線上にある。番組では住民たちの「自分たちの近い将来の模擬戦を見ているような感覚」「ロシアだけでなく、中国 も心配」という声を取り上げている。
 これを受けて、3人の専門家に抑止力のあり方について聞いた。 元防衛相だった森本敏氏は、相手が手出しできないように、抑止機能としての反撃力を持 つ必要性を強調し、早稲田大学大学院の植木千可子教授は、軍事だけでは戦争は止められな いと主張し、情報を共有することで相手側にも利益をもたらすことをわからせる必要があ ると自説を述べた。これに対し、サイバーセキュリティ―の研究者である慶応義塾大学大学 院の土屋大洋教授は、サイバー攻撃の危険性が増しているとして、その監視を怠ってはなら ないと警告した。
 以上 2 つの番組は日本の安全保障問題について考える手掛かりを与えた ものであったが、具体的にどうすべきかなどの議論にまでは踏み込んでいない。
  そんな中、自民党は4月21日、敵のミサイル攻撃などに「反撃する能力」を保有すべき とする安全保障政策の提言を発表した。それまで「敵基地攻撃能力」としていた表現を、「反 撃能力」に改めた提言だった。
 「ニュースウオッチ9」はこの日、この問題を専守防衛との関係から、識者や党関係者の 声を紹介した。 自民党案に賛成する佐藤丙午拓殖大学教授が、「日本への攻撃は割が合わないと相手が判 断するだけの攻撃力を持つことが抑止力につながる」と述べたのに対し、植村秀樹流通経済 大学教授は「この構想は抑止力を超えて、憲法改正に等しいほどの大問題だ」と反論した。 一方立憲民主党の小川政調会長は「非常に軽率で、挑発的すぎる」との見解を表明、公明党 は「ミサイル技術の進化で敵基地の概念も変わってきている」として「現実に相応しい名称 を考えよ」と、提案の内容には触れない談話を発表した。
  番組は「日本の安全保障政策に大きく影響する議論。参院選の後本格化する見通し」と結 んでいるが、専守防衛とはどの範囲までを言うのかなど、もう少し掘り下げた報道が必要だ ったのではないか。
  一方、先にも述べたように「報道ステーション」と「news23」は21日この問題を取 り上げなかった。
  ウィークリー番組では4月24日の「サンデーモーニング」が「1週間の動き」のコーナ ーで扱ったが、この時コメントを求められた青木理氏は、「そんなに戦争がしたいんですか」 と疑問を投げかけた。そして「武器輸出三原則」を「防衛装備移転」と言い換え「共謀罪」 を「テロ等準備罪」としたことなどの例に挙げ、「言葉を置き換えて、本質をそらしてごま かそうとする発想」と指摘。「中枢を攻撃するということは、先制攻撃以外の何物でもない。 専守防衛という戦後の防衛体制、安全保障体制を根本的に変えることになるがそれでいい のか」と力を込めて言った。近隣諸国との友好関係には消極的だが、防衛力に関しては前の めりになる政府自民党の姿勢が、青木氏には「戦争をしたがっている」と映ったのだ。
  この問題に正面から取り組んだのが「報道特集」(5月7日放送)の「『反撃能力』と『核 13 シェア』専守防衛との整合性が問われている」だった。
  今回の提案策定に参加した自民党の宮沢博行衆議院議員は「この案は、相手側の国民の命 を奪う能力を意味するのではない」と強調していた。これに対し自民党長老の古賀誠氏は 「(敵基地攻撃能力を反撃能力と言い換えたとしても)専守防衛を逸脱したもので、やって はいけない」と反論する。
  また、羽場久美子青山学院大学名誉教授は、攻撃能力を高めることは相手側の能力も高め ることにつながるとして、今回のロシアの侵略行為の背景には、NATOの東方への拡大が 招いた国境の緊張も関係していると述べた。同様に「日本の軍備拡張は東アジアの緊張を強 い、アジア人同士の戦闘の可能性を生む」と、自民党案への懸念を表明した。
  一方、沖縄の元核ミサイル発射場を取材した日下部キャスターは、「ミサイル基地は攻撃 の拠点であると同時に、相手からの攻撃目標になるということを、地元民に知らせないまま 基地づくりが行われたことを我々は忘れてはならないだろう」と感想を述べている。
 「報道特集」がこの日この問題に費やしたのはおよそ30分、わが国安全保障はどうある べきかを考えるうえで、重要な問題を提起した優れた調査報道だった。
 なお、5月1日放送の「サンデーモーニング」で、フォトジャーナリストの安田奈津紀氏 が「(核使用も辞さずとする)プーチン氏への歯止めをかけることはもちろん必要だが、同 時に日本を含め、核シェア、核共有など聞こえのいい言葉とともに、核廃絶とは逆の方向に 進もうとしていることは問題だ」と「核共有」を批判していたことを付け加えておく。
  プーチン大統領が脅し文句のように核使用もありうるとの発言を繰り返している今こそ、 メディアは冷静な立場で核問題を考えることが必要なのではないか。
  2) 難民と避難民
 4 月5日、ポーランド訪問から帰国した林外務大臣の政府専用機(予備機)を使って、 20 人のポーランド人が日本に避難してきた。
  この日「ニュースウオッチ 9」は事実報道に続けて、立教大学・長有紀枝(おさゆきえ) 教授の「地元で活動する国際協力系の団体や学校と連携して町ぐるみの支援が必要だ」とい う談話を紹介している。
  「報道ステーション」は、150人乗れる飛行機になぜ20人しか乗せなかったのかを政府に 問うている。この問題に関して林外相は「ポーランドにあるウクライナ大使館に申し出のあ った人たちのうち、渡航費調達が困難な人に絞ったため」と答えている。6分ほどの長さの ニュースの中で、日本人と結婚したポーランド女性が今回の受け入れ窓口になっているな ど、受け入れ先の問題なども丁寧に報じていた。
  「news23」が取り上げたのは、今回の受け入れ人数についての裏話だった。この時の ポーランド行きは当初法務省の担当で現地には古川法務大臣が赴くはずだった。ところが 法相がコロナに感染して、急遽林外相が代行することになったため、人数などの調整がうま くいかなかったというのだ。ただし、政府は今後受け入れ人数を拡大していきたいとのコメントも添えられていた。
  この1件を「『難民』と『避難民』」という根本的な問題としてとらえようとしたのが「サ ンデーモーニング」だった。
 4 月10日、同番組は手作りのボードを使って、まず「避難民」と「難民」の定義から始 めた。それによると、「難民」は自国の政府から迫害を受けて国外に逃れた人のことで、ミ ャンマーやアフガニスタンが該当し、難民に認定されると、日本での就職や健康保険の適用 が可能になると解説した
 一方、ウクライナの場合は自国からの迫害ではないので、難民には当たらず、今回はあく まで人道上の特例措置として、「避難民」として受け入れたというのだ。
  この問題について、出席者の一人、フォトジャーナリストの安田菜津紀氏は、国際基準か らみて日本は「難民条約」を狭く解釈しすぎており、人命に対する配慮がなされていないと 政府を批判した。
  難民問題を別の角度から問題提起したのは、4月2日の「報道特集」だった。この日、同 番組では特集の形で「ミャンマークーデターから1年」を放送した。
  ミャンマーは依然内戦状態が続いており、市民は民主的な国家を取り戻そうと軍部に抵 抗を続けている。その中で、前線で戦う元看護士の女性の声を取り上げている。彼女は「い ま世界の眼がウクライナに集まっている。しかし、私たちは見られていない。自分たちの力 で生きていくしかない」と訴えた。
  モニター担当者は、「クーデターから1年経過したミャンマーを特集したTBSの見識、 および報道特集のマスコミ人としての矜持に共感する」と書いている。たしかに、いま世間 の耳目はウクライナに向いている。しかし、ウクライナよりはるかに日本に近いミャンマー やアフガニスタンで、ウクライナと同様の境遇にある人々が多数いることを、メディアはも っと報じる必要があるのではないだろうか。
   3) 日本における反戦運動
 ウクライナ侵攻が始まった直後、東京・渋谷で在日のルーマニア人やロシア人に日本人も 加わって戦争反対のデモが繰り広げられたニュースが報じられたが、モニターが始まって からは、これに類する動きが番組に登場することはほとんどなかった。そんな中で「new s23」が扱ったいくつかを紹介しておく.
 3 月24日 世界中のアーティストが反戦を訴えたとして、MISIAさんがコンサートで平 和への願いを聴衆に語り掛け、反戦歌「花はどこへ行った」を熱唱した、と報じた。
  4 月12日 「newstories」のなかで、柔道家の山下泰裕氏が、プーチン大統 領を「全く別人みたい。柔道家のイメージを重ねるのは無理がある」と批判したと報じてい た。山下氏は自身のホームページでも、ロシアのウクライナ侵攻を批判する声明を出して、 「柔道の精神、目的に完全に反するもの、まったく容認することはできません」と訴えた。
 同じ日、歌手のマドンナさんが自身のTwitterに#STAND UP for UKURAINAをつけ、 息子とともにエルトン・ジョンの名曲を弾き語りで披露し、曲の最後には「ウクライナへの 資金援助や人道的努力を支援するため立ち上がろう」と呼びかけたという。このニュースを 受ける形で、当日の番組は日本でも支援の動きがあるとして、福岡の日本経済大学でウクラ イナから避難してきた学生61人を迎えて入学式が行われた様子を伝えている。
  ウクライナ関連では、日本に避難してきた人たちを、日本人が温かく迎え入れているニュ ースは多いが、反戦運動という形での捉え方はメディアに希薄な気がする。
  4) ウクライナ侵略を歴史に重ねてみること
 
ウクライナ侵略戦争の報道の大半は、戦況報道に充てられてきた。日々変わる戦況を正確 に伝えることは必要である。しかし、ともするとそれは「勝った負けた」「とった取られた」 のゲーム感覚で報じられることが多いように思う。
  だが、戦争の真の姿はそんなところにあるのではないとして、それをかつて日本がかかわ った戦争に重ね合わせながら伝えようとした人たちもいることを、私たちは心に留めてお く必要があるのではないか。
 すでに紹介したが、「ニュースウオッチ9」(3月23日)で田中正良キャスターが、今回 のロシアの報道規制について、「まるで戦時中の日本の大本営発表のようだ」と発言した件 (p7)、「サンデーモーニング」(5月15日)で、寺島実郎氏が「欧米各国はいまのロシア の態度を80 年前の第2次大戦開戦時の日本に重ねてみている」と発言した件(p12に詳 述)などがあげられる。
 ここではさらに、3月20日「サンデーモーニング」のなかでの田中優子氏の発言を紹介 しておく。
  「私が懸念しているのは戦争の長期化、エスカレート化。ベトナム戦争は終結するまでに 12 年を要した。今回似ていると思うのは日本の場合。満州国建国を宣言し、国際連盟を脱 退した日本は戦域をどんどん拡大していって、14 年の歳月を経てようやく終戦に至った。 今回もロシア、ウクライナの 2 国間だけの問題としてとらえるのではなく、世界の問題と して考えるべきである」。
  わたしたちは今のウクライナでの出来事を、とかく対岸の火事として捉えがちである。だ が、日本の歴史と重ねてみると、第 2 次世界大戦における日本軍の行動と似通った部分が 多いことに気付くはずである。それも加害者としての国の姿として。
 無差別爆撃、民間人の虐殺、占領地のロシア化、それはどれひとつとっても許されない行 為である。しかし、日本が戦時中中国や朝鮮で行ったことの中には、今のロシアの行為に似 た例がいくつもあったのだ。
  いまロシア国中を支配している厳しい言論統制もそうだ。田中キャスターの言葉にもあ ったように、戦時中の日本のメディアは、軍の命令のままにしか国民に情報を提供すること ができなかった。
 そうした意味からも、メディアはこの戦争を一面的に捉えるのではなく、歴史的にも検証 していく視点を持つ必要があるのではないだろうか。

  視点5 「ウクライナは善 ロシアは悪」とする報道姿勢
 2022 年2月24日、ロシアは突如ウクライナに侵攻を開始した。「ネオナチに苦しめられ ている同胞を解放するための特別軍事作戦である」というのが、プーチン大統領の言い分で あった。が、プーチン大統領がウクライナのロシア化を画策していることは明らかだった。
  くわえて、4 月上旬ロシア軍がキーウから撤退した後に発見された民間人虐殺の痕跡の 数々は、ロシア軍による戦争犯罪として弾劾されるまでに至り、「ロシアは罪もない人々を 苦しめている悪の権化」との評価は国際的に認知された形になった。
  半面、一方的に攻められ、街を破壊され人命を奪われ続けるウクライナへの同情は日を追 うにしたがって高まっていった。こうして、「ウクライナは善 ロシアは悪」とする認識は 世界共通のものになり、メディアの論調もその姿勢では一般と変わらないものが多かった。
  だが、その余波は日本でも思いもよらない形で現れた。4月14日「news23」は、JR 恵比寿駅でロシア語の案内表示だけが「調整中」となったことを報じた。結果的にJRはこ の処置を撤回したというが、インタビューを受けた若者 2 人は「わざわざ調整中とする方 が気持ち悪い」と発言している。
 この時のモニター担当者は、関西でもあるホテルがロシア 人とベラルーシ人の宿泊を断った例があるとして、ロシア人=悪という構図がつくられて いくことへの危うさを記していた。 モニター番組でこの問題を正面から取り上げたのは、ウィークリー番組だった。
 4 月10日「サンデーモーニング」に出演した姜尚中氏は「プーチンが悪いのは誰でもわ かるが、なぜこの戦争が起きたのか、背景をしっかり理解することが必要だ」と発言した。 この日続いて発言した青木理氏は「今回のプーチン氏の行為は決して許されるものでは ない蛮行で、戦争犯罪だ。ロシアを追い詰めることも必要だ。しかし、一方でアメリカをは じめとする各国の指導者はロシアを批判して追放するだけでいいのか。戦争を止めさせる 外交をしないといけないのではないか。ある意味人気取りのような施策ではなく、もう一歩 踏み込んだ外交努力が必要なのではないか」と、欧米諸国の態度についても苦言を呈した。
  この点、「報道特集」は一貫して皮相的な善悪論を避け、調査報道に基づいた善悪論を展 開しようとしていた。 4 月16日同番組は、この問題を深く考えさせる特集「政府に立ち向かうロシア人たち」 を放送した。
  一つは、ロシア政府の圧力で活動休止に追い込まれたロシアの独立系放送局「ドシチ」の ドキュメント。この放送局のキャスターを務め、現在はパリに脱出したデニス氏に金平キャ スターがオンラインインタビューしている。彼は最後の放送で「大統領閣下を怒らせたくはないが、無実の人々を殺すために生きているのではない」と発言した人で、インタビューし た時点ではフランスの公共ラジオ局に所属して、ロシアによる戦争の真実を伝えようとし ていた。
  もう一つの例は、ロシア国外に移住しているロシアの著名人たちが、ウクライナ侵攻後に 立ち上げたウェブサイト「本当のロシア」についてだった。学者、作家、芸術家、ジャーナ リストらからなるこの集団は、海外でウクライナ支援のための募金活動などを展開してい る。
  そのうちの一人で膳場貴子キャスターのインタビューに応じた作家のボリス・アクーニ ン氏は、「プーチンのロシアと本当のロシアは全く違う。本当のロシアは、ドフトエフスキ ー、トルストイ、チェーホフの世界であり、プーチンの国ではない。プーチンの国はなくな るが、本当のロシアは残る」と断言している。
  このほかにも、芸術作品を通して反戦を訴える大学教授や、日本在住25年になるジャー ナリストが登場するが、26 分を使って構成したこの番組からは、戦況や政局にとらわれな いロシアの真相に迫るものがあった。
  「報道特集」はその後もこの問題を追い続け、4月30日には金平キャスターが、「戦争の 影響は世界中に広まり、とくに弱い立場にある人達は深刻な影響を受けている。一方、戦争 で武器供与は急速に進み、一部の軍需産業の株価は20%ぐらい上がっている」として、我々 はそうした面にもきちんと目を向けなければいけないと発言している。
  また、5月7日には青山学院大学の羽場久美子名誉教授の「今回の侵略の背景にNATO の東方拡大が招いた国境の緊張もある」との主張も取り上げている(「視点3」に詳述)。
  いまや、ウィンブルドンテニス大会やチャイコフスキーピアノコンクールからのロシア 人排除(4月21日「「news23」)など、過剰とも思える「ロシア排除」が国際的に進ん でいる。それは正しい判断なのだろうか。
  「いわれなき差別」を生まないためにも、メディアは皮相にとらわれず、その善悪を多角的 に捉えて報道していくことを求められているのではないだろうか。

   視点6 事実を伝えることの重要性(フェイクとファクトの見分け方)
 
4 月初め、キーウ近郊の都市で次々と明らかになった民間人虐殺事件。この時ロシア政府 は一貫して「これはウクライナがロシアをおとしめるための罠で、ウクライナが捏造したも のだ」、つまりフェイクニュースであると主張し続けた。
 これに対し、4月5日には「ニュースウオッチ9」「news23」はニューヨークタイム ズ(NYT)が公表した事実をもとに、「ロシア側の発言こそフェイクである」と証拠を示し ながら発信した。NYTが使った手法は衛星画像だった。3月19日に撮影されたとするその 衛星画像には、道路上に点々と11の黒い点が映っている。この黒点は、のちに明らかにな ったブチャでの遺体発見の場所や位置、それに数が一致していたというのだ。3月19日は 18 まだロシア軍がこの地を占領している最中であった。
 つまり、ウクライナが捏造できる時期 ではなかったのだ。
  これに先立つ3月24日、マリウポリの病院がミサイル攻撃を受けた。4日後の28日、無 数の穴が開いている衛星画像が公開された。ロシア側はこの時期、攻撃対象は軍用施設のみ、 と発表していた。だが、現実には多くの民間施設がすでに攻撃対象になっていたことが見て 取れるのだ。
  この映像を放送したのは4月3日の「サンデーモーニング」だった。同番組によると、映 像を公開したのはアメリカの衛星運用会社マクサー・テクノロジーズで、無償でこの種の映 像を提供しているという。その中には、ロシア軍の攻撃で多くの子供たちが犠牲になったマ リウポリの劇場の映像もあったが、劇場の周囲には空からもわかるよう、ロシア語で「こど もたち」と書かれていた。
  さらに、この日「サンデーモーニング」は「スターリンク」という新しいSNSのシステ ムを紹介した。今回の戦争は情報戦争ともいわれ、ロシア、ウクライナとも情報の収集や発 信、はてはフェイクニュースの発信まで多くの手段を新たなメディアに頼っている。スター リンクは、アメリカの資産家イーロン・マスク氏が経営するスペース X 社が手掛けるこれ までにないシステムで、宇宙空間に2000個の衛星を並べ、衛星が見えるところなら、地球 上どこからでも通信可能だという。しかも、その軌道が高度500kmにあるため、ロシア側 も手を出すことができない。マスク氏から無償提供を受けたウクライナは、このシステムを 使って強固な通信網を構築しているという。
  だが、こうした高度なシステムを使わなくても、ファクトかフェイクかを見分けることが 可能であるという例を示したのは、4月14日の「ニュースウオッチ9」の「ウクライナの 情報発信戦略」だった。
  この戦略は「インターネットアーミー」と呼ばれる市民によるSNS情報戦。インスタグ ラムを使って動画を配信するグループで、とくに世界中の政府や議会の人たちにウクライ ナの現状を知ってもらおうと、その発信先を増やすことに力を注いでいる。いまは世界中で 30 万人の人たちが参加しているという。
  スタジオの田中正良キャスターは、「ロシアの理不尽な侵略を受けるウクライナの人たち にとって、情報戦こそが国際的世論を味方につけ、犠牲を少なくする武器になっている」 と結んでいる。
 一方ロシアは情報統制を一層厳しくし、いまや政府のプロパガンダ以外国民の目に触れ ることはできなくなっている。その規制の網をかいくぐって、情報を提供しようとするSNS があることが、5月10日の「ニュースウオッチ9」で紹介された。VPN(バーチャル・プ ライベート・ネットワーク)というシステムで、ウクライナ侵攻後、ロシア国内での利用者 は侵略前の8倍に増えているという。
  以上紹介してきたのは、真実を知るためにハードが重要になっていることを報じたもの である。しかし、真実を伝えるために必要なのは記者のもたらす確実な情報であるとの立場から、それを番組化したのは「報道特集」だった。
  4 月23日放送の同番組は、記者が惨劇の舞台となったブチャに赴き、ロシアがフェイク と主張する根拠を覆す事実を発見した特集だった。前提としたのは、駐日本ロシア大使がフ ェイクの証拠として示した1枚の写真だった。そこには1体の遺体もなく、大使はこれが 真実だと強調したという。
  そこで、記者は現地の住民をあたった。ロシア侵攻時も現地にとどまり続け、撤退後自ら 遺体の写真を撮り続けたという住民は、3週間前にロシア軍は撤退したが、実際にはそれ以 前から市民の犠牲者はで出始めていたと証言した。さらに、撤退直後に数々の遺体の映像を 自ら撮影し、ウクライナ軍が殺害を企てることは不可能と主張した。
 決定的だったのは、駐日大使が示した写真が、実際に殺害現場となった通りと3㎞も離 れていたことを実証したことだった。こうして大使の証言こそがフェイクであると明らか にしたのだ。
  金平キャスターは、情報戦が主流となっているこの戦争のなかで、「ジャーナリズムの役 割は、事実を客観的な証拠に基づいて示すことが何よりも大切」なことを強調し、「現時点 でロシアの侵攻を正当化することは、あらゆる点で破綻している」と断言した。 ジャーナリストがなぜ現場に立つことが必要なのか、金平氏の言葉の中にその答はある。

   視点7 調査報道はどの程度あったか
 ニュース番組において、独自の視点で世の中の動きをみる企画番組(調査報道)は極めて 重要である。その番組の考え方や主張を公にする機会となるからだ。今回のモニター期間中 そうした報道はどのくらいあっただろうか。
 先鞭をつけたのは4月4日の「ニュースウオッチ9」だった。この日放送した「いま考え る日本の安全保障」は、田中正良キャスターの与那国島取材を素材に加えながら、日本の 安全保障について考えようとする企画だった。詳細は「視点3」に譲るが、この時期はウク ライナのキーウ近郊で発見された民間人大量虐殺をめぐっての報道が主力だっただけに、 日本のこれからの安全保障をどう考えるかを企画として組みこんだことは評価していいだ ろう。 5 月に入ると、ウクライナ関連の戦況報道は極端に少なくなっていた。それに代えて、申 し合せたように各局が本格的に企画番組を放送するようになった。
  「ニュースウオッチ9」は5月3日(火)から6日まで、田中正良キャスターがウクライ ナなどに出向いて、そこを拠点にヨーロッパ各国の支局などと結ぶ形での企画が組まれた。 まず5月3日はウクライナ・キーウの街中で、田中キャスターが現地で実感したことと して、「現地に来てみて、ロシア軍が軍事力では圧倒的に強いことを実感したが、ウクライ ナの人々に徹底抗戦の強い決意を植え付けたという点では、ロシアの意図は裏目に出たというべきではないか」と報告している。
  取材に同行したヨーロッパ総局の田端祐一総局長も「マリウポリの惨状を見て、これが国 連の常任理事国が起こしたことかと愕然とした」と述べ、国際秩序の限界の危うさについて 述べている。
  4 日はポーランドに移動した田中キャスターが、ウクライナとの国境にある町から、ディ レクターたちの取材をもとに、ウクライナからポーランドへ避難してきた人たちの話を VTRにまとめて報告した。
  ひき続き紹介されたのは、「母国を離れたロシア人たち」の実態についてだった。 ここでは、トルコ・イスタンブール支局の佐野圭崇記者がオンラインで、トルコに移動し てきた30万人のロシア人の中には、トルコからロシアに向けて反戦のメッセージを送り続 けているジャーナリストがいることを報告した。
  また、VTRの形で紹介されたジョージアからの佐川ディレクターの報告も、ロシア国内 で反戦運動をしていたものの自由にものが言えなくなったため、ジョージアに逃れてきた 男性の話だった。 これらの報告から、母国を離れて反戦活動をし続けようとしているロシア人たちの強い 意志が伝わってきた。まさに、「プーチンのロシア」ではないロシアの姿を知るための好企 画であった。
  5 日はポーランドのジェシェフを拠点に「ハイブリッド戦争」について伝えた。今回の戦 争は情報工作、サイバー攻撃、通常兵器を組み合わせたハイブリッド戦争だという。
  その実態をリトアニアの戦略コミュニケーション局、エストニアで開かれたNATOのサ イバー防衛演習に取材し、VTRの形で紹介した。
 続いて、田中キャスターは田端祐一ヨーロッパ総局長とヨーロッパ全体の安全保障の今 後について話し合っている。田端氏はこの中で、西ヨーロッパ各国はいま異常な緊張を強い られており、平和と安定を守るためには、米国を中心としたNATOの連係が一層求められ ると述べている。加えてこれまでNATOと距離を置いてきた北欧の国々がNATO加盟に 意欲を見せるなど、プーチン大統領が拡大阻止をはかったはずのNATOの結束が、逆に強 固なものになろうとしていると報告した。
  5 月6日田中キャスターはフランスのパリから、ロシアに対する経済制裁の余波につい て、ドイツ・ベルリンの田中顕一記者からの報告を交えて伝えた。 現地で対談の相手になったヨーロッパ総局の有馬嘉男記者は次のように報告している。
  経済制裁はブーメランとなって、いまフランスの市民の上に襲いかかってきている。しかし、 彼らはそれでも制裁は続けるべきだと割り切っている。そこにはウクライナの人たちへの 連帯のメッセージだけでなく、ロシアがヨーロッパの土地に軍靴で押し入ったことに対す る憤りが込められている。「自分たちもヨーロッパを守るためには、相応の負担が必要と考 えている、と私には見える」と有馬記者は感想を述べている。
  田中キャスターはパリで歴史学者・人類学者のエマニュエル・トッド氏にもインタビュ 21 ーしていた。トッド氏は歴史学に人口統計の分析なども取り入れ、ソビエト崩壊やアメリカ の金融危機を予測して世界的に注目を集めた人物だった。
  そのインタビューの中でトッド氏は興味深い発言をしている。それは「ロシアは軍事的に は強大だが、経済的にはぜい弱だと予想していたが、実際には正反対だった」ことだ。「軍 事面では、ロシアは強大でも有能でもなかった。一方経済面で強固だったのは驚きだった」 と語っている。そして、「脱ロシアに舵を切る西側諸国の方が、むしろ苦境に陥るのではな いか」との懸念を表明していた。
  この日をもって、田中キャスターのヨーロッパでの1週間は終わった。NHKヨーロッパ 総局の総力を挙げての取り組みは、その場に相応しい内容と臨場感をもって私たちに伝わ った。これを機に、さらなる企画を実現することを期待したい。

 「報道ステーション」は5月2日から「ウクライナ侵攻が変えた世界」をテーマに3夜 にわたって特集を組んだ。
  初日の5月2日に取り上げたのはドローン。今回の戦争では、ロシア軍に対抗するため の兵器として、トルコ製やウクライナ製の軍事ドローンが多用されているという。この日の 話題の中心として紹介されたのは、ウクライナ市民が作った数千機のドローンが、情報収集 やロシア軍の犯罪行為の証拠集めに至るまで、幅広い分野で活躍している実例だった。
  それだけではない。ドローンは救難用にも使われているという。大越健介キャスターは 「ドローンは無人の殺傷兵器として絶望的な兵器ともいわれている中で、人命救助にも活 躍していることは驚きだ」として、「新しい技術は正しく使うのが人間としてのモラルであ ろう」と感想を述べている。
  ただ、この日のモニター担当者は、ややマニアックな軍事情報満載の番組だったとして、 一般市民の関心を軍事にのみ誘導する危うさがあるのではないかと危惧していた。
  5 月3日に取り上げたのは「‟新たな戦場“SNS戦略」だった。
  ロシア軍侵攻当初、「ウクライナのゼレンスキー大統領は国外に逃亡した」とのニュース が流れた。それを打ち消したのが、侵攻3日目に流れた大統領のツイッター「我々はキーウ にとどまっている」だった。
  大越キャスターのネットインタビューに答えたウクライナのデジタル改革省の副大臣は 「今度の戦争のために、3100人からなるIT部隊を創設し、ウクライナの現状を世界に発信 していく」と述べている。事実、ウクライナはSNSを①国民の士気を高めること、⓶世界 へ向けての支援の要請、③フェイクニュース対策の 3 つの戦略に効果的に使っているとい う。
  「視点6」でも触れたが、SNSはいまや情報戦の必須アイテムになっている。その行きつ く先には何が待ち受けているのか。メディアが取材を続けるにふさわしいテーマであろう。 3 日目の5月4日に放送したのは「戦争で浮彫りになったエネルギー問題」だった。 ドイツは天然ガスの55%、石炭45%、原油34%をロシアから輸入してきた。17年前メルケル首相がプーチン大統領と交わした約束がそのもとになっている。だが、ドイツをふく むEUは、ロシアへの経済制裁の一環として、ロシア産原油輸入を禁止することにした。
  番組では、脱炭素を掲げながら暫定的に石炭発電を復活させざるを得なくなったドイツ の化学工場や、薪を買い込む市民の姿を追っている。いまや、世界の秩序の一角が崩れると、 たちまちその害が世界中に及ぶことを示す好企画であった。
  すべての資源を国外に頼る日本はどうなるのか、次の機会にはぜひ身近な問題をとり上 げてほしい。
 「news23」も5月2日からの週、「地球を笑顔にするWEEK」とのタイトルで、「持 続可能な社会への取り組み」を5夜連続で放送した。ただ、ウクライナ関連の話題を扱った のは1日目と2日目だけで、3日目以降は「スマートフォンや電気自動車に使われている電 池」「子育てを助ける最新アイテム」「シングルマザー支援の新たな形」と、ウクライナ問題 とは関係ないテーマだったので省いた。
  5 月2日に取り上げたのは、戦争で心に傷を負った少年の話だった。
  激戦地となった南部の都市マリウポリに暮らしていたアレクセイ君(7)一家は、ミサイ ルで家を破壊された後、3週間シェルター生活を強いられた。取材したのは、キーウの子供 病院だったが、この時彼は急性ストレス障害の状態にあり、精神的に極めて不安定な状態に あった。この病院には同様の体験をした子供たちが入院しており、医師たちは絵画療法を取 り入れて治療にあたっているという。医師たちは「戦争が長引けば長引くほど、子どもたち の心は壊れていく」と強い危機感を示していた。
  戦争はいたいけな子どもたちをも容赦なく恐怖のどん底へ落としていく。スタジオでこ の話を引き取った井上咲楽TBSSDGsキャンペ-ン大使は、「私たちは直接この子たちに何 もしてあげられないが、こうした事実があることを忘れてはならない」と発言している。
  5 月3日は「ウクライナの避難民を受け入れる側の姿勢」を問題にした。
  福岡県で公演中のサーカス団で舞台に立つイリナさんは、夫をウクライナに残し幼子を抱 えて来日したダンサーである。日本ではサーカス団から住居と食事が提供され、4月末には 就労ビザが取得でき、給料も支払われるようになったという。だが、今の状態がいつまで続 くのか、祖国にはいつ戻れるのか、先行きは見通せない。
  この日ゲスト出演した宮田裕章慶応義塾大学教授は、避難民とともに生きるには未来を 一緒に作っていく覚悟が必要だと強調した。
  日本には、今1700人を超える避難民がウクライナから来日している。日々のニュースで 知る限り、彼らに対して日本人は親切で面倒見が良いようだ。だが、これが長期化した場合 どうなるか。

  以上3局の企画番組についてみてきたが、それぞれの局独自の企画を今後もできるだけ 多く放送してほしい。「だれ一人取り残さない社会の実現のために」というSDGsの精神を実現するための課題は山積している。今後も継続してほしいテーマである。
  日本を中心に据えた場合、ウクライナ侵略戦争をどう見ていかなければならないのか、何 をなすべきなのか、そうした問題にも踏み込んで取材してほしい。今国内では「軍事費 GDP2%」論がしきりに叫ばれている。果たしてその選択は正しいのか。この問題は様々な 角度から検証していく必要があるだろう。メディアの調査報道にはうってつけのテーマで はないか。

  モニター報告の終わりに
 
以上7つの視点から「ウクライナ侵略戦争」報道について検証してきた。この報告書を発 表する 9 月、ウクライナもロシアも長期戦の構えをあらわにするようになっている。結果 的に、我々がモニターした時期は、この戦争が始まった最初の2か月に過ぎなかったのだ。
  だが、侵略初期ということもあってか、当時は各番組とも連日番組の半分以上の時間を使 って、ウクライナ情勢に充てていた。その分、情報の内容は多岐にわたっていたが、それを 整理してみると、数量的に何点か問題点が見えてきたと思う。
 【付表】を基にまとめた「視点1」と「視点2」がそれである。「視点1」でいえば、NHK の動きであった。4月、NHKがキーウに入ったのは11日で、その日のうちに「ニュースウ オッチ9」以外の番組には記者が出演していたという。しかし、「ニュースウオッチ9」に登 場したのは14日で、それまでの期間フリージャーナリストなどの起用もなかった。この時 期、キーウ近郊での民間人の大量虐殺が明らかになっていただけに、現地からの報告は「ニ ュースウオッチ9」にとっても必要な情報だったのではないだろうか。 「視点2」から見えてきたのは、スタジオのゲストに防衛研究所の研究者たちが頻繁に出演 していたことである。しかも、その顔触れは限られていて、その人たちが複数番組を掛け持 ちしている感があった。この人たちに頼らなければウクライナの戦況は語れなかったのか。 この点についても疑問が残る。
  しかし、戦況報道全体としてみれば、各番組とも多角的に報道することを心掛け、ロシア 国内の状況もできるだけ伝えようとしていた。それは「視点3」を参照してほしい。さらに、 各番組ともメインキャスターを現地に派遣して、東京のスタジオと結んでリアルに話をや り取りしたことは、インターネット環境の発達なしにはできなかった新しい報道のあり方 として注目すべきものがあった。
  3 番組の中で、この方式を最初に試みた「報道ステーション」では、3月半ばいち早く大 越キャスターをポーランドに派遣し、彼がいる地点をキーにして連日ウクライナ情勢につ いて東京と結んで放送した。これによって、その時点での現地の動きと、その背景となる問 題点を東京から解説するという重層的な演出が効果を発揮した。同時に現地の人々の暮ら しぶりや考え方についても毎日様々な角度から伝えていたことは、戦況を多角的に知るう えで役に立った。   「news23」が「報道ステーション」同様にキャスターを送り込んだ先は、ルーマニア とモルドバだった。国山ハセンキャスターがルーマニアから中継を開始した4月4日は、 キーウ近郊のブチャやボロディアンカで民間人の大量虐殺が明らかになった日でもあった。 その様子を、現地に入っていたフリージャーナリストによって伝えたのは、モニターした3 番組の中で最も早い対応だった。
  国山キャスター自身は、ウクライナ難民を受け入れる先としてのルーマニアやモルドバ の様子を伝えたが、視点を変えてのウクライナ情勢という点では貴重なレポートだった。 彼はモルドバで親ロシア派の人たちにもインタビューしている。プーチン大統領支持を 当然のこととして語る人たちの声を伝えたことは驚きではあったが、現実をつぶさに伝え たという点で好企画だったのではないか。
  「ニュースウオッチ9」が田中正良キャスターを現地に派遣したのは5月に入ってからだ った。彼は、ウクライナ、ポーランド、フランスと3か国を4日かけてめぐり、その都度現 地の様子を生で伝えた。その内容は、実体験を語っているだけに、臨場感のある中身の濃い レポートになっていた。また日ごとにたてられたテーマは、ヨーロッパがこの戦争によって どのような影響を受け、これからどう進もうとしているかを俯瞰的に捉えた点で、興味深い 内容になっていた。
  こうして3 番組とも、独自の観点から報道に挑んだが、それでも外国放送局のCNN や BBC に比べると、現地取材の度合いは極端に低かった。マリウポリの攻防はそのいい例だ ったろう。ここに日本人ジャーナリストはほとんど近づけなかった。それは国際的な信用度 の差なのか、日本のジャーナリズムの安全基準の問題なのか、関係者の発言を待ちたい。
 また、今回のウクライナ報道では、映像の出処が多岐にわたっている。各番組ともその出 処を明示するよう努めていたが、映像自体が一種のプロパガンダになっている面もあるの で、出処の明示はさらなる徹底が必要であろう。
  一方、日本国内の動きや出来事は的確かつ十分に伝えられたのか。この問題は「視点 4」 を参照してほしいが、最も注目すべきは、今回のウクライナ戦争によって、日本の安全保障 環境はどう変わるかという点だったのではないか。
  この問題にいち早く着目したのは「報道ステーション」だった。番組独自のアンケート調 査を実施し、3月下旬には「日本の安全保障が脅かされる脅威が増している」と考える人が 非常に多くいるとの調査結果を公表した。ただ、当該番組は、こうして得た調査結果をその 後の番組作りに生かしていないのが惜しまれる。
  「ニュースウオッチ9」の動きも早かった。4月4日には「今考える日本の安全保障」と いうタイトルで、独自取材の番組を放送している。また、4月21日に自民党が発表した「安 全保障政策の提言」についても、いち早く識者の見解も含めて伝えている。
  だが、ここでも不満は残る。きわめてNHK的に両論併記の形で問題点を提示して見せた だけだからだ。たとえば専守防衛をどう考えるかなど、重要な論点があったはずだが、通り 一遍のコメントだけで終わってしまった感がある。ウクライナ問題にはかなり厳しい意見を述べる田中キャスターも、国内の政治問題となると控えめになるのも物足りなかった。
  その点、2 つのウィークリー番組の健闘ぶりは目を見張るものがあった。「サンデーモー ニング」は出演したゲストの発言を通して、「報道特集」は調査報道に基づく確かな事実の 上に立って、日本の安全保障について考察しようとしていた。中でも「日本の軍備拡大は東 アジアの緊張を強い、アジア人同士の戦闘の可能性を生む」との専門家の発言は、安全保障 を考えるうえで重要な問題提起といえるだろう。
  同じTBS系列のデイリー番組「news23」は、残念ながらモニターの記録からは、日 本の安全保障問題に関する言及がなかった。
 ただ、この番組はほかの面で、他の 2 つのデイリー番組にはなかったニュースを扱って いた。ロシアヘイトに関するものだ。「視点5」で述べたように、「ウクライナは善 ロシア は悪」とする世論は国際的なものとなっている。しかし、その余波は、いわれなき差別とな って在日ロシア人たちの上に振り掛かっている。その事例を折に触れて取り上げていたの が「news23」だった。
  就職内定を取り消された日本在住のロシア人の話や、恵比寿駅でロシア語表記の部分を 消そうとしたJRの態度を伝えたのもこの番組だった。こうした一見何気なく見えるニュ ースの中に大切な問題を見つけ出す、それもニュース番組の大事な使命の一つだろう。
  そのためにも、メディアが正確な報道をすることが求められる。「視点 6」でハード面の 発達と合わせてそのことに触れておいた。
  ところで、「視点 7」のまとめの部分に各局とも調査報道を増やしてほしいと書いた。こ こでも、それを声を大にして要請したいが、とりわけ戦争停止に向けてのキャンペーンをメ ディアがイニシアティブをとってできないものか。
  いま日本政府は戦争終結に向けて何らかの外交努力をしているのだろうか。もしその動 きが鈍いとしたら、メディアの側から働きかけることができないものか。
  世界中の人々がこの戦争の一日も早い終結を望んでいる。そのためにはメディアがスク ラムを組むことも必要なのではないか。
 かつて「ベトナム戦争を終わらせたのは“報道の力”」といわれた。当時のテレビメディア は戦場で繰り広げられている事実を次々と茶の間に届け、アメリカがでっちあげた「トンキ ン湾事件」を暴いて見せた。
  これに懲りた権力側は、以後メディアに対し厳しい報道制限をかけるようになった。した がって、今あの時代と同じことはできないかもしれない。
  しかし、真実に迫り、無辜の民の味方になる、というジャーナリズムの矜持はまだ死んで はいないはずだ。
 「メディアが終わらせた戦争」そうした言葉が再びよみがえることを切に願う。
 
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