無意識に「上下の歯を接触させている」状態を「歯列接触癖(TCH:“Tooth Contacting Habit”)」というのですが、これは「歯軋り」や「食いしばり」といった非常に強い力を顎の筋肉にかけている状態ではなく、たとえ軽くであっても上下の歯を接触させているる癖のことを言い、これだけでも筋肉(咀嚼筋群)の緊張と疲労を招きます。 

 上下の歯は、食べ物を噛んでいる(咀嚼している)時と唾液も含めて食べ物や飲み物をゴクンと飲み込む瞬間にのみ接触するものであり、何もしていないとき(下顎安静位)は唇を閉じていても上下の歯の間には間隙があり接触していないのが正常なのですが、あなたはスマホを操作している時やテレビを観ている時、或いはパソコンのキーボードを叩いている時や本を読んでいる時など、何もしていない時にも気づかぬうちに上下の歯を接触させていらっしゃいませんか?

 歯を軽く接触させているだけでも、実は筋肉を緊張、疲労させ顎関節にもストレスを加え続けているのです。

 ちなみに、1日(24時間)のうちで上下の歯が接触している時間は、累積で通常16〜17分だと言われています。

 TCHをお持ちの方の口腔内所見の特徴としては、舌の側面に歯形がついていたり頬の粘膜に歯形がついていたりというようなものがあるのですが、試しに今その場で真っ直ぐ前を向いて軽く唇を閉じてみてください。

 この時、上下の歯が接触しているようであれば、TCHを持っておられる可能性は十分にあるでしょう。

 また、真っ直ぐ前を向いた状態で上下の歯を接触させず軽く離した状態を20〜30秒ほど保ってみてください。

 この時、何となく落ち着かないといった違和感をお感じになるようであれば・・・やはり、TCHの可能性大だということになります。

 自覚がないままやっているのがTCHですので、上記のようなことに心当たりがおありの方は、一度以下のようなことを試してみて頂きたいと思います。

 ちょっとした覚書を本やファイルなどに自在に貼ったり外したりできる付箋が、市販されていますよね。

 これを、ご自宅のテレビの画面の端や冷蔵庫のドア、パソコンのディスプレイのフレーム、廊下の途中の壁、便器の前の壁、或いは職場のデスク上のディスプレイの端など、とにかく自分の目にとまるあらゆる場所に貼ってみて頂き、それを目の端で捉えたら「今、自分は歯を接触させていないか!?」を自問自答するようにします。

 もし、歯を接触させていることに気づいたならば、肩の力を抜いて接触している歯を離すようにします。

 こうして、いわば「歯を接触させる癖」を治すために「歯を接触させない癖」をつけてゆくわけです。

 この時の注意ですが、1週間に一度くらいのペースで少しずつ付箋の位置を移動させてくださいね!

 そうしないと、貼られた付箋を見慣れてしまうことによって、せっかく貼った付箋の意味がなくなってしまいますので。

 歯周病の悪化、歯の摩耗(咬耗)、歯の破折、咬合痛、歯槽骨肥大といった口腔内の病気だけでなく、、顎関節症、頭痛や首や肩のこり、めまいや視力低下などをも招くことがあると言われているTCH・・・とにかく、前述のような自覚症状がおありの方は、一度かかりつけの先生に相談してみて頂きたいと思います。