オーロラ観望記 その2
イエローナイフ編  (2016年1月)

 公開:2016年1月11日〜
更新:2016年1月19日 *ピント合わせについて を追加。

 「路」 2016年1月3日撮影  (天文ファンでない方のために。星の濃い所は天の川)

 2013年の正月は、アラスカ・フェアバンクスでのオーロラ観望だった。子供の頃からの夢は叶ったが、出方が今一。色も感じない位薄い日もあった。これは、いつかリベンジしないと。そして空一面に広がるブレイクアップも、死ぬまでには見たい!

 チャンスは2016年の正月にやってきた。再びアラスカでもいいのだが、やはり、もう一つの代表:イエローナイフで見てみたい。という事で、28日まで仕事をして31日夜に日本を発ち、同日から6日間、オーロラ観望の予定を立てた。イエローナイフといえばオーロラ・ヴィレッジが有名で、ネットでもそこで撮られた写真が溢れている。同じような写真を撮ってもつまらないし、今回は絶対最高のオーロラを 見るぞ、という事で、1日から5日間、ナヌック・オーロラ・ツアーズにお願いした。

 ナヌック・オーロラ・ツアーズは、移動式のオーロラ・ツアー。ベテランのガイドが、その日の最高のポイントに連れて行ってくれる。ちなみにナヌック Nanook とはイヌイット語で「白熊」の意味。これが街中で大切な意味を持っているのを現地で知った(以下、登場多数)。

   

準備

 基本は、前回の時と同じ。これに、電熱ベストが加わった。また、気温が-40℃以下になる時もあるようなので、これはきちんと気温を知りたい。電池を使うものは氷点下では失神してしまうので、アナログ式のを求めた。行き着いたのは、株式会社アイシーのサーモ106 P15。小型で-40℃まで測定できる。

 ケースは、歯ブラシ:ディープクリンのトラベル・セットの中仕切りをニッパで適当に切って合わせた。これがピッタリ! しかも、ちょうど測定の玉の位置に通気の穴まで開いているので、まるで専用ケースのよう。

 カメラは、いつものEOS 5D Mk-IIIで、オーロラ撮影用のレンズはEF 14mm F2.8L II。宝物のEF 11-24mm F4Lがあるけれど、前玉が大きく、これを-30〜40℃に曝すのに躊躇した事、現在所有しているUSBレンズ・ヒーターでは短くて対応できない事、EF 14mmなら、撮影後、すぐにバッグに収納できる携帯性に優れている事、EF 11-24mmは、明るさがF4である事、等々で持って行かなかった。ふだんの撮影には、いつものEF 24-70mm F4L ISとEF 70-200mm F4L IS。タイムラプス用はSONY RX-100 M4で、双眼鏡は、CANONの防振 10×42L IS WP。

 三脚は、EOS 5D用にGitzo Gitzo GT2542T + 梅本ボールヘッド(中)SL-50ZSC、SONY RX-100 M4用にGitzo GT1542T + 梅本ボールヘッド(小)SL-40ZSC、家内用に、昔EXLIM購入の時にオマケでもらった600g位のアルミ三脚の計3本。カメラ・バッテリーとUSBバッテリーはありったけ持って行った。

 

12月31日 イエローナイフへ向かう機内で、オーロラがブレイクアップ!


こんな寒そうな所でも、生活している人達がいる。

 イエローナイフへは、今や年間1万数千人もの観光客が訪れるようだが、バンクーバーからカルガリー、もしくはエドモントンを経由し、2度乗り換えないと行けない。今は、バーコード管理でロスト・バゲージは激減したが、現地に着いてスーツケースが無かったら、考えただけでも恐ろしい。友人達は、飛行機でオーロラを見・撮影しているので、ここは私も経験したい。カルガリーからイエローナイフで向かう便は、しっかり窓側を確保し、こまめにチェックした。すると、夕方からオーロラが出現!

  しかも、オーロラは徐々に濃くなっていき、やがて窓いっぱいに広がった。オーロラの中を飛行し、何と、機内でブレイクアップ! 我々夫婦は大興奮だったが、ほとんどの乗客は寝ていた。もったいな〜い! 今度こそ、しっかりしたオーロラを見るぞ、という願いは、イエローナイフ到着前に叶ってしまった。

 空港では、白熊がお出迎え。タクシーで宿泊先へ向かった。予約したのは、旧市街のNarwal B&B。湖畔に面していて、ここでもオーロラが観望できそうだったので、ここを選択。

 部屋の壁には、オオカミ(?)の毛皮がかかっていた。頭は、ヒトの2倍はあろうか、という大きなもの。植木は流木か、と思ったら、トナカイの角が(頭蓋骨含)。毛が生えているんですね。知らなかった。部屋で荷物を広げ、一段落したのは21時時過ぎ。外に出てみたらオーロラは見えなかったので、持参したシャンペンで乾杯。大好きなどん兵衛で、年越しした。

  

1月1日(金)

 宿泊はB&B (Bed and Breakfast) なので、朝食の心配は無い。昼前に、新市街へ出かけてみた。気温は-3〜-4℃。日本でチェックした時は-22℃だったので、拍子抜けする位、暖かい。

 宿から出た湖畔の木に、ライチョウ(オジロライチョウ)発見。

 新市街のメイン・ストリートを進んでいったら、見慣れた名前を発見。Xがハサミなので、もちろん支店では無い。こんな、メーターでも絵になる。凍り付いているのかと思いきや、ちゃんと液晶表示が動いていた。

 正月だったが、メイン・ストリート沿いでは、ハンバーガー屋A&Wと向かい側のすし屋SUSHI NORTHがやっていた。夕方に、A&Wで夕食。車のナンバー・プレートは、白熊の形。
 オーロラ・ツアーは、21時過ぎに迎えに来る。早めに宿に戻り、準備。予報では晴れ。太陽活動から推測すると、今宵のオーロラは期待できそう。バンが迎えに来たら、すでに宿の前の湖畔に2本、濃いオーロラが出ていた。

  まずは1カ所目で観望。大勢のツアー客がいて、明るい。とは言うものの、見事なオーロラに圧倒された。ツアー・ガイドは、イエローナイフに1996年から住み、2001年からオーロラのツアー・ガイドをしている大塚さん。オーロラの出方、天気を熟知した超ベテランで、「もっと静かな所に移動しましょう」、という事で、次のポイントへ。

 オーロラは、天空の端から端まで繋がった、見事なアーチ状。まさにオーロラ・ベルトだ。右側のオーロラは、まるでシナモン・ロール。ここで、記念撮影。1時頃、さらに、もう一つのポイントへ移動する、という。今でも十分に見えているが、さらに見えるのだろうか?

 こちらのオーロラは、空高い。しばらく見続け、時間は2時半を回った。十分、オーロラを見たので、もうツアーは終わりか、と思っていたら、まだその気配が無い。すると、濃く、明るいオーロラがやってきた。波をずっと見ていて、遠くから巨大な波が押し寄せてくる感じ。気分はおおーっ!と高揚してくる。そして、真上でブレイクアップ! ピンク色を交え、物凄い勢いで空を乱舞する。ただただ、「凄〜〜い!!」を連発。勿論写真を撮ろうと思ったが、目を離すのが勿体ない。ひたすら見続けた。

 遂に、念願の頭上のブレイクアップを見る事ができた。感無量! さあ、これで、本日のツアーが終了、と思いきや、遠くからもう一波やってきた。あわててカメラをセット。

 またまた大ブレイクアップ! それにしても、こんなに早く動くなんて想像も出来なかった。イメージとしては、幕状のものがヒラヒラ、だったのだけれど、とんでもない。あの乱舞の速度は、マッハ50?、100? これは、移動してこの場所に来なかったら見れなかっただろう。大塚さん、ありがとう!! 宿に戻ったのは3時半過ぎ。それから祝杯を上げたのは言うまでも無い。

 なお、気温は-9℃がmax。拍子抜けする位寒くなかった。靴下は、厚手のもの+電熱ベストの靴下版:あんよのこたつだったが、足底は冷たくなり。けっこうつらかった。日本でも試し、ここでもあんよのこたつを2度使ってみたが、全く役に立たなかった。

 

1月2日(土)

 今日も、昼前から出かけた。目指すは旧市街。お土産屋(写真左)で下見や、JUST FURS(写真右)で、家内は帽子を購入。そういえば、IKKOさんがTVで自宅を紹介している番組を姉が見て、毛皮のコーナーに “FAR” と書いてあって大爆笑した、とか。

 イエローナイフでは一番有名なレストラン:ブロックス Bullocks Bistroの前にあるWeaver & Devoreは、1Fはスーパだが、2Fには、防寒具を売っている。そこで、靴のインナーと-40℃対応の靴下を購入した。連日試したが、結局日本で購入して使ってきた靴下が一番強力だった。夕飯は、そのブロックス。


 私はバッファロー、家内はホワイト・フィッシュを頼んだ。バッファローは味付けが濃く、最初はいいのだが、半分過ぎるといやになってくる。シェアがおすすめ。ところが、ホワイト・フィッシュは衣がサクサク、中はフワフワで最高に美味しかった。ここにはまた行きたいな。

 日本では、豪華な電飾が流行っている。しかし、何かが足りない。それは、「雪」。雪があって、建物の形が良かったら、シンプルな電飾でも、遙かに趣がある。旧市街は、歩くだけで楽しい。

 夜になって、曇ってきた。雲超しにオーロラを観望。トイレ休憩は、エクスプローラー・ホテル。ロビーに巨大な白熊の剥製があった。何カ所か移動したが、私は今日はこんなものかな、と思っていたら、最後の所でオーロラが明るくなり、そしてブレイクアップが起きた。ちなみに気温は-12℃。

 これで、3日連続ブレイクアップ! それにしても、絶対ツアー客に最高のオーロラを見せる、という大塚さんの執念に脱帽。

 以前も書いたけれど、毎回旅の時には頭で鳴る音楽がある。今回は、いくつかあって、一つは「ジャングル大帝」のテーマ。冨田 勲は、一時はシンセサイザーで有名になったが、「新日本紀行」や「今日の料理」など、名曲を沢山世に送り出した、日本を代表する素晴らしい作曲家だ。壮大な「ジャングル大帝」のテーマも、名曲中の名曲。ちょっと訳あって、これが成田に行く間、ずっと流れていた。
 オーロラの時は、「ローエングリン」と「ワルキューレ」の第3幕の後半、そして「神々の黄昏」。これは、恒例の年末のバイロイト音楽祭の中継を聴いていたからだろう。というのも、ペトレンコの指揮も、今年が最後だから。2014年の時は、音楽の「ため」が無く、前にぐいぐい行く音楽は好きになれなかったが(ある意味、トスカニーニ的)、「神々」では、ドラマトゥルギーの描出、表現に素晴らしい才能を発揮していたので、今年はどうだったのか、大変興味があった。相変わらず「ため」は無いのだが、なんと言っても、やっぱりオケが凄い。今年2016年から、ヤノフスキ。東京春祭で聴いている限り、あまり期待はできないが、それでもやっぱり、聴きたいなあ。
 新国立劇場の「ローエングリン」のフォークトの登場する場面は、本当に衝撃的だった。彼の第一声で、完全に、この世のものではないローエングリンの存在と世界に皆、連れて行かれてしまった。どんなに演出を駆使しても、あの声には敵わない。その彼のバイロイト公演。頭で鳴って当然だ。
 ちなみに私はワグネリアンではない。「タンホイザー」や「オランダ人」は苦手で、協会にも入っていない。
 

1月3日(日)

 毎回このような湖畔を眺めながら出かける。今日は、新市街のヴィジター・センター辺りを中心に観光。消火栓も絵になる。

 信号機からは、日本と同じ「ピヨピヨ音」が流れていた。ゴー・ストップでは、デロデロデロというアメリカンなV8エンジンの音が響き渡る。

 マーキングだって、面白い。凍っているけれど、犬の嗅覚には影響無しか。

 ヴィジター・センター(Northern Visitor Center)には、ツキノワグマの剥製があった。

  街中には、オーロラ予報灯台があり、赤く転倒していれば、やはり嬉しい。夕飯は、北極イワナの握り寿司が食べられる、との事で、SUSHI NORTH。通常は日曜は休みだが、三が日は開店していてセーフ。北極イワナの味云々の前に、もう少し寿司屋としてのクオリティを上げて欲しいので、ノー・コメント。テカポの日本食レストラン「湖畔」のようにはいかなかった。

 夜の湖畔。オーロラは出ていなかった。今日は、しぶんぎ座流星群のピークが1時頃訪れる。流星雨でオーロラが出たら最高だ。

  という訳で、絞ってシャッター速度を遅くし、写るのを狙った。いつもより星は流れたが、放射点とは無関係に出没した。冒頭の写真の別ヴァージョンには流星が写っていた。 今日のオーロラは、濃くないのに赤色が混じっている。道のライトは、寝そべって大の字でオーロラを見ている人。カメラに煩わされず、理想的なスタイルだ。天文もそうだけれど、まずは見、体験する事。撮影はその次でいい。

 やがて、空いっぱいにオーロラが広がったが、ブレイクアップとまではいかなかった。しかし、薄いオーロラも凄くいいのだ。


 

 ネット上では、不自然にまで濃い緑色のオーロラの写真が溢れている。肉眼より濃く写るので、最初は嬉しくなって、次第に感覚が麻痺してくるのだと思うのだが、天体写真の濃い赤色と同様、非常に安っぽい。コンデジは、素人受けするように派手目に発色するよう味付けされているのだが、オーロラにはこれが合っていない。SONY RX-100 M4は優秀なカメラで、自動で数枚コンポジットし、手持ちなのに星が点でオーロラが写る。しかし、緑色に明るく潰れた写真はチープで、ここに掲載できる写真は無かった。

 下の写真の左側はケラれているが、これはUSBヒーターがレンズの前にずれてしまった為。移動の際、結露防止のため、毎回カバーに入れた後、鞄に入れていたが、この出し入れでずれてしまったようだ。この日の最低気温は-23℃。顔が冷たい。

  

1月4日(月)

 今日は、旧市街の先端の探訪だ。湖は凍っているので普通に歩けるし、スノー・モービルも中央を走り抜ける。宿からは直線で湖を渡って向かった。イエローナイフは観光、見る所が無い、というネットでの書き込みを見かけたが、それは本人次第。旧市街の先端は、高級別荘の集落なのか、歩いていて、本当に楽しい。説明不要。まずはご覧あれ。

 昔の飛行機の星形エンジンが庭にあったり、面白い形の集合住宅があったり、小さい家かと思ったらゴミ箱だったり、センス抜群。自然だって、見所満載。

 白樺は、夕日を浴びて黄金色に輝く。岩だって美しい。

 
 

 旧市街には、欠かせない観光名所:Bush Pilot's Monumentがある。小高い丘で、この辺りが一望できる。

  南東方向には、開いたばかりのアイス・ロードが見渡せた。いつもなら、とうに凍って通れる、との事だが、イエローナイフに着いた時のテレビでは、まだ氷が25cm以下なので、車での通過は危険だ、と湖に頭を突っ込んだ写真を出して注意喚起していた。

 凍った氷に船が嵌っていて、その横を車が通過して行くという不思議な光景。アイス・ロードは、Google mapsでも表示されている。旧市街の先端を一周したら、2日に夕食を食べたブロックスの裏手に出た。

 お土産屋のおじさんが、今日はオーロラが5時半頃から出る。しかも、いいぞ、と教えてくれた。オーロラ灯台も赤く光っている。どの天気予報でも夜は曇りなのだが、晴れる、という。確かに今は快晴だが、果たして...? ちなみに、連日パトカーが車を捕まえていた。レンタカーを借りる人は要注意。パトカーの横のラインの色は、某大学出身者・関係者にはお馴染みのもの。

 張り切って宿にもどったら、予告時間にはしっかり曇ってしまった。オーロラ・ツアーも沢山移動してみたが、厚雲を通してぼんやり存在がわかる程度で、今宵は オーロラは拝めなかった。

 こういった時は、移動のバンでの会話がポイントとなる。ガイドの大塚さんは、いろいろ面白い経験をしているので、いかに彼から面白い話を引き出せるか、トライしてみると良いと思う。ただし、1人でしゃべ りまくる、質問しまくる人がいると引いてしまうので、ツアー客との相性は運次第。また、ゲホゲホ咳をする人が真後ろに乗った日もあったが、これはフードとフェイス・マスクでしのいだ。
 これで、4勝1敗3ブレイクアップ。早くも明日で最終日だ。オーロラのピークは12月31日〜1月3日に一山来たので、明日は穏やかなのだろうか。

  

1月5日(火) それは、とてつもない最高の最終日だった!

 朝、起きたら雪。今晩は晴れるだろうか。宿のすぐ近くのおしゃれな建物を右折し、新市街のプリンス・オヴ・ ウェールズ・ノーザン・ヘリテージ・センター Prince of Wales Northern Heritage Centreへ向かった。雪道は、足跡も面白い。

 途中、ライチョウの大群に遭遇した。遠目で見ると雪と同化していて、自然の見事なしくみに感嘆。 ライチョウは幸運をもたらすらしい。1日はライチョウを見て見事なブレイクアップを体験できたので、今日もいいオーロラが見れるだろうか。

 センター右には、見事なもみの木が。中は、見どころ満載。

 イエローナイフは、種々の鉱物、レアメタルが沢山取れるようだ。日本に落とされた原爆のウラン、プルトニウムはここで取られた、と聞いた。

 ギャラリーには、私好みのアートがいくつかあった。右側の作品のタイトルは「青い雪だるま」。天文好きならすぐにアンドロメダ座の惑星状星雲 NGC7662とわかる。

 奥、レストランの右横には、見事な彫刻が沢山展示されている。右側は、moose skin アメリカヘラジカで作られた大きな船。横に、制作するヴィデオが流れていたが、これが凄く面白かった。

 イエローナイフの所属するNorthwest地域の沢山の旗がたなびく道を通過し、ノースウェスト準州立法議事堂 The Legislative Assembly Buildingへ。旗は、イエローナイフのもの。やはり白熊が取り込まれている。写真右の小さな小屋は、入り口左側にあったもの。ゴミ箱だろうか。

 ここに、ご覧の展示物があった。刃が黄色い。先住民が使っていた刃物が黄銅製だった事から、「イエローナイフ族」と呼ばれるようになり、そして地名になった、との事。こんなものが全く予想していない所で遭遇すると感慨も一入だ。で、何で州立法議事堂へ行くのか?

 やはり白熊!だから。それにしても大きい。イエローナイフは観光する所が無いって? まだ行ってない所が沢山あるのに...


 

 夕食は、出来て1ヶ月、という NWT (Northwest) Brewingへ。地元のビールで、何かオススメは?と聞いたら、メニュー・リストに無いRagged Pine Pale (写真手前)とMill Street Lager (写真奥)を持ってきてくれた。瓶では無くtap。このRagged Pine Paleのダーク・ビールが超!うまい。観望を控えているので1杯で止めたが、今度来る機会があったら、昼間っから行くぞ。料理も良かった。美味しいレストランを紹介しても、シェフの入れ換えも頻繁にあるので、料理店の情報は最新のものでないと役に立たない事も多い。が、今はおすすめの一店。

 19時頃、宿に戻る頃も曇り。最後の夜に、オーロラはほほえんでくれるのだろうか? 写真は、宿の玄関の扉を内側から撮影したもの。 雪はぱらついているが、ここは降雪は少ないようだ。つまりは晴れが多い、という事。オーロラには最適だ。

 準備完了。21時前、外に出てみたら。快晴! 宿前の湖畔からオーロラも見える。これで5勝1敗決定。何という観望率の高さ。

 1カ所目で、濃いオーロラから、薄く赤色の混じったオーロラまで堪能。双眼鏡でカタリーナ彗星C/2013 US10もチェック。

 オリオン座方向。 超ベテランガイドの大塚さんによると、「今晩は凄いオーロラが来る」、という。ブレイクアップするのは早くて0時、おそらく1時頃、との事で、早めにトイレ休憩へ出発。オーロラ・ベルトは、一端南下し、それから北上して行く時にブレイクアップしやすい、との事。沢山のオーロラをやり過ごした所で休憩、という絶妙なタイミング。

 オーロラは衰える事無く、全天に広がって行く。写真右の光の点滅の軌跡は、飛行機。オーロラの中を飛んでいる。私達夫婦も、あのような感じでここに来たんだなあ。やがて、右で左で、前で後ろで、そして天頂でブレイクアップ。



怒濤のダンス、ダンス! ダンス!!

 真上でのブレイクアップが連続し、首が痛い。写真撮らないなら、寝そべって見続けたい。




 夢中で見続け、そして撮った。そろそろ撤収、という事で、最後の1枚。これは、大塚さんが撮って送ってくれたもの。皆とは逆方向にカメラをセットし、見続けた。 タイムラプスも撮影。YouTubeはこちら。RX-100 Mk4の星空モードで撮って再生してみたら速度が速すぎたので、再生を遅くしてみたらこんなになってしまった。

 外気温は-25℃。さすがに寒く、途中から暖房ベストのスイッチを入れていた。また、とにかく顔が冷たかったが、セイラス・ソフトシェルフーズが大活躍した。ただし、マスクと同様、鼻までかけると眼鏡が曇るので、鼻は出していた。しかし、-25℃は、イエローナイフでは寒い、とは言わない、との事。-40℃も 、ちょっとだけ体験したかったな。

  観望が終わると、毎回バンの中で、ホット・チョコレート、コーヒー、紅茶と、大塚さんの奥さん(相当美人らしい)手作りの美味しいケーキで休息。あれだけオーロラが出ていたのに、車の中でくつろいでいたら、一気に曇った。宿には3時過ぎに戻ったが、空は厚い雲に覆われていた。何という強運! さて、朝5時55分の飛行機でここを去らねばならない。大塚さんは4時10分に迎えに来てくれるので(空港送迎もやってくれます)、脱兎の勢いで荷物をまとめ、4時過ぎに、ここを後にした。

 5勝1敗4ブレイクアップという、信じられない成果をあげた。しかしこれは、何と言っても大塚さんのお陰だ。天候をピン・ポイントに予測し、オーロラの出方を読み切り、その日、最高の所に連れて行ってくれたからだ。それにしても、あれが戻ってくるとブレイクアップしますよ、ほら、あの縦の波がブレイクアップの兆候ですよ(すぐに壮大なブレイクアップが起きた)、今度はあそこが来ますよ、ほらほら → どか〜ん! と恐ろしく的確。さすが超ベテランガイドだ。自分でレンタカーで回ったってこうは行かない。感謝! 感謝!! ありがとう!!!

 帰路の飛行機ではオーロラは見れなかったが、エドモントンからバンクーバーに向かう時、壮大なカナディアン・ロッキーに釘付け。 旅先で良い思い出ができたら、誰でもそこが好きになると思う。20年程前に仕事でカナダ各地に行った時は、どこでも対応が最高で、カナダ、という国の印象が最高に良かった。今回も、こんなに女神が微笑んでくれたら、もう、大好き! また来よう。今度は湖が凍っていない時に!

  

参考までに

  オーロラを撮影する方も多いと思うし、多分、天文ファンではない方も、このページは閲覧すると思うので、参考までに私はどうしたかを簡単に紹介。私は眼視派で、撮影は余興なのと、オーロラ撮影専門家でも何でもないので、あくまで参考程度、という事で。

 1. アラスカでも経験済みだが、5Dは、-25℃程度までは問題無く動作する。バッテリーもへたらない。
 2. 消音ケースを利用して保温を試みたが、ホッカイロは氷点下に曝しておくと無効。結局ケースごと冷えて操作性が悪くなるだけなので、カメラ・ボディは露出したままだった。
   木炭カイロもあるが、すぐ火が消える場合が多く、今は使っていない。
 3. レンズ正面で鼻息をかけないよう注意(レンズ前玉の氷結防止)。
 4. レンズ結露防止ヒーター使用。使用したのは、タイプ6MSP持参したバッテリーの中で、-25℃で動き続けたのはAnker A1208011 (16000mAh) だけだった。
 5. カメラをしまう時、最初はETSUMIのキルティング・ポーチLに入れてから鞄にしまった。
   いきなりの温度変化は結露・故障に繋がるので、お店に入る時、出る時もこれを被せて急激な温度変化を避けた。
   首からカメラをぶら下げたままでカメラ・レンズ全体を覆えるので、各サイズを愛用。
 6.
RAW撮影が原則。出来上がりは現像テクニック次第。
 7. 絞りは開放2.8〜3.2。ISOは6400上限。基本露出はシャッター速度で行った。また、緑色に潰れないよう、露出オーヴァーに注意した(ブレイクアップでは難しい)。
 8. SONY RX-100はバッテリーが持たないので、懐で暖めているバッテリーと交換して撮り続けるか、タイムラプスは、USBバッテリーから電源を供給しないと無理。
 9. アルミ製三脚は、手袋していても凍傷になる位冷えるようだ。カーボンはOK。家内用のアルミ三脚は、結局使えなくなった。
 10. 三脚の足が20〜30cm位雪に沈むので、背の低い三脚は不利。
 11. プラスチック系のものは、あっけなく破損したものがあったようだ。
 12. 手袋は、-25℃でも愛用のセルモネータでカメラの操作も保温も大丈夫だった。ただし、ホッカイロを丸めて棒状にしたものをジャケットのポケットに入れておき、時々握って暖めた。
    ホッカイロも外に面したポケットに放置しておくと、役に立たなくなる。
 13. 足は一旦冷えるとお手上げ。冷える前に足踏みして血行を保つ。
 14. 私は天文が趣味なので一式持っているが、防寒具は最適なものを貸し出ししてくれるので、無理に日本で揃えて持って行く必要は無い。

   *気づいたら追加します。

 

ピント合わせについて

 ピントをどうあわせていいかわからない、と聞いたので、一応説明します。一眼レフの場合です。ちなみに、「ピント」は、オランダ語のbrandpuntが語源、とされていて、これは、レンズ、凹面鏡の焦げるbrand  点punt、つまり焦点という訳です。英語ではfocusです。今はプレゼンテーションはPCですが、以前はスライド・フィルムを使っていたので、時々画面のピントが合わない事がありました。国際学会で、「ピント・プリ〜ズ!」と言った日本人がいた、とか。

 さて、レンズの∞マークに合わせればいい、という記述も見掛けるようですが、これは誤りです。温度(気温)や、波長(色)によって焦点は変わってきます。どうするかというと

 1. 撮影する時に(昼間ではない)、ピント合わせをします。
 2. カメラのISOを一旦できるだけ高感度にします。
 3. 風景を写し込みますが(これがいい写真になるかどうかのポイント)、これに焦点を合わせるか、星にピントを合わせるのか、決めます。
 3. ライブ・ビューで見ます。
 4. 5×、さらに星にピントを合わせる場合には、10×表示にしてピントを合わせます(当然MF。ブレ防止機能はoff)。
 5. テープでフォーカス・リングを固定します。私は、堀内カラー HCL 35963 [パーマセルテープ(黒)]を使っています。
 6. ISOを撮影する感度に戻します(忘れないように!)。
 7. 昼間、このレンズで撮影するなら、MFをAF、ブレ防止をonに(MFを時々使う場合、AFに戻すのを忘れる時がある)。
   

     続く.....!

50を過ぎて、やっと夫婦で旅行に行けるようになった。1人で行くより、何倍も何倍も楽しい。
いつまでも行ければいいなあ...

ご感想・問い合わせ等はこちらまで.

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