ある日のことです。シャンカラが弟子達とガンガーで沐浴し、ヴィシュワナート寺院へのお参りを済ませて家に帰るところでした。4匹の犬を連れたチャンダーラ(アウト・カースト)が彼らの前に現れました。シャンカラは、彼に道を空けるように頼みました。するとチャンダーラは微笑みながらシャンカラに尋ねました。「お前は、誰に道をどけといっているのだ。魂にか、それともこの体にか? お前の魂も、俺の魂もこの世にある全ての魂は一つなのだ。魂には穢れなどはないのだ。月がガンガーに映ろうが、酒瓶に映ろうが、同じ月には変わりがない。また、酒瓶に映ったからといって、月が穢れるわけでもない。それとも、お前は、魂ではなくこの肉体にどけ、といっているのか? 魂の抜けた肉体など、石ころと同じだ。動くことなど出来ない。いったい、サンニャーシン(遊行僧)にとって、カーストの違いや浄、不浄にどんな意味があるのだ?」
チャンダーラのこの詰問にシャンカラは驚き、あっけにとられました。シャンカラは、このような偉大な真理を教え諭してくれたチャンダーラの足下にひれ伏しました。するとそこにはチャンダーラではなく、ヴィシュワナート神(シヴァ神)御自身が立っておられました。ヴィシュワナート神は、シャンカラに、バラモンや、チャンダーラなどというような違いは、ただ単に、狭い心が生み出すものであるということを教えるために、チャンダーラの姿となって現れたのです。ヴィシュワナート神はシャンカラを祝福すると、その場から消え去りました。