師の命を受けて、シャンカラはヴィンディヤ山脈を越えてヴァラナシへやってきました。
彼はこのシヴァ神の都が気に入りました。彼は聖河ガンガンガーの岸辺に庵を結びました。この若きサンニャーシン(遊行僧)の霊性の輝きは、あらゆる人々を魅了しました。彼からヴェーダ聖典とウパニシャッドを学ぼうと、近隣は言うに及ばず、遠方からも多くの弟子達が彼のもとに集いました。彼がヴァラナシに滞在していた数年間は、毎日ガンジス河(ガンガー)で沐浴し、シヴァ神を祭ったヴィシュワナート寺院に詣で、弟子達に聖典を教示して日々を送りました。
彼のもとに集った様々な弟子の中に、サナンダナもいました。彼は知性に秀で、師シャンカラからも深く愛されていました。彼もまた、師であるシャンカラに深い尊敬を捧げていました。
ヴァラナシ(ベナレス)で
ある日、彼は、ガンガーの対岸にいました。聖典の学習が始まる時間です。しかし、突然、ガンガーの水が溢れ始めたのです。彼は、授業に遅れそうなので、気をもみました。彼の状況を理解したシャンカラは向こう岸から、早く渡って来るようにと合図を送りました。すると、サナンダナは躊躇することなく河を渡り始めました。なんという師への深い信仰でしょう! 母なるガンガー女神はその信仰を讃えるために、彼の一足ごとに蓮の花を咲かせて、彼を支えました。そうして彼は、蓮の橋を渡ることができたのです。その日から、彼はパドマパーダと呼ばれるようになりました。「パドマ」は「蓮」、「パーダ」は「足」という意味です。彼は、後にヴェーダンタ学派の有名な学匠となり、著述や指導に当たりました。

シャンカラはここヴァラナシで、「バガヴァッド・ギーター」や「ウパニシャッド」、そして「ブラフマ・スートラ」への註釈を書きました。