ある日のことでした。シャンカラ少年は、お母さんと一緒に、沐浴をしに川へ行きました。すると、突然、ワニがシャンカラ少年の足にかみつきました。シャンカラ少年は、今にも川に引きずりこまれて、飲み込まれようとしていました。彼は大声で叫びました。「ああ、お母さん、もうだめだ。ワニが僕を川底に引っぱりこむよ。今すぐサンニャーシンになるのを許してください。そうすればワニは僕を放してくれるかもしれません。」
アーリヤーンバーはとっさのことで、どうしたら良いか分かりませんでした。でも彼女は考えました。「もしシャンカラがサンニャーシンになっても、生きていてくれさえすればこれからも会えることでしょう。でも、もし彼がここで死んでしまったら、二度と会うことはできない」。そこで、彼女はシャンカラ少年に、サンニャーシンになる許可を与えました。
出家
シャンカラ少年は定められているマントラを唱えると、世俗を放棄する誓いを立てました。するとどうでしょう、ワニは彼を放して川底へと姿を消したのです。そのワニはブラフマー神の呪いによって姿を変えられていたガンダルヴァ(半神的・精霊的存在)だったと言われています。シャンカラ少年の力によってもとの姿に返ると、ガンダルヴァはシャンカラ少年をたたえる歌を歌いながら自分の世界に帰って行きました。
こうしてシャンカラ少年は、大喜びしているお母さんの待つ川岸へ泳いで戻りましたが、家に帰ることはありませんでした。そのかわり、「お母さんがなくなる前には必ず戻ってきて、子供の務めである葬式もきちんと出しますから」と固く約束したのです。